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zoom RSS 第993回 血糖変動が肥満の原因??

<<   作成日時 : 2017/02/03 05:22   >>

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炭水化物(糖質)中心の食事をすると血糖値が上昇し(spike)、これを下げようとしてインスリンが分泌される…糖質量が多いほど血糖値の上がり方は激しくインスリンの分泌量も増え、延いては血糖値が急激に下降する(crash)……その結果、空腹感が生じ過食→過体重/肥満に至る。

これって正しい情報ですか?
いいえ!
まるでダイエットの常識的な既成事実であるかの如くに真しやかに語られていますが、インスリン治療中の糖尿病患者では起こり得ても、非糖尿病の健常者では空腹を引き起こす低血糖レベルまでcrashすることは実際的には稀有なことです。

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空腹感が始まる血糖値閾値
低血糖が空腹感や食物渇望を引き起こすことには異議を挟みません。
米国Pittsburgh大学のMitrakou et al.の研究で、ホルモンの拮抗反応/自律神経系症状/神経低糖症/認知機能低下が始まる血糖閾値が明らかにされています。

ホルモン分泌の活性化:
・グルカゴン:68 ± 1 mg/dl
・エピネフリン:68 ± 1 mg/dl
・ノルエピネフリン:65 ± 1 mg/dl
・成長ホルモン:67 ± 2 mg/dl

自律神経症状(不安、動悸、発汗、過敏症、ふるえ): 58 ± 2 mg/dl

神経系糖欠乏症状(空腹、めまい、うずき、視覚障害、思考困難、幻覚): 51 ± 3 mg/dl

認知機能試験の低下: 49 ± 2 mg/dl


それでは「第508回 高GI食品 vs 摂食行動」で紹介したDr. David Ludwigらの研究報告を振り返ってみましょう。

『過体重/肥満の男性12名に高GI値(HGI)と低GI値(LGI)の二種類のミルクシェイクを割り当てた。血糖値は2時間まではHGI群で大きく上昇したが、4時間経過した時点では逆にHGI群の方が低く、空腹感は大きく高まっており、このとき25の脳領域で血流の変化(活性化)が認められた』と報告しています。

しかし、被験者の空腹時血糖値の平均は88mg/dLで正常レベルです。HGI群では食後crash(血糖値の低下)の最低レベルでも85mg/dLで、その差は僅か3mg / dl
にすぎません。上述した閾値より遥かに高い血糖レベルです。
更に、LGI群の血糖値は95mg/dLであり、HGI群との差異は僅か10mg/dLです。

Dr. David Ludwigらは、“HGI群における血糖値のspike/crashが空腹の昂進と側坐核の活性化の原因で被験者の食欲を高揚させた”との解釈を示唆していますが、このようなデータ(正常レベル域での血糖変動)を以ってHGI群での空腹感を説明するには無理があります。


最近では、ドイツの研究チームBernd Schultesらが、血糖値が空腹感に及ぼす影響について単離的に調べました。結論として『本研究の知見は、血糖spike/crashと高インスリンが空腹感/満腹感の短期的な主要制御シグナルであるいう概念とは明らかに異なる』と述べています。

Appetite
Volume 105, 1 October 2016, Pages 562–566
Glycemic increase induced by intravenous glucose infusion fails to affect hunger, appetite, or satiety following breakfast in healthy men

デザイン:
単盲検、cross-over比較試験
15名の健康な若い男性を被験者として、別々の日に生理食塩水or 50gのグルコース入り溶液500 mlを1時間かけて静脈に点滴注入した後で、1時間の観察を行った。
点滴1時間前に軽い朝食(284kcal)を摂った。

結果:
食塩水群に比べてグルコース群の血糖値とインスリンレベルはいずれも著しく高まった:
・グルコースpeak:9.7 ± 0.8 vs 5.3 ± 0.3 mmol/l
・インスリンpeak:370.4 ± 66.5 vs 109.6 ± 21.5 mmol/l

点滴が終わると血糖値は急減に低下した:
3.0 ± 0.2 mmol/l vs 3.9 ± 0.1 mmol/l

<ご参考>
9.7 mmol/l → 175 mg/dL
3.0 mmol/l → 54 mg/dL


グルコース群で血糖値の変動幅は大きかったが、実験を通して主観的な空腹感、食欲満足感、満腹感についての群間差は生じなかった。


最後に、
精製された炭水化物、Sugar/脂肪/塩分が多く含まれた所謂hyperpalatable(超美味)な加工品などが、脳の視床下部や報酬系に作用し摂食行動に関係することは否定しません。しかし、これに血糖値が深く関連しているという堅牢なエビデンスがあれば是非とも示して頂きたい。

参考記事
Stephan Guyenet
Is Refined Carbohydrate Addictive?
Do Blood Glucose Levels Affect Hunger and Satiety?


追記 2017.2.5

第908回 小麦粉や白米はなぜ良くないのですか?」の中で、“精製炭水化物は過食に駆り立て肥満リスクを高める”ことを示すエビデンスとして(16)が引用されていますが、これも上述した“Glycemic increase induced by intravenous glucose infusion fails to affect hunger, appetite, or satiety following breakfast in healthy men”を指します。






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