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zoom RSS 高脂肪/ケトン産生食で寿命が延びる!?

<<   作成日時 : 2017/10/18 18:15   >>

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論文のハイライト
・ケトン産生食は成体雄マウスの寿命を延ばす。
・運動機能、記憶および筋肉量は、ケトン産生食の老齢マウスで保たれる。
・ケトン産生食のマウスの肝臓および骨格筋でタンパク質アセチル化が高まる。

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Cell Metabolism
Sept5 2017
A Ketogenic Diet Extends Longevity and Healthspan in Adult Mice

概要
栄養失調を伴わないカロリー制限は寿命を延ばすことが示されており、解糖系からβ酸化へのシフトと関連する。 この研究の目的は、低炭水化物食でこの代謝シフトを再現し、マウスの寿命および健康寿命への影響を究明することだった。
12ヶ月齢のC57BL / 6マウスにKetogenic Diet(KD=ケトン産生食)、低炭水化物食、または対照食のいずれかを割り当て、1〜14ヶ月の食事介入後に自然寿命または生理学的機能について試験を実施した。 ケトン産生食(KD)は対照群と比較して寿命の中央値を有意に延ばした。
老齢のマウスでは、KDを摂取したマウスだけが生理学的機能が保たれていた。 亦、KDはタンパク質のアセチル化レベルを高め、mTORC1シグナリングを組織依存的に調節した。 この研究は、KDがマウスにおいて寿命および健康寿命を延ばすことを実証している。

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イントロダクション:
カロリー制限は寿命を延ばし、加齢に伴う病気を遅らすことが多数の動物モデルで示されている(Speakman and Mitchell 2011)。
カロリー制限した動物の寿命延長をもたらす正確なメカニズムは依然として議論の対象となっているが、カロリー制限は炭水化物代謝から脂肪代謝への移行を誘発する(Bruss et al 2010)。
カロリー制限によって増加した脂肪酸酸化およびケトン産生が寿命延長に寄与するかどうかは未だ決定されていない。

低炭水化物食(LCDs)も炭水化物から脂肪酸の酸化への代謝シフトを誘発する。
最も極端なLCDであるケトン産生食(KD)は、マウスの実験で抗炎症代謝状態を促進し、ケトン体のレベルを増加させることが示されており、これはカロリー制限の主たる特徴と似ている(Meidenbauer et al 2014)。

このような類似性があるにもかかわらず、これら食餌パターンによる動物の寿命および健康寿命に関する情報は不足している。
今日までに1件の研究のみが、“生涯にわたりKDを自由に与えられたマウスが、標準食を与えられたマウスと比較して、長命において有意差を示さなかったこと”を実証している(Douris et al 2015)。
しかしながら、この試験で使用された対照群とKD群のマウスはC57BL/6で、このマウス系統では短命であることから、特に非肥満または自由食を与えられた動物においてKDが老化に及ぼす影響は依然として明確ではない。

本研究では、成体マウスに等エネルギーの対照食、低炭水化物食(LCD)、またはKD(ケトン産生食)を与えた。
この研究の目的は、マウスの寿命または健康状態に対するLCDまたはKDの影響を究明することであった。


結果:

トン産生食(KD)は余分な体脂肪のないリーンなマウスの寿命/健康寿命を延ばす

LCDs(低炭水化物食)が成体雄マウスの寿命に及ぼす影響を調べるために、LCD(脂質のカロリー比率70%)とKD(脂質のカロリー比率89%)、及び対照食(炭水化物のカロリー比率65%)を比較した。それぞれの食餌は等カロリーとし12ヶ月齢から与え始めた。

寿命は対照群と比較してKD群で有意に延びた(中央値で+13.6%…Figure 1A)。
LCD群の寿命は、KD群と対照群の中間で、いずれの群とも有意差は認められなかった。
各群の寿命中央値は対照群886日/LCD群943日/KD群1003日だった。
最大寿命(90パーセンタイル)では、対照群1064日/LCD群1123日/KD群1175日となり顕著な差異は見られなかった。
特に興味を引いたのは、死亡時の腫瘍(とりわけ組織球性肉腫)の発生率がKD群で低下したことだった(Table S1)。

これらの食餌が健康寿命に及ぼす影響を評価するために、食餌介入の1 or 14ヶ月後(つまり13ヶ月齢または26ヶ月齢)に一連の物理試験と行動試験を実施した。
新規物体認識試験(Leger et al 2013)(図1B)の結果、対照群またはLCD群と比較して、KD群の老齢マウスでは記憶が保たれていることが分かった。

マウスを金網にしがみつかせてからひっくり返し、マウスが金網から落ちるまでの時間を計るワイヤハング試験(Figure 1C)および握力測定試験(Figure 1D)を実施し、諸筋肉の協調性、筋力、持久力を評価した。
14ヶ月間KDを与えた雄マウスは、同年齢の対照群マウスと比較して、ワイヤハング試験で落下に耐える時間が長く、前肢の握力がより大きかった

KD群の老齢マウスも対照群と比較してロコトロニックスピード試験(Rousselet et al 2003)(図1E)でより早く、飼育試験(Figure 1F)でもよりアクティブで、運動協調性がより良好に維持されていることが示唆された。
ほとんどのケースで、LCD群のパフォーマンスは対照群とKD群の中間であった。
注目すべきことに、運動機能の向上と一致して、腓腹筋と他の後肢筋肉の相対質量はKD群の老齢マウスにおいてより大きかった(Figures 1G–1I and S1)。
まとめると、これらの試験はKDが成体マウスにおいて寿命および健康寿命の両方を延ばすことが出来ることを示唆している。


低炭水化物食は生理機能と代謝を変える

これらの食餌によって誘発される生理学的/代謝的変化を調べるために、体重(BW)と体組成、血清バイオマーカー、エネルギー消費、および身体活動を測定した。等カロリーの食餌を与えられているにもかかわらず、LCD群のマウスは、対照群またはKD群マウスよりも研究全体を通して重かった(Figure 2A)。
体組成の分析で、除脂肪体重は対照群マウスおよびLCD群マウスは年齢と共に増加し、26ヶ月齢ではKDマウス群が有意に低かったことが示された(Figure S1)。
脂肪量については、LCD群マウスが対照群またはKD群と比較して有意に多かった高かった(Figure 2B)。
全群において総脂肪量は17ヶ月齢でピークに達した。


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循環β-ヒドロキシブチレート(βHB)レベルを食後3時間に測定した(Figure 2C)。
血液中ケトンは対照群またはLCD群と比較してKD群において有意に上昇した。
亦、1ヶ月および14ヶ月の食餌介入後の他の血清バイオマーカーを分析した(表S2)が、 13ヵ月齢では三群の間に変化は検出されなかった。 26ヶ月齢では遊離脂肪酸濃度が他の群と比較してLCD群で高かったことが唯一の違いであることが観察された。

13ヶ月および26ヶ月齢で呼吸商(RQ)、エネルギー消費(EE)、および身体活動を測定した。
いずれの年齢でも平均RQは、対照群と比較してLCD群またはKD群で減少した(Figure 2D; Table S3)。
24時間EEでは有意な群間差は観察されなかった。しかし、すべての食餌群において、EEは体重or除脂肪体重を調整してもしなくても加齢に伴い減少した(Table S3)。
全体として、自発的身体活動は年齢または13か月齢か26ヶ月齢のいずれかの食餌群間で差異はなかった(Table S3)。

1カ月の食餌介入後にブドウ糖負荷試験(GTT)およびインスリン耐性試験(ITT)を行った。
KD群のマウスは、対照食群のマウスと比較して耐糖能異常を示した(Figure 2E).
LCD群は対照群またはKD群と比較して、糖処理における差異はなかった。
対照群と他群との間に差異は認められなかったが、4時間の絶食後のインスリン感受性は、LCD群と比較するとKD群のマウスで高まり(Figure 2F)、インスリンシグナル伝達がKDを与えたマウスにおいて正常に機能していることが示された。
興味深いことに、インスリン感受性の重要なメディエーターであるリン酸化されたAS-160(160kDaのAkt基質)の肝臓レベルは、対照群およびLCD群と比較してKD群マウスで増加した(Figure S2)。
線維芽細胞成長因子21(FGF21)の循環レベルは、いずれの食餌介入によっても有意に変化しなかった(Table S2)。

これら食餌の代謝シフトをさらに特徴づけるために、マウスの肝臓における脂肪酸代謝に関連するいくつかの酵素のタンパク質含量を分析した。 KDは、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(CPT2)および中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(MCAD)の増加を伴いながら、リン酸化および総アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)の肝臓レベルを減少させた(Figures 2G–2L)。
リン酸化および総ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)タンパク質レベルも、LCD群およびKD群のいずれにおいても低下した(Figures 2H and 2K)。


KDはプロテインアセチル化を増加させ、組織特異的な方法でmTORC1シグナル伝達を調節する

βHBはin vivoでヒストンデアセチラーゼ(HDAC)活性を阻害することができる(Shimazu et al., 2013)。KDを与えて1ヶ月後の総アセチル-Lysレベルは、対照群およびLCD群マウスと比較して、KD群マウスの肝臓において5倍増加した(Figure 3E)。同じマウスの骨格筋において2.5倍の増加が検出された(Figure S3)。主要な腫瘍抑制タンパク質であるアセチル化p53のレベルは、KD群の1ヶ月後の肝臓で10倍高かった(Figure 3F)。

興味深いことに、Lys9(H3K9)におけるヒストン3のアセチル化レベルは、KDまたはLCDのいずれかで1ヶ月後の肝臓で増加した(図3G)。 βHBによるHDAC阻害およびH3K9アセチル化はまた、Foxo3aおよびマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)を含む抗酸化応答に関与するその標的のいくつか(Shimazu et al 2013)の遺伝子発現をアップレギュレートすることが示されている。 FoxO3aおよびMnSODタンパク質レベルは、1ヶ月後に対照群と比較してLCD群またはKD群いずれかの肝臓において増加した(Figures 3H and S2)。

KDが長寿と健康寿命に及ぼす有益な効果の根底にあるメカニズムをさらに明らかにするため、われわれは食餌介入に反応して加齢を調節ことが示唆されているrapamycin (mTOR) complex 1 (mTORC1)シグナル伝達経路の機構的標的に関連するいくつかの因子のレベルおよび活性化状態を試験した(McDaniel et al 2011 Klement and Champ 2014, Solon-Biet et al 2014)。
mTORのトータルレベルおよびリン酸化レベルは、LCD群またはKD群の 1ヶ月後の肝臓において変化は認められなかった(Figures 3A and S2)。
しかし、低レベルのリン酸化4E結合タンパク質1(4E-BP1)およびリン酸化S6リボソームタンパク質(rpS6)への同様な傾向が検出され、肝臓におけるmTORC1シグナル伝達(Figures 3B and 3C)の低下を示唆した。
肝臓とは対照的に、骨格筋ではKDを与えて1ヶ月後にp-4E-BP1レベルが増加した(Figure S3)。

亦、mTORC1による肝臓栄養感知を調節するいくつかのシグナル伝達カスケードを分析した。対照群とKD群のマウスの間でリン酸化されたAMPK、p-Akt、またはp-Erk1 / 2の変化は検出されなかった。
S939またはS1387での結節硬化症複合体2(TSC2)のリン酸化ならびにp-RaptorレベルもKDによって変化しなかった(Figure S2)。
対照的に、mTORC1の負の調節因子であるDNA損傷誘導性転写タンパク質4(DDIT4)のレベルは、KD群マウスにおいて有意に増加した(Figure 3D)。


ディスカッション:
この研究の目的は、食事中の多量栄養素の割合を操作することで食事制限に伴う代謝変化を再現し、食事パターンの違いがマウスの長寿および健康寿命を延ばすかどうかを増究明することであった。その結果は、標準対照食と比較してKDを摂取したマウスで寿命が延びたことを明らかに示している。

しかしながら、給餌戦略と飼育の問題は、加齢に対するKDの影響を究明するのに重要な役割を果たすであろう。この仮説はKDがC57BL / 6マウスの生存曲線を変えないというDouris et al 2015による先行研究に基づいている。Dourisらによって報告された対照群マウスの寿命は予想よりも短かったこと(Yuan et al 2009)に留意することは重要である。エネルギー摂取量および体重増加の予防のレベルは、KDの正の寿命効果とって特に重要であり、本研究のアウトカムは成体マウスの体重増加を緩和する摂食戦略に従うと寿命が延びることを示唆している。

KDsと同様に、食物への自由なアクセスが許されていない動物の寿命に対するLCDの影響についてはほとんど判っていない。
高脂肪食をすると寿命が短くなると考えられることが多いが、それはC57BL / 6マウスに自由食を割り当てた時に体重増加や肥満を誘発することが示されているためである(Surwit et al., 1995)。しかし、我々の結果は、カロリーを制御したLCDは中年のマウスで開始されており、老化に悪影響を及ぼさないことを示している。

寿命を延ばすためのアプローチとして、タンパク質またはメチオニン制限に焦点を当てたいくつかの研究が報告している食事中の多量栄養素の割合が長寿に及ぼす影響について大いなる関心があった(Miller et al 2005, Orentreich et al 1993)。
本研究では、KD群マウスに比べてLCD群マウスのタンパク質摂取量を増やしたにもかかわらず、LCD群とKD群との間で有意な差はなかった。
さらに、たんぱく質の摂取量を少なくしたNakagawa and Masana1971およびRoss and Bras1973の研究ではラットの寿命は延びていない。

もう1つのラットの研究では、12%のタンパク質と20%のタンパク質の食餌を摂取しても生存率は上昇しなかった(Davis et al 1983)。タンパク質のレベルが主にKDマウスの寿命を伸ばしている原因であるという考えは、このようにエビデンスベースでは支持されていない。Solon-Biet et al 2014が炭水化物に対してタンパク質の比率を低くする長寿を促がすことを報告しているが、この仮説とわれわれの研究は一致していない。食事性タンパク質がKDマウスの生理学的機能および寿命の改善に寄与しているかどうかを判定するためには更なる研究が必要である。最適な多量栄養素の割合は、自由食とそうではない動物モデルでは異なる可能性がある。

本研究の結果は、KDが老齢マウスの認知低下を遅らせ運動機能を保つことを示している。 LCDは長寿においてはKDと有意な違いは無かったが、2つの食餌で老齢マウスの生理機能を保つ能力が異なっていたことに留意すべきである。
これはKDが健康寿命を引き延ばすために必要であるかも知れないことを示唆している。

新奇物体認識試験は、以前は加齢およびその関連疾患のモデルにおける記憶を研究するために用いられてきた(Fahlström et al 2012, Stover et al 2015)。
本研究の結果は、ケトンが神経保護シグナル伝達分子として重要な役割を果たす可能性があるという考えを支持している(Newman and Verdin, 2014)。
空腹を再現した食事がケトン産生を増加させ、マウスの記憶を改善するという研究がこの仮説をさらに支持している(Brandhorst et al 2015)。
本研究はこれら文献とともにKDが長期の認知健康を促進するという考えを支持する。

運動機能は、これまで筋力および機能の加齢に伴う障害を検出するために用いられたアプローチで評価された(Fahlström et al 2012, Justice et al 2014)。 KD群マウスは、対照群マウスで観察された加齢に伴う握力の減衰を示さず、ワイヤハング試験で26ヶ月齢のKD群マウスが他の食餌群マウスより優れていた。これは、KDが老齢マウスの前肢の握力を最大限に維持していることを示唆している。

代謝効果とは無関係に筋肉細胞におけるシグナリング分子として重要な役割をしていることをという示すエビデンスがある(Zou et al., 2016)。
ケトン体アセトアセテートが筋ジストロフィーのアウトカムを改善し、筋肉の再生を促進することが示されており、年齢に関連した筋肉機能の低下を減弱させる重要な役割を果たす可能性があることが示唆されている。
我々の試験およびその他の研究が、ケトンが筋恒常性に正の影響を与えることを示唆している。しかしながら、この保護効果の根底にある正確なメカニズムを解明するためには更なる研究が必要である。

本研究の結果によると寿命と健康寿命の延長はKDに固有のようである。興味深いことに、ケトン体と加齢を調節するために提案された経路との相互作用を示すエビデンスがある。

ケトン体βHBはin vivoで生じることが示されたプロセスであるHDACsの直接阻害剤である(Shimazu et al 2013, Newman and Verdin 2014).
HDAC阻害剤は酵母やハエの寿命を延ばすがそのメカニズムは未だ解明されていない。亦、ヒストンや他の多くのタンパク質の過アセチル化に関連している。

我々の研究では、KDはアセチル化リジンのトータルレベルを劇的に増加させた。
興味深いことに、LCDおよびKDマウスの両群において、肝臓でのFoxO3aおよびMnSODの増加と同時に、アセチル-H3K9の増加が観察された。この影響はケトン体がストレス応答経路および潜在的寿命に寄与しているとして以前に文献にも記載されている(Shimokawa et al 2015, Shimazu et al 2013)。
しかし、アセチル-H3K9、FoxO3aおよびMnSODに対する効果はLCD群およびKD群で類似しているので、これらの変化が食事パターンの違いによる寿命および健康寿命の根底にはないことを我々の研究は示唆している。

多くの食餌介入で寿命を延ばしたり調節することが示されているが、少なくとも部分的にはmTORC1活性化の低下…前にKDsで起こることが報告されている(Houtkooper et al 2010)…を介していることが示されている(McDaniel et al 2011)。

KDでタンパク質を減らすとmTORC1活性が低下し、タンパク質またはメチオニン制限の応答に類似した反応を誘発する(Pissios et al 2013)。
我々の実験デザインは、以前の(Dourisら、2015、Levineら、2014)の以前のげっ歯類の実験室でのKDsやタンパク質制限の研究よりもタンパク質の割合を高める(総カロリーの10%)ことによってこのような影響を最小限にしようと試みている(Douris et al 2015, Levine et al 2014)。

我々は、mTORC1シグナル伝達の組織依存的調節を検出した。
骨格筋においてKDはp-4E-BP1レベルを増加させた。同様に、比較的高タンパク質(総カロリーの〜20%)のKDを与えたラットの最近の研究では、p-rpS6の変化もp-4E-BP1の増加傾向も検出されなかった(Roberts et al., 2016)。
従って、タンパク質レベルがKDに応答してmTORC1シグナルに大きな影響を有していることが考えられる。

長寿mTORモジュレーションと骨格筋ホメオスタシスとの間の二律背反については十分に理解されておらず(Sharples et al 2015)、KD老齢マウスの筋肉量の維持に関わるメカニズムを完全に理解するためにはさらなる研究が必要である。しかしながら、肝臓ではmTORC1シグナル伝達がKDによって阻害されることを我々は示した。

興味深いことに、p53過アセチル化はmTORC1の負の調節因子であるDdit4の発現を増加させることにより、絶食に応答してmTORC1を阻害することが報告されている(Schupp et al 2013) 。さらに、この同じ経路はメトホルミンの効果を媒介するようである(Ben Sahra et al 2011)。 KD群でのみでの、p53アセチル化およびDDIT4レベルの増加およびmTORC1下流シグナリングの減少を含む我々の研究結果はこのモデルに従っている。
注目すべきことに、p53過アセチル化および安定化は、亦、KDマウスにおける癌発生率の著しい低下に寄与している可能性がある。したがって、HDAC阻害と肝臓mTORC1シグナル伝達との間のクロストークは、KDによる寿命延長に寄与する潜在的なメカニズムである。

本研究の目的は、カロリー制限によって引き起こされる健康寿命と寿命の変化をKDで再現できるかどうかを究明することであった。 KDはカロリー制限で報告されたのと同じ変化の幾つかをもたらした。特に、全体的な寿命はカロリー制限(Speakman and Mitchell 2011)とKDの両方で全体的な寿命が長くなった。先行研究が示すように、脂肪酸β酸化およびβHB産生が刺激され、タンパク質アセチル化が高まった(Mahoney et al 2006,Schwer et al 2009)。
mTORC1の下流のシグナル伝達もまた、カロリー制限(Miller et al., 2013)およびKDのいずれでも肝臓でダウンレギュレーションされる。

しかしながら、KDはまたカロリー制限との幾つかの相違点を示した。
Douris et al 2015による先行研究ではKD自由食が与えられたマウスでグルコース耐性が高まったが、われわれの研究におけるKDマウスは対照群マウスに比べて、カロリー制限とは異なってグルコース不耐性であった(Douris et al., 2015). さらに、本研究におけるKD摂取レベルでは、カロリー制限食で観察された体重減少をもたらさなかった。

この研究は、カロリー制限した高脂肪のLCDは健康に有害ではなく、むしろKDが寿命を延ばし、マウスの加齢に伴う生理機能の低下を遅らせることを示している。将来の研究は、この食餌が機能するメカニズムをさらに調査し、食餌の組成比率を最適化し、健康寿命をさらに延ばすためのアプローチが必要である。


マイコメント

本論文中にmTORC1の阻害についての説明があります。Sabatini et alによる研究 “mTOR Signaling in Growth Control and Disease…代謝疾患に対するmTOR阻害剤の効果”がCellに掲載されていますが、そこには「マウスでmTORC1活性を極端に低下させると、脂肪組織量の低下、β細胞量の低下が起き、インスリン抵抗性、高脂血症、肝糖産生が促進されること、そしてヒトでも同様の代謝障害が起きること」「メトフォルミンはmTORC1活性を低下させることが知られているが、これは肥満で亢進したmTORC1活性を、極端に低下させず、ちょうどよい中間の状態まで低下させることにより肥満者の糖代謝を改善しているのかもしれない」と報告されています。

亦、運動機能についても、10名の健常なヒト成人を被験者とした研究で「ケトンが高強度運動のパフォーマンスを阻害すること」が、2017 Oct10付けApplied Physiology, Nutrition, and Metabolism “Nutritional ketone salts increase fat oxidation but impair high-intensity exercise performance in healthy adult males” で報じられています。

本論文の上席著者であるラムジー氏は、「若干の差があることは予想していたが、ケトン産生食と高炭水化物食のマウス寿命が中央値で約13%もの差が出たことに感動している。この差をヒトに当てはめると7〜10年に相当すること」、さらに「晩年になっても健康状態が保たれていたこと」、そして「今回の結果は、人間にもおおよそ当てはまるものではないか」等々、Science Daily誌で語っています。

ケトジェニックダイエットについてのデータはてんかん以外では限られているので、本件は貴重な研究であると思います。しかし、エビデンスのヒエラルキーとしての動物実験(基礎実験)の位置づけは低く、ヒトに当てはめるには更なる研究が絶対不可欠です。

アカゲザルを使ったカロリー制限による長寿の研究には約30年の月日が費やされました。科学におけるマウス実験の必要性も決して否定はしません。
ただケトジェニックダイエットのヒトでの有効性・安全性は、↓に掲げた関連記事が示すように短期でしか示されていません。このような状況下で大上段の構えからいきなり長寿という遠大な課題に斬り込み、マウス実験の結果のみを以ってヒトでの優位性を導き出そうとすることには違和感があります。ケトジェニックダイエットについて言えることは、今はヒトを対象として継時的に足元を固めていく堅牢な研究こそより重要であり、且つ、望まれているのではないかと私は思います。


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