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zoom RSS 第894回 褐色脂肪のダイエット効果はウソかホントか?

<<   作成日時 : 2015/08/31 14:21   >>

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褐色脂肪細胞は主に首回り、肩甲骨の間、心臓や腎臓などに存在し、その役割は体脂肪の蓄積ではなく熱産生であり、成人における脂肪燃焼に重要な影響を及ぼすとされ、洋の内外を問わず褐色脂肪に着目したダイエットが話題になりました。

米国では、第265回 アイステラピーダイエット(2012/07/12)で紹介したように、Mercola医師が、“褐色脂肪を活性化させて体脂肪を1日当たり400〜500kcal余分に燃やす”と謳って、褐色脂肪が分布する背中上部と胸の上部にアイスパックを当てることを奨めました。
日本では、肩甲骨を動かすことで褐色脂肪細胞を活発にし、脂肪を燃やしやすい体にするという肩甲骨ダイエットが話題になりました。

これらはまやかし情報でした。
実は、先行研究で成人に存在すると云われていた褐色脂肪細胞とは、いわゆる古典的な褐色細胞とは遺伝的に異なるベージュ(brite)細胞と呼ばれる白色脂肪組織内に存在する独自の脂肪細胞だったのです。

それでは、「褐色脂肪に関する研究の歴史的変遷」及び「ふるえ/非ふるえ熱産生」のおさらいをした上で、第3の脂肪と云われるベージュ脂肪細胞のダイエット効果の真相に迫っていきたいと思います。


画像


褐色脂肪細胞

1551年にスイスの博物学者Gessner.K.Conradiから、齧歯目リス科マーモットの背中に ”Neither fat nor flesh”、つまり “脂肪でもなければ筋肉でもない” 細胞組織が存在することが報告され、褐色脂肪細胞の存在が初めて示唆されました。

それ以降、何百年の長きに亘って「褐色脂肪細胞は筋肉様の働きをするが脂肪であり、新生児や冬眠動物に多く、ヒトに於いては成人になると激減するのが特徴である」と考えられてきました。

2000年代に入ってヒトの褐色脂肪細胞に関する研究は、分子生物学/生物発生学/遺伝子工学などの発展に伴って深化し、2007年にはNedergaard et alによる論文 “Unexpected evidence for active brown adipose tissue in adult humans(成人における活性化された褐色脂肪細胞の存在に関する意外なエビデンス)” がThe American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolismで発表され、成人に褐色脂肪細胞が存在する確証が示されました。それ以降も米国、オランダ、スウェーデンなどの研究チームが続々と確認しています。

日本でも2009年には斉藤昌之教授(天使大学大学院)から、「被験者を低温にさらすと、肩甲骨から肩にかけてグルコース代謝の亢進によって激しく発熱することが画像で確認された」との報告がありました。
また、画像を使った検査で、「BMIや内臓脂肪量が多いほど褐色脂肪細胞の活性が低いこと」、「痩せていて正常な血糖値の成人ほど、褐色脂肪細胞がより一般的に存在する」ことなども報告されており、生活習慣病の予防と褐色脂肪細胞の関連が示唆されました。


寒冷時に起こる「ふるえ熱産生」と「非ふるえ熱産生」

全ての恒温動物は、寒冷環境の中でも細胞機能や生理的プロセスを継続するため、体温維持のための熱産生を行っています。

ふるえ熱産生とは?
ふるえによる熱産生は骨格筋の収縮の繰り返しによる熱産生であり、運動神経を介して調節されます。

非ふるえ熱産生とは?
非ふるえ熱産生とは代謝亢進による熱産生の増加のことです。
視床下部が低温を感知すると、交感神経活性化を介して、褐色および白色脂肪組織にノルアドレナリンが放出されます。これがβ3アドレナリン受容体を活性化し、白色脂肪組織で脂肪分解を起こすと同時に、褐色脂肪組織で熱産生遺伝子(PPARγ-coactivator1a、UCP1、Acsl1)を活性化させます。Alternatively activated macrophages(AAM:代替活性化マクロファージ)は熱産生を調節しています。IL-4はマクロファージを刺激し、発熱遺伝子発現および脂肪酸の動員エネルギー消費を増加させます。さらに、AAMによるノルアドレナリン分泌が寒冷ストレスに対する生体反応を調節していることも明らかにされました。交感神経に加えて、AAMは第2の非ふるえ熱産生の調節回路を形成している可能性が示されました(Nov 20, 2011英科学誌Nature)

ふるえ熱産生の発生に関わる脳神経回路が、2011年に京都大学の中村和弘助教授らにより解明されました。更に、私たちの体は通常寒い時には、交感神経を介して自律的に非ふるえ熱産生を起こして体温を維持しますが、それでもまだ多量の熱を作る必要があるほど寒い時には、生命の維持のために運動神経に影響し、しゃべる/歩くなど随意運動を犠牲にしても骨格筋を震わせて熱を作ることが示唆されました。


ベージュ (brite)脂肪細胞

2008年に大きな変革が訪れました。
Harvard Medical School/Dana-Farber Cancer InstituteのDr Bruce Spiegelmanら研究チームにより、褐色脂肪には“myf-5(筋肉様)細胞系列から発生する古典的な褐色脂肪”と
もう一つは“非myf-5系列由来の白色脂肪から発生するUCP-1陽性細胞”の二つが存在することが示唆され、後者はベージュ脂肪と名付けられました。

2012年には、“ベージュ脂肪細胞”がマウスとヒトにおける古典的な褐色脂肪細胞とは異なったタイプの熱産生脂肪細胞であることが同チームによって同定されました。


Cell
2012 Jul 12
Beige adipocytes are a distinct type of thermogenic fat cell in mouse and human.

マウスの鼠径部の皮下脂肪(白色脂肪)と肩甲骨間の褐色脂肪から細胞集団を単離して遺伝子発現解析を行い、皮下脂肪内に古典的な白色脂肪細胞とも褐色脂肪細胞とも異なる「ベージュ脂肪細胞」を生じる前駆細胞を同定しました。
次いで、移植実験によりin vivoでの白色脂肪細胞およびベージュ細胞のUCP1発現能の差を検討した結果、ベージュ細胞は、白色脂肪と同じく非刺激下の状態でのUCP1の発現は極めて低いが、古典的な褐色脂肪同様にcAMP刺激に反応して高レベルのUCP1発現と呼吸率を示しました。また、ベージュ細胞は、白色脂肪ではなく褐色脂肪とも異なる独自の遺伝子発現パターンを持ち、ポリペプチドホルモンであるirisinに選択的に反応しました。さらに、先行研究で同定された成人ヒトの褐色脂肪組織は、古典的な褐色脂肪細胞ではなくベージュ脂肪細胞により似ていることが分かりました。運動によって増加するホルモンであるアイリスインは、マウスのベージュ脂肪細胞を活性化することが示されているため、ヒトでの応用可能性も示唆されました。

2013年には、スイスのFood, Nutrition and Health研究所から、「マウスにおける寒冷刺激によって形成されたベージュ脂肪細胞が、5週間の温暖適応で白色脂肪細胞に戻ること」、さらに、「これらの古典的な白色脂肪細胞は、更なる寒冷刺激でBRITE脂肪細胞に変換され得ること」、故に「白色からベージュへ形質の相互変換バランスをシフトすることで、エネルギー消費を増加させ、抗肥満の新たな治療法となるものと考えられること」が報告され、28 April 2013付け Nature Cell Biologyに掲載されました・・・第467回 ベージュ脂肪細胞 vs 白色脂肪細胞

2014年には、アメリカ国立衛生研究所(NIH)で内分泌学者Dr Paul Leeが行った6日間の実験研究では、被験者を18℃〜12℃に温度設定した実験室の中に入れ、ぶるぶると寒さに震えさせると、筋肉からアイリスイン(ふるえ)/褐色脂肪からFGF21(非ふるえ)と呼ばれるホルモンが分泌され、白色脂肪細胞から体脂肪を燃やす作用のある褐色脂肪を作りだすことが分かりました・・・第602回 寒冷による震えが脂肪を燃焼させる
因みに、寒さで体が震えはじめたのは個人のバラツキはあるが16〜14℃で、10〜15分間ふるえ続けると、中程度のエクササイズ(Vo2 max.40%でサイクリング)1時間に相当するアイリスインが分泌されたそうです。


ベージュ脂肪細胞のダイエット効果

寒さに晒されることによってベージュ脂肪細胞が活性化し、カロリー消費が高まるのは真実の様です。しかし、現時点で一般的な抗肥満療法として広く推奨することには、わたし的にはどうしても違和感が残ります・・・寒さに強いこだわりの人は別として!

具体的な例を挙げると、機内温度はフライトや季節によっても変わりますが、ANAの場合は22〜26℃に設定されており、外資系の航空会社はこれよりも低めになっているそうです。久しぶりにエミレーツ航空でドゥバイに行ってきましたが、機内では長袖を着込んでブランケットで全身を覆っても非常に寒く、上記実験で設定された室温16℃〜12℃によるダイエットが如何に寒くて現実的でないか想像に難くありません。

Thermal Neutral Zone (TNZ)とは、ノーマルな代謝に影響を与えない定温範囲のことで25〜30℃と定義されています。これは裸での安静時立位の値で、震え/発汗/運動は考慮されていません。軽装で放熱や還流によるロスを考慮に入れた快適な温度は18〜22℃とされています。上記の実験研究における温度はいずれも快適な温度とは言えません。それは実験ゆえの極端な設定と言えるのでしょうが、リアルワールドでの遵守性はきっと悪くなることが危惧されます。
更に、ダイエットは空腹感との戦いとも言えますが、TNZ範囲外で生じる食欲の問題も無視できないでしょう。

寒さに体をさらすことで消費カロリーは一体どれくらい高まるのでしょうか?

スウェーデンの研究では被験者の足をアイスバスに入れてスキャナーで調べ、オランダの研究では室温16℃/2時間で褐色脂肪細胞の活性化が観察され、動物モデルをベースに計算すると、50gの褐色脂肪細胞が総エネルギー摂取量の約20%を燃焼させることが報告されています。又、フィンランド大学の研究では、若者5名のうち1名の褐色脂肪細胞が2.2オンス(約62g)あることが確認され、これがフルに活性したら年間で4kg相当の体脂肪を燃焼することが計算で示されました。逆に、米国ボストンのハーバードメディカルスクールの研究では、平均年齢27.1歳の健常な若者10名をエフェドリン群(1mg/kg)/生理食塩水群(対照群)/寒冷暴露群(水冷14℃ベスト着用)の3群に割り付けたが、1日のエネルギー消費量の増加はエフェドリン群で+140kcalでした。しかし、ほっそりした人は肥満者より褐色脂肪が多いと言われていますが、寒冷暴露群は肥満者ではないにも拘わらずたったの+70kcalしかなかったことが報告されています。
これらはいずれも褐色脂肪/ベージュ脂肪の違いが認識されていなかった当時の研究であり、リアルな効果サイズ(ベージュ脂肪/ふるえ/非ふるえ)を実証するには更なる研究が必要でしょう。










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