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zoom RSS 第1000回 糖質制限+筋トレで筋量を維持して体脂肪を減少させる?

<<   作成日時 : 2017/04/28 06:41   >>

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米国Wilson et al.から、『糖質制限食(ケトン生成)と筋トレを組み合わせることで、 筋量・筋力・パワーを維持して体脂肪を減らすことが可能である』という研究報告がありました。しかし、この論文には条件設定や結果に不適切/不明確な点が散見されるので、論文内容を紹介しながら小生の疑問点などを緑色文字で併記していきます。

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Wilson et al.
Journal of Strength & Conditioning Research
2017 Apr7
The Effects of Ketogenic Dieting on Body Composition, Strength, Power, and Hormonal Profiles in Resistance Training Males

イントロ:

米国Duke大学メディカルセンターYancy et al.による24週間の先行研究で、“いかなる種類であれエクササイズとは関係なく、低炭水化物/ケトン産生食(1日当たり炭水化物<20g)でLBMの減少をミニマイズして体脂肪が減少した”ことが分かっている。

そこで、本研究では若くて健常な男性が筋トレを併行する条件下で、“低炭水化物/ケトン産生食(KD=炭水化物5%、たんぱく質20%、脂質75%)”の方が“伝統的な西洋スタイル食(WD: 炭水化物55%、たんぱく質20%、脂質25%)”と比較して、筋厚(骨格筋肥大)/筋力/パワーを維持しながら体脂肪が大いに減少するという仮説を立てて調査を行った。本研究の第二の目的は「KDが血中脂質プロフィール/健康の血液バイオマーカー/アナボリックホルモン状態に及ぼす影響についてのdetermination(決定)」で、第三の目的は「KDで炭水化物をrefeedingすると体組成/パフォーマンスにどのように影響するかについてのobservation(観察)」だったと研究者らは述べている。

低炭水化物/ケトン産生食(KD)に関し、過体重/肥満者や持久性アスリートを被験者とした研究はあるが、筋トレを実践している男性を被験者とした研究としてはこれが初めてである。

補足説明:
上述のYancy et al.による研究の被験者120名は、BMI 30-60の過体重/肥満者(高脂血症)の超デブちゃんです。24週間での脂肪減少は低炭水化物食群−9.4kg/低脂肪食群−4.8kgでした。体脂肪率で表すとそれぞれ−5.8%(41.0% → 35.2%)と−2.8%(41.1% → 38.3%)です。FFM(除脂肪量)は、低炭水化物食−3.3kg(この内2.4 kgは水分)/低脂肪食−2.4kg(この内1.8 kgは水分)で大半が水分です。

第270回 “体脂肪率の初期値” vs “体組成の変化”を思い出してください。
食事制限で減量するとき、太っている人ほどFFMの減少は少なく、脂肪の減少が大きい。その逆に、痩せていればいるほど、より多くのFFMが失われ、脂肪の減少は少なくなる傾向があります。

ご参考までに、LBM(Lean Body Mass)及びFFM(Free Fat Mass)はいずれも“除脂肪量”という意味ですが、両者には違いが一つあり、FFMにはessential Fatが含まれていません。essential Fatとは骨髄脂肪と細胞膜を指します。



方法:

試験期間:11週間

被験者25名(男性)
トレーニング歴:5.5±3.8年
スクワット:体重の1.56±0.14倍

被験者はKD群またはWD群のいずれかにランダムに割り付けられた。
KD群(13名): 平均年齢23.5 ± 4.5歳
WD群(12名):平均年齢21.3 ± 3.7歳

補足説明:
被験者の選定基準:積極的にレジスタンストレーニングに取り組んでいる18〜30歳の男性で、スクワット負荷1RMが少なくとも体重の1.5倍となっています。
しかし、実際に選定した被験者のスクワット負荷は下限1.42倍であり厳密に言うと外れる。また、実年齢はKD群19歳〜28歳/WD群17.6歳〜25歳で、且つ、トレーニング歴5.5±3.8年(1.7〜9.3年)であることを重ねてみると、もっとしっかり選定すべきだったのではないかと思料します。


試験期間中にレジスタンストレーニングまたは持久性トレーニングを行わないように全被験者を指導した。

両群の食事内内容は栄養士が計算し、Mifflin St. Jeor equationに基づいて維持カロリーとした。

補足説明:
第504回 カロリー欠損でも筋量アップする??で説明したように、本研究の被験者のような人たちでは、アンダーカロリーの条件下で筋肥大は起こらない。


体組成、パフォーマンス、および血清マーカーの測定は、ベースライン(0週)、レジスタンストレーニング介入後(10週目)、及びKD群への炭水化物refeeding後(11週目)に行った。

包括的な代謝パネルとテストステロンレベルはベースライン及び11週目に測定した。

KD群の食事遵守の指標として血液ケトンを毎週モニターした。

LBM(除脂肪体重)及びFM(脂肪量)はホロジック社製二重X線吸収(DXA)装置を用いて測定した。
筋肥大(筋厚)は超音波で測定した。

両群ともに2週間の食事適応期間の後で7週間のレジスタンストレーニングを行った:

補足説明:
ディスカッションには “2週間のケト適応の後で8週間のレジスタンストレーニングを行った”と記載されている。
そもそも分かりづらい論文であるのに加えて、斯様な食い違いとあると読者は混乱します。


レジスタンストレーニング

3分割
・Hypertrophy Lower Body + Bench
・Hypertrophy Upper Body
・Strength Total Body

トレーニング内容

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2週間の食事適応期間後に、高ボリュームの筋トレを7週間、引き続き低ボリューム(taper)の筋トレを2週間行った:3〜6週は1RMの65〜95%、7〜9週は個人のパフォーマンス能力に応じて25%アップ、そして最後の2週間はテーパリングでボリュームを40〜50%ダウンした。


結果:

平均摂取量(kcal)
3〜10週:KD群2608.6±157.5、 WD群2549.5±212.5
11週:KD群2619.5±192.1kcal、WD群2513.1±236.8kcal

炭水化物の摂取量(g)
11週目にKD群のみ脂質量をテーパリングし炭水化物のrefeedingを行った。
炭水化物1g/kg(2日間)、2g/kg(次の2日間)、3g/kg(最後の2日間)

3〜10週:KD群30.9±5.9g、WD群317.6±31.1
11週:KD群263.5±42.9g、WD群310.4±24.5

ケトーシスは2週目で確認された。

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両群の体重推移は下表の通り。

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補足説明:
日本医師会による「1日に必要な推定エネルギー必要量」を用いて、KD群のベースラインの体重80kgをもとに推定エネルギー必要量を概算すると、活動レベルが普通の場合は2660kcal、高いレベルでは3040kcalになります。アスリートの場合は更に高くなります。
上表の摂取カロリーは“活動レベルが普通”の場合は維持カロリーレベルですが、“活動レベルが高い”或いは“運動選手”の場合では明らかにアンダーカロリーになります。

因みに、研究者は上述したように維持カロリーにしたと言っています。
上表の体重の変化を見れば、あながち間違っていないとも見とれます。


LBM
10週目の時点で両群ともに有意に増加した(KD群 2.4% vs WD群4.4% p<0.01)
しかし、10〜11週目でKD群は4.8% (p<0.0001)増加したが、WD群は0.72%減(p<0.54)であった。
従って、11週目の時点ではベースラインに比べてKD群は7.3%増、WD群は3.6%増となった(p<0.0002)

補足説明:
Wilson et al.が2014年12月に発表した論文 “The effects of ketogenic dieting on skeletal muscle and fat mass” には、11週間でLBMは低炭水化物/ケトン産生食で4.3±1.7 増加、低脂肪食では2.2 kg±1.7増加したと記載されており整合性を欠く。

体脂肪
ベースラインでは有意な群間差はなかった。
10週目でKD群22.4%減/WD群13.0%減(p<0.0001)と両群ともに減少したが、KD群のみ10〜11週目での炭水化物refeedingで増加し、最終的にはKD群-2.2 kg±1.2kg/WD群- 1.5±1.6kgとなった。

補足説明:
グラフを見るとベースラインで体脂肪の群間差があることは明らかです。


筋厚
ベースライン時は有意な群間差はなかった(p <0.05)
1〜10週目では両群ともに有意に増加した(KD群5.2%およびWD群3.5% p<0.03)
11週目ではベースライに比べてKD群のみ有意に増加した(8.0%, p<0.0001)

補足説明:
LBM、体脂肪、筋厚の変化などを含めてデータは全体的に%で表されており、絶対値が明記されていません。


筋力とパワーは両群ともに1〜11週で同程度に増加した。

血清脂質測定値は1-10週では変化がなかったが、KD群のみ10〜11週目の炭水化物refeedingで血漿中性脂肪濃度が高まった。

総テストステロンは、WD群(36 ng/dl)に比べてKD群(118 ng/dl)で有意に上昇したが、インスリンの変化は認められなかった。


ディスカッション:

この研究の主たる所見は、「KDがWDに比べて有益な体組成変化をもたらし、且つ、筋力およびパワーが同様に高まったこと」、「炭水化物refeed後に中性脂肪が増加した点を除いて、ケトン生成食を摂った被験者に血中脂質プロファイルまたは健康パラメーターに負の変化がなかったこと」、加えて「適度なKD期間の後で炭水化物をrefeedすると体脂肪量に負の影響を及ぼすが、LBMと嫌気性パワーに利点をもたらす可能性があること」である。

テーパリングは、トレーニングと低炭水化物摂取によるグリコーゲン枯渇中に最大11%の筋繊維サイズを誘発することが示されている(Trappe et al.)。

仮説的ではあるが、最終週の期間にKD群で見られたLBM‣筋厚アップの根底には多くの潜在的なメカニズムが存在する。

10〜11週目にKD群で体重が5kg増加したという知見に重点を置くべきであろう。このうち3kgはLBMの変化に因るものだ。炭水化物を制限した後で炭水化物をrefeedすると筋グリコーゲンはベースラインよりも増加することが実証されている(Gaesser et al.)。これはいわゆるグリコーゲンの超回復という現象である。

さはさりながら、筋肉のグリコーゲン貯蔵能力を考慮すると、筋肉内と肝臓内のグリコーゲンおよび水分の増加がLBMを占めるのは1.0〜1.5kgに過ぎないと推測できる。

したがって、当該研究の最終週に生じたLBMの予期せぬ変化は、主に水分の大幅な流動変化によって引き起こされたと考えられる。
このように考えると両群は研究全体を通しては同様の筋肉量を得た可能性が高い。

補足説明:
本論文の共著者Ryan Loweryは ”こちらの記事” で、「遡って、水分測定を追加することは素晴らしい考えだったと思うが、その時には装置を持っていないし、思いつきもしなかった。この分野の将来の研究は確かにこれを組み込むべきであろう」と語っています。

高炭水化物食と比較してKD(ケトジェニックダイエット)にはmetabolic advantageがあることを多くの研究が実証している(Volek et al@, Volek et alA)

例えば、
Volek et al.の研究では、過体重の男性を低脂肪食(LFD; 脂肪<25%)または超低炭水化物食(VLCD;1日50g未満)のいずれかに12週間割り付けた。各群の半数はレジスタンストレーニングを行い、残りはセデンタリーであった。
セデンタリーVLCD群はセデンタリーLFD群と比較して、体脂肪およびインスリンの減少が有意大きかった。体脂肪が最大に減少したのは、レジスタンストレーニングVLCD群だった。さらに、ケトジェニックダイエットで維持カロリー食を割り当てられた標準体重でセデンタリーの被験者は、体重が3.4kg減少し、LBMは1.2kg増加した。

さらに、エリートの体操選手を被験者としたPaoli et al.の研究では、トレーニングなしで4週間のKD後に体脂肪が減少した。WD群よりKD群のたんぱく質摂取量が非常に高かったことを見逃してはいけない。たんぱく質の摂取量がKD実行中のmetabolic outcomeに影響することは御貴承の通りである。
因みに、われわれの研究は、レジスタンストレーニングを実践している男性の体脂肪について、トレーニング/カロリー/たんぱく質の摂取量を管理しながらKDを調査する最初の研究だと思料している。

補足説明:
Paoli et al.
J Int Soc Sports Nutr. 2012 Jul
Ketogenic diet does not affect strength performance in elite artistic gymnasts

8名の一流の体操競技者(年齢 20.9 ± 5.5 歳)を対象に、超低炭水化物/ケトン産生食(VLCKD)を30日間割り当てて、筋力/パワー/スピードなどを調べたが有意な群間差はなかった。体重(69.6±7.3 Kgから68.0±7.5kg)及び体脂肪(5.3±1.3 kgから3.4±0.8kg p<0.001)はいずれも低脂肪食群(WD)に比べてVLCKD群で減少したが、筋量については有意な増加は認められなかった。
たんぱく質の摂取量は、VLCKD群200.8±18.3g vs WD群83.5±9gだった。
因みに、VLCKD群の摂取カロリーは 8255kj(1973kcal)となっており、アンダーカロリーであろうことは容易に見て取れる。


1〜10週目では体脂肪の減少は、WD群と比較してKD群で有意に大きかった。これは栄養基質の利用がグルコースから脂肪にシフトしたからだと思われる。この主張はWDグループと比較してKDグループの全血液ケトンレベルがより高くなることによって裏付けられている。

最近の研究で、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の阻害を介して骨格筋における炭水化物を利用する能力がダウンレギュレーションされることが示されている(7)。
これらの変化は独特のmetabolic adaptationをもたらし、燃料として脂肪の優先使用に有利である。しかしながら、KDの長期間続いた後の10-11週目での炭水化物refeedが、脂肪量の急激な増加を促進したようだ。この脂肪量の急激な変化は、10〜11週目からの水分の流動変動によって説明できると思われる。したがって、脂肪量の増加が主に脂質蓄積によって引き起こされたとは考えにくい。


結論:
KDはレジスタンストレーニングと組み合わせることで、体組成、パフォーマンスおよびホルモンプロファイルに有益な変化をもたらすことが期待できよう。

関連記事:
Mr. Adam Tzurが “Critical Analysis of Wilson Et Al’s. 2017 Keto Study” で批評しています。英語が読める方は御覧ください。


追記:2017/5/3


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