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zoom RSS 悪魔の証明

<<   作成日時 : 2017/06/13 05:56  

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悪魔の証明とは?

第99回 欲について千思万考で述べたように、言葉の定義が研究分野によって異なることは珍しいことではなく、「悪魔の証明」という言葉も様々な解釈が展開されているのが実状です。
この言葉は、元来は古代ローマ法における所有権の証明の困難さを言い表す比喩ですが(原義)、現在では「積極的事実(あること)の証明」或いは「消極的事実(ないこと)の証明」いずれであれ、全数調査が膨大であるために証明が困難または不可能である場合の比喩として用いられています(広義)。つまり、「真」であることが自明と思しき命題に対して、真が立証できないことを理由に偽であると主張すること、若しくは「偽」であることが自明とみられる命題に対して偽であることを立証できないことを理由に真であると主張する弁法のいずれも悪魔の証明になります。しかし、一般的には日本だけでなく海外でも「消極的事実の証明」に用いられることが多いようだ。
加えて、本当に「悪魔の証明」と言えるほどに困難な証明であるかは、具体的な証明対象や条件次第で変わり得るし、当然ながら人によって評価も異なり得ることには注意する必要があるようだ。


未知論証とは?
未知論証は消滅的証拠とも呼ばれ、「Aではないと立証できないならばAである」、あるいは「Aであると立証できないならAではない」と主張する誤謬です。つまり、命題がこれまで偽と証明されていないことを根拠に真であることを主張する、あるいは命題が真と証明されていないことを根拠に偽であると主張することです。
悪魔の証明は未知論証のバリエーションの一つであるという考え方があり、他方では悪魔の証明は“命題のあり方”で未知論証は“論法のあり方”だとする考え方もあります。
このように“未知論証(詭弁性)”と“悪魔の証明”の線引きは明確ではありませんが、いずれの結論も誤謬があったりエビデンスを欠く点では同じです。


序に「ヘンペルのカラス」についても触れておきます。

ウィキペディア「ヘンペルのカラス」(2017/06/12現在)より抜粋
「ヘンペルのカラス」は「全てのカラスは黒い[注釈1]」という命題を証明する以下のような対偶論法を指す[2]。「AならばBである」という命題の真偽は、その対偶「BでないものはAでない」の真偽と必ず同値となる[3][4][5]。全称命題「全てのカラスは黒い」という命題はその対偶「黒くないものはカラスでない」と同値であるので、「全てのカラスは黒い」という命題を証明するには「全ての黒くないものはカラスでない」ことを証明すれば良い[3][4]。そして「全ての黒くないものはカラスでない」という命題は、世界中の黒くないものを順に調べ、それらの中に一つもカラスがないことをチェックすれば証明することができる[4]。そしてこの命題が真である場合、カラスを一羽も調べること無く、それが事実に合致することを証明できるのである[3][4][注釈 2]。これは日常的な感覚からすれば奇妙にも見える[3][4]。こうした、一見素朴な直観に反する論法の存在を示したのが「ヘンペルのカラス」である

『一つの命題とその対偶命題は同値なので、“すべてのカラスは黒い”ことを立証するには“黒くないものはカラスでない”ことを証明すればよい』ことが理論的に正しいことは疑問を挟む余地はありません。しかし、『カラスを一羽も調べること無く、“全てのカラスは黒い”という命題が、事実に合致するか否かを証明できる』というウィキペディアの説明にあなたは納得できますか?
ダイエットの意味”の記事でウィキペディアについて少し触れましたが、本件についてもウィキペディアの説明が必ずしも正しくないことを指摘しておきます。

「すべての黒くないものはカラスでない」という対偶命題の“すべて” の中には当然カラスも含まれており、カラスを調べることなく立証することは直観だけではなく熟考しても不可能であると思います。

また、「全てのカラスは黒い」という命題を立証するため、すべてのカラスを調べるに当たっては、すべてのものの中からカラスを同定しなければならない。

故に、命題および対偶命題ともにカラスも含むすべてのものを調べることになります。

更に言うと、「すべてのカラスは黒い」という命題は、「カラスで黒いもの」と「カラスで黒くないもの」の量的な対比と考えるのが自然です。カラスでないものを全て調べ上げてもこの対比関係の比率は分かる筈もないでしょう。


ロカボ医師を斬る!

「悪魔の証明」や「未知論証」について調べるきっかけとなったのは、実を言うと、糖質制限で著名な山田医師が医学ジャーナルMedical Tribuneで、糖質制限食の優位性
を示すに当たって、“そもそもカロリー制限食の優位性を示すエビデンスはない”と語っておられるのを目にして、その論法に何かしら違和感を抱いたことでした。

「悪魔の証明」や「未知論証」といった課題は小生が苦手とする分野であるため、小生自身の頭の中を整理するために上述の通りメモとして取りまとめた次第で、それらが正しい定義だと断定して主張したいわけではありません。

小生が言いたいことは、糖質制限食が優位であることを主張したいなら、「未知論証」または「悪魔の証明」いずれであれ、そのような手法に依らずに糖質制限食の優位性をしっかり立証することが大事であるということです。

更に、Medical Tribuneでの論説では、自説に都合の良い少数の研究論文のみしか引用(確証バイアス)していないことにも違和感を覚えます。
最近のシステマティックレビュー、例えば、米国メイヨークリニックによる研究では『糖質制限ダイエットを実施した人は、脂質制限によるダイエットを行った人に比べてわずかに減量効果が高かった。また、糖質制限ダイエットにより、血圧の低下や、血糖コントロールの改善が見られた。しかし、その効果は、脂質制限ダイエットやカロリー制限によるダイエットと比較して特に優れているということはなかった』ことが報告されています。また、その他の“第780回 人気ダイエットの減量効果は五十歩百歩!”や“第849回 商業ベースのダイエットプログラムの有効性?”で紹介した研究も同様の内容です。しかし、こういった研究群は蚊帳の外となっています。

また、『"あべこべ" になった食事療法の今後』と題して、米国保健福祉省と米国農務省が食事療法のガイドラインに対する論評として米国の栄養政策が"reverse"されたとしてJAMA 2015; 313: 2421-2422の記事をMedical Tribuneで引用しています。

Harvard T.H. Chan School of Public Healthは “Healthy Eating Plate vs. USDA’s My Plate” で、米国農務省(USDA)が作成した食事ガイドラインに関し、食品業界のロビイストによる政治的/商業的なプレッシャーが絡み、純粋に科学的エビデンスに基づいたものではないことを示唆していますが、JAMAの記事を書いたのは同大学のDr. David Ludwigです。而も、彼は“Insulin-Carbohydrate Model”の主唱者です。この御仁からreverseという言葉が発せられても驚くことではありません。むしろ、このことを米国全体としての特筆すべき趨勢であるかのように誤解を与える表現こそが問題であると私には思えます。まるでセールスマンの売り込みのようです。

加えて、米国糖尿病学会の糖質制限に対する評価もひっくり返ったかの如き印象を与える文章の組み立て方になっており誤誘導を招く恐れが多分にあります。

Take-home Message


脂質制限(Kevin D. Hall)vs 糖質制限(David Ludwig)は、直近の最もホットな議論です。日本における糖質制限食の第一人者として自他共に許す山田医師および江部医師には、DR. Kevin Hallの一連の研究論文をお読みになっていただき、それに対してどのように反証するのか是非ともお聞きしたいものです。勿論、Dr. David Ludwigの受け売りではなくしっかりした個別のお考えをです。

“井の中の蛙 大海を知らず、されど空の高さを知る”は新選組には許されても、グローバルな現代社会において糖質制限食を普遍的に推奨する一流の医師として、大海をも知らねばEBM失格でしょう。

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