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zoom RSS 第601回 減量効果における糖質制限ダイエットの優位性??

<<   作成日時 : 2014/02/04 15:30   >>

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等カロリー摂取での糖質制限の減量効果の優位性を示すために、イスラエルの DIRECT研究(2年間の食事介入試験+4年間の追跡調査)が頻繁に引用されますが、この機会におさらいの意味で内容をレビューしてみましょう。

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<2年間の食事介入無作為化比較試験>

減量を目的とした食事療法の効果と安全性についての比較試験は、フォロー期間が短く、脱落者の割合も高いなど限界があった。
当該DIRECT(食事介入無作為化比較試験)研究は、イスラエルのメディカルクリニック敷地内のリサーチセンターで行われたもので、中等度肥満者322名(平均年齢52歳±7、平均BMI:30.9±3.6、平均体重:91.4kg±13.4、男性86%)を無作為に3つの減量計画『低脂肪食(カロリー制限)、地中海食(カロリー制限)、低炭水化物食(カロリー制限なし)』のいずれかに割り当てて、2005年7月から2007年6月の2年間に亘って追跡調査を行なった。ベースラインの被験者の食事構成は3グループで有意な違いはなかった。3グループはそれぞれ17〜19名からなる6つのサブグループに分けられ、栄養士の定期的な指導を受けた。イスラエルではランチが1日の中でメインの食事となっており、同クリニック敷地内のカフェテリア(セルフサービス)で提供され、各食品にはカロリー数および栄養素のグラム数が表示され、グループ毎のカラーコーディングで区分された。配偶者の教育プログラムが行なわれた。

食事のパターン:
低脂防食(カロリー制限)
米国心臓協会のガイドラインをベースとしている。
男性1800kcal
女性1500kcal
脂質エネルギー30%、飽和脂肪酸10%、コレステロール300mg
低脂肪食品/野菜/果物/豆類を食べ、スイーツや高脂肪スナックは制限する。

地中海食(カロリー制限
男性1800kcal
女性1500kcal
野菜豊富、ビーフ/ラム肉を避け家禽肉/魚に置き替え、脂質エネルギーは35%以下とし、追加はオリーブオイル30~45g及び一掴みのナッツ(5〜7粒20g未満)とする。
Guide to Healthy Eating “Eat, Drink, and Be Healthy” by Harvard Medical School Walter C. Willett & Patrick J. Skerrett の推奨をベースとしている。

低炭水化物食
アトキンスダイエットをベースとしている。
炭水化物を最初の誘導期2ヶ月は20g以下
その後は徐々に120gまで増やす
カロリー制限なしとするが、脂質とタンパク質は主として野菜から摂り、トランス脂肪酸を避ける。

食事加入試験の結果:
このグラフは体重の経時的変化をしめすものです。

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被験者全員322名の2年経過時の体重減少の平均±標準偏差
低脂肪食群:−2.9 ± 4.2kg
地中海食群:−4.4 ± 6.0kg
低炭水化物食群:−4.7 ± 6.5kg

その内、男性277名
低脂肪食群:−3.4kg (95% CI, −4.3 to −2.5)
地中海食群:−4.0kg (95% CI, −5.1 to −3.0)
低炭水化物食群:−4.9kg (95% CI, −6.2 to −3.6)

その内、45名女性
低脂肪食群:−0.1 kg (95% CI, −2.2 to 1.9)
地中海食群:−6.2 kg (95% CI, −10.2 to −1.9)
低炭水化物食群:−2.4 kg (95% CI, −6.9 to 2.2)

2年間のダイエットを全うした272名の体重減少の平均±標準偏差
低脂肪食群:−3.3 ± 4.1kg
地中海食群:−4.6 ± 6.0kg
低炭水化物食群:−5.5 ± 7.0kg

BMIの変化
低脂肪食群:−1.0 ± 1.4
地中海食群:−1.5 ± 2.2
低炭水化物食群:−1.5 ± 2.1

ウェスト周り減少
低脂肪食群:2.8 ± 4.3cm
地中海食群:3.5 ± 5.1cm
低炭水化物食群:3.8 ± 5.2cm

収縮期血圧 
低脂肪食群:4.3 ± 11.8mm Hg
地中海食群:5.5 ± 14.3mm Hg
低炭水化物食群:3.9 ± 12.8mm Hg

拡張期血圧
低脂肪食群:0.9 ± 8.1 mm Hg
地中海食群:2.2 ± 9.5 mm Hg
低炭水化物食群:0.8 ± 8.7 mm Hg

2年間の栄養素摂取の変化

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ダイエット遵守率:

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食事摂取、消費エネルギー及び尿中ケトン体:
低炭水化物食グループでは、炭水化物の摂取は最も少なく、脂肪/たんぱく質/コレステロールの摂取は最も多かった。

身体活動は3群共にベースラインに比べ増えたが、有意なグループ差は認められなかった。
増加量のなかった

尿中ケトン体は低炭水化物食が最も多かった(P=0.04)
低脂肪食4.8%
地中海食2.8%
低炭水化物食8.3%

脂質プロファイル:
HDLコレステロールの総コレステロールの比率の相対的減少は、低炭水化物ダイエットグループで20%、低脂肪ダイエットグループで12%であった(P=0.01)
その他の詳細は下記グラフを参照してください。

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高感度C反応性蛋白/高分子量アディポネクチン/レプチン/空腹時血糖値/HOMA-IR(インスリン抵抗性):

糖尿病患者36人に限定して解析したところ、空腹時血糖とインスリンレベルの変化は、地中海式ダイエットグループ(32.8 mg per deciliter)の方が、低脂肪ダイエットグループに比べて改善していた(糖尿病、地中海式食事療法、空腹時血糖に関する時間での交互作用:P<0.001)
しかし、非糖尿病の被験者では、3グループ間の有意な差異はなかった。

バイオマーカーの2種類の明確なパターンを同定した。
パターンAバイオマーカー:インスリン、中性脂肪、レプチン、ケマリン、単球走化性タンパク質1 、レチノール結合タンパク質4(P < 0.05)
パターンBバイオマーカー:高分子量アディポネクチン、HDLコレステロール、高感度C反応性タンパク質、フェチュイン-A、プログラニュリン、バスピンVaspin 新規アディポサイトカイン(P < 0.05)
これらのパターンは、変化の大きさに違いはあるけれど、性別/糖尿病/食事グループ間で一致していた。

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HbA1c
2年後の糖尿病患者のHbA1cは、低炭水化物食グループで有意だった(P=0.45):
低脂肪食グループ:0.4±1.3%減少
地中海食グループ:0.5±1.1%減少
低炭水化物食グループ:0.9±0.8%減少

肝機能テスト
ビリルビン、アルカリホスファターゼ(ALP)、アラニンアミノ基転移酵素レベルの変化は3群間で同様であった。アラニンアミノ基転移酵素レベルは、ベースラインに比べ2年後の値は地中海食グループ(減少3.4±11.0 units per liter)および低炭水化物食グループ(減少2.6±8.6 units per liter)で有意に減少した(P<0.05)

追記
2年間の減量食が頚動脈血管壁容積の有意な退縮を誘導することが分かった。
その効果は低脂肪食/地中海食/低炭水化物食で類似しており、主に減量による血圧低下を介してのものと思われる。

<4年間フォローアップ>
The New England Journal of Medicine
Oc4 2012
Four-Year Follow-up after Two-Year Dietary Interventions

2年間の介入試験が終わった後、259名を被験者として4年間追跡調査のITT解析を行った。この人数は、当初の参加者322名の約80%、2年間の実験を全うした272名の約95%に相当する。
被験者は定期検診のために年に一度クリニックに赴き、そこで健康な食事を続行するよう奨励された。
栄養素のラベリングと食事のカラーコーディングは打ち切られたが、カフェテリアによる食事は継続して提供された。食事順守のための食事セッションや他の活動は継続しなかった。
ちなみに、ITT解析とは、臨床試験の進行に伴い、被験者に割り付けられた両方が続行不能となった被験者をもすべて含めて解析することです。

最終的に6年間を通して全うし得た被験者は67%だった。11%は他のダイエットに変え、22%はダイエットを断念した。この4年の期間中に低脂肪食群/地中海食群/低炭水化物食群ともに各々2.67/kg1.4kg/4.1kgリバウンドした(全グループとの比較でP=0.004)。

6年間を通しての体重減少は、低脂肪食群0.6kg、地中海食群3.1kg、低炭水化物食群1.7kgであった(全グループとの比較でP=0.004)
低脂肪食群と地中海食群とでは有意な減量の違いが認められたが、低脂肪食群と低炭水化物食群、および地中海食群と低炭水化物食群の間では認められなかった。
全体では、開始時に比較して6年後の有意な減量は地中海食群(P<0.001)と低炭水化物食群(P=0.02)で認められたが、低脂肪食群では認められなかった(P=0.28)

6年後のLDL/HDL比の変化は3グループ間で類似していたが、その中では低炭水化物食群が有意であった。
中性脂肪レベルの低減も3グループ間で類似していたが、低炭水化物食群および地中海食群で有意であった。
トータルコレステロールの低減は3グループ共に持続的で有意であった:
低脂肪食群:7.4 mg per deciliter (0.19 mmol per liter) P=0.03
地中海食群:13.9 mg per deciliter (0.36 mmol per liter) P=0.001
低炭水化物食:10.4 mg per deciliter (0.27 mmol per liter) P=0.02

6年間の減量効果(パネルA):グラフは日経メディカルから引用

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(参考)脂質制限食→低脂肪制限食、地中海式食→地中海式制限食、炭水化物制限食→低炭水化物食と置き替えて読んでください。


LDL-HDL比(パネルB)/中性脂肪(パネルC)/総コレステロール(パネルD)の変化:

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マイコメント:
本研究は低脂肪食(カロリー制限)、地中海食(カロリー制限)、及び低炭水化物食(カロリー制限なし)の3つの食事パターンを比較したものです。日本糖尿病学会を強く意識し過ぎる余りに、“低脂肪食 vs 低炭水化物食の部分にだけフォーカスして、糖質制限ダイエットのメリットをクローズアップすると読者に誤解を与えかねません。

2年間でのダイエットの遵守率は、低炭水化物食グループが3群の中で最も低かった。
24ヶ月後の低炭水化物食グループの炭水化物の摂取比率は、条件設定値を上回る40.4%±7.1(中程度炭水化物食)であり、低炭水化物食を実行させることの難しさを物語っているとも言えます。因みに、低脂肪食グループは50.7%±5.7、地中海食グループでは50.2%±8.6と報告されていますが、一部の糖質制限ダイエット推奨派は、「スーパー糖質制限にしておればもっと減量できた筈だ」と相も変わらぬ我田引水の発想であり、糖質制限を厳しくしたら遵守率が一層悪くなるリスクがあることには全く触れようとしません。

次に減量に関して、論文発表後に専門家からも、「低炭水化物食グループが3群の中で総カロリーが最も低かった」ことが指摘されています。本論文には摂取量の減少において有意な群間差は無かったとの記述がありますが、添付の詳表を纏めると一様ではないことが一目瞭然です。特に地中海食グループと低炭水化物食グループとでは明らかな差異があることが分かります。

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被験者のベースライン(実験開始時)の体重は「低脂肪食グループ91.3kg±12.3、地中海食グループ91.1kg±13.6、低炭水化物食グループ91.8kg±14.3」、BMIは「低脂肪食グループ30.6±3.2、地中海食グループ31.2±4.1、低炭水化物食グループ30.8±3.5」で、3群の被験者は殆ど変らないことを考慮すると、地中海食グループより摂取量が少なかった低炭水化物食グループの減量がより著しかったことは理解できる。しかし、低脂肪食グループと低炭水化物食グループの対比では、6ヶ月/12カ月までは低炭水化物食グループの摂取量が低く、24ヶ月では逆に低脂肪食グループが低いにも拘わらず、最終的な減量効果は低炭水化物食グループに軍配が上がる結果となっている。摂取量は被験者からの “food-frequency questionnaire”による自己報告に基づいており、原因はここにあるのかも知れないなど、幾つかの理由は想像できるが真相は分からない。
更に、女性だけでは、低脂肪食群:−0.1 kg 、地中海食群:−6.2 kg 、低炭水化物食群:−2.4 kgとなっており、地中海食群の減量幅が一番大きくなっている。
従って、これらのデータを以て、低炭水化物食グループの減量効果が炭水化物の制限 or カロリー制限のいずれに因るものか結論付けることは出来ない。

更に、4年間の追試について、摂取量/遵守率の明示はないですが、結果報告には低炭水化物食の減量効果が最も大きいことは示されていません。逆に、低炭水化物食グループのリバウンドが最も大きかったことが報告されています。

余談ですが、糖質制限を強く推奨する江部医師は、2013年1月25日付けでPROS ONE誌に掲載された国立国際医療研究センター病院糖尿病・代謝・内分泌科医長の能登洋氏の研究論文に対しては、「このメタ解析は高糖質群(60〜70%)と中糖質群(30〜40%)の比較であり、スーパー糖質制限食(糖質12%)については触れていない」と文献の価値を否定する発言をしておられるが、当該DIRECTの研究の低炭水化物食も結果的に40.4%±7.1の中糖質の比較であるにも拘わらず、この論文を称賛してスーパー糖質制限の優位性を標榜しているのは解せません。

本論文が示すように低炭水化物食ダイエットにもそれなりの効果と安全性があり、加えて、カロリー計算も必要ないと云うメリット(実は諸刃の剣でデメリットにもなります:ダイエット進行が暗礁に乗り上げた時、レビューしてその原因を突き止めることが出来ない)もあるようなので、米国糖尿病学会も示唆しているように、断定できる状況ではないがニューメラシーを欠く特定層には合っていると云えるかも知れません。しかし、幾つかの一流文献が示すように、糖質制限ダイエットのリスクが憂慮されているのも事実ですから、更なる研究が必要かと思います。

因みに、米国糖尿病学会は、本論文イスラエルDIRECT(文献NO.108)を含む 246件の研究文献をレビューした上で、2013年10月9日付けの公式声明で低炭水化物食に関して次のように述べています。これは蓋し一般のダイエットについても当てはまるでしょう。
『全ての糖尿病患者に共通する “ある1つの炭水化物の摂取量を特定する” エビデンスは不十分である。摂取量の目標設定は各患者と協同して行われるべきである。高炭水化物食と比較して低炭水化物食(21gから総摂取量の40%まで)が、血糖値やインスリン感受性の改善を示す幾つかの研究があるが、他方、4つのランダム化比較試験では血糖値の有意差は示されていない。これらの研究の多くは小規模/短期間で、而もリテンション率が低い。同様に幾つかの研究は、高炭水化物食に比べて低炭水化物食の方が、中性脂肪、VLDL中性脂肪、VLDLコレステロール、総コレステロール、HDLコレステロールなど血清中脂質やリポ蛋白の改善を示したが、一方では有意差が認められなかったとする研究もある。これらの研究はリテンション率が低く、サイズ効果を検出する確率ロスや偏った結果を招く可能性があることに注意しなければならない。
多くのレビュー研究では、多量栄養素の内容結果の解釈を混同することで体重減が生じている』

締め括りますと、
いずれにしても、ヒトの代謝は指紋のように千差万別で、且つ置かれている社会的環境も様々な中で、“One size fits all”のダイエット方法なんてありません。減量のための食事パターンは、糖尿病治療、健康促進、美容(スリム)、バルクアップ(lean)、運動パフォーマンスの向上など目的別に応じて、年齢、性別、食品のアベイラビリティ、健康食品への知識、嗜好、文化、知的度、宗教、健康志向、収入、時間的制約、家庭の状況etc各人の個別性を考慮して採り入れられるべきですこの論文は、一部の熱狂的な糖質制限ダイエット推奨派が吹聴するような “糖質制限ダイエットはエネルギー収支をも超越する絶対的/排他的に優位な減量方法である”ことを立証するエビデンスではありません。


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