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zoom RSS インスリンと肥満についての新研究(MR)

<<   作成日時 : 2018/01/13 09:22  

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肥満の真犯人は糖質 → インスリン?

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メンデル無作為化(Mendelian randomization:MR)については “夜に食べると太る??” で少し触れましたが、この手法の大きなメリットは観察研究データで因果関係を考察できる点です。

つまり、メンデル無作為化とは、“2つの遺伝子は配偶子への分離に関して互いに何の影響も及ぼさない”というメンデルの独立の法則に基づいて、遺伝子多型を用いてランダム化しようというもので、形質との関連に交絡要因を含まないことや逆の因果関係を持たないことから、遺伝子多型を操作変数として形質に影響を及ぼす因子との関連を推定できるという理論です。

もっとかみ砕いて説明すると、XがYを引き起こしているのかを知ろうとする場合に、交絡因子UがあるためにXとYの因果関係がわからない。このときにXには関係するがUには関係しない「操作変数Z(遺伝的変異)」を用いてX→Yについての答えを引き出そうとする手法です。

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Clinical Chemistry
2018 Jan
Genetic Evidence That Carbohydrate-Stimulated Insulin Secretion Leads to Obesity

Dr. David Ludwigがmiddle authorとして名を連ねるHarvardメディカルスクール研究チームは、メンデル無作為化解析を用いた新研究で、経口グルコース30分後のインスリン分泌とBMI増加の因果関係を推定しました。具体的な方法としては、遺伝的変異を用いた操作変数をinsulin-30 stringent/GSIS stringent/insulin-30 relaxedとして、大規模なGIANT およびUK Biobankで試験しました。その結果、下のグラフが示すようにinsulin-30で約0.01と約0.1の効果サイズが推定されました。

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本研究のアウトカムは、”Ludwigが主唱するInsulin-Carbohydrate Model of Obesityと合致する”と結論付けています。

因みに、Insulin-Carbohydrate Model of Obesityでは、“primary cause of obesity is the ability of refined carbohydrate to raise insulin levels, trapping fat inside fat cells and leading to fat gain and excess hunger” と主張しています。


マイコメント
BMIは身長と体重のバランスにより肥満度を測る方法で200年近く使用されてきましたが、近年では問題点が浮き彫りになっています。具体的に云うと、ウエスト、大腿部、胸囲、ヒップなどのサイズが考慮されていないので、内臓脂肪でお腹ポッコリであってもBMI値が低ければ正常と判定され、またBMI値が高ければ筋肥大化したビルダーの体格でも肥満ということになってしまいます。亦、インスリンは筋タンパク代謝ではアンチカタボリック作用を有していることは御貴承の通りです。
この研究では、このような課題を包含するBMI(肥満指数)のみを以って、LBMと体脂肪の測定は行わず、而も、効果サイズは小さいにもかかわらず、インスリンを肥満の元凶であると決めつけている点に先ずは大きな違和感を覚えました。因みに、GIANT研究そのものは、full textを読んではいませんが、ひとつのデータとして参考になるのではないかと評価しています。

その他にも疑問点がありますが、Dr. Stephan Guyenetが “Interesting new genetic study on insulin secretion and body mass” で詳しくコメントしているので、その内容骨子を紹介します。

<考察>

I’m not certain what role Ludwig played in the study, but some of the language and citations in the introduction are characteristic of his writing…この新研究MRでLudwigがどのような役割を果たしたのか確信はありませんが、文中の言語や引用は彼の文章の特徴です。


観察研究では、選択バイアス、情報バイアス、交絡などのバイアスを防ぐことは最も重要なことの一つだが、新研究MRではPreregistration of Research Planが行われていない。


効果サイズが小さい。
BMI差で1%〜10%となるが、換言すると90%〜99%はインスリンに因るものではないことを意味し、”major driver of obesity (肥満をもたらす主要因)”はインスリンであるというLudwigの主張と一致しない。


BMIのみを測定し体組成値の直接測定が行われていない。我々が知りたいのは体重差の内訳、つまり、体脂肪量とLBMにどれだけの差異が生じたかである。


脳によるグルコース、インスリンおよび体脂肪の調節は、お互いに密接に関連している(3)。 あるプロセスに関与する遺伝子はしばしば他のプロセスにも同様に関与するため、このような遺伝的解析手法で2つの機能を分離することができない可能性があり、誤った結果を招きかねない。 研究者らはこの可能性をテストしているが、データセットに限界があるために、テストはあまり有益ではない可能性があることを自ら認めている。


食後のインスリン分泌はレプチン抵抗性など他の生理学形質と関連しており、いずれも同じ遺伝的変異によって影響される可能性がある。レプチン抵抗ではなくインスリンそのものがBMIに影響する変異体であるということは明らかになっていない。


最近発表された他の研究論文では、空腹時インスリンのレベルが昂進してもBMIは高くならないが、BMIが高いと空腹時インスリンレベルは昂進することが示されており、MR新研究の結果とは反対である。(4)


MR新研究のauthorsは、空腹時インスリンは単にインスリン抵抗性のマーカーであるのに対して、食後インスリンはインスリンシグナル伝達曝露のマーカーであるため、結果が異なることを示唆しているが、この説明はあまり意味がない。
理由は次のとおりです。

空腹時および食後のインスリンレベルはいずれも、インスリン抵抗性の強いマーカーである。インスリン抵抗性の人であれば、空腹時および食後のインスリンレベルは一般的に高いものだ。実際に、グルコース飲料に対するインスリン応答はインスリン抵抗性を推定する際にも一般的に使用されている(5)。

空腹時および食後のインスリンは相関しており食事と同時に反応する。食事中の炭
水化物の量は、空腹時および食後のインスリンいずれにも影響を及ぼすことは先行研究で示されている。(6


上述したように、逆の因果関係があればメンデル無作為化解析は成立しませんが、MR新研究ではBMIが高くても空腹時インスリンは昂進せず、逆の因果関係は成立しないことを報告しています。
しかし、ドイツのErdmann et al.による先行研究では、10名の健康な男性を被験者として、4.5ヵ月間の中程度のオーバーカロリー食で意図的に体重を増加(BMIポイント2アップ)させて、インスリンに及ぼす影響を調べた。その結果、下記のグラフが示すようにBMIが高くなると食後のインスリンレベルが高まることが示されている。
塗りつぶしの円はベースラインで白い円はBMI増加後だが、MR新研究での経口グルコース30分後のインスリンレベルは2倍近く高くなっている。
MR新研究はこの点においても、正しくないのではないかという疑問を提起している。

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MR新研究による仮説が間違っていると思う理由は他にもある。

・2007年5月の彼自身が発表したlow-glycemic load食 (炭水化物40%:脂質35%) vs low-fat食 (炭水化物55%:脂質20%) を比較した18ヶ月のRCT研究で、“Change in body weight and body fat percentage did not differ between the diet groups overall”と結論付けている。(8)
更に、彼と同大学で且つ栄養疫学研究の第一人者といわれるWillett WCは2007年9月に発表した研究で“長期的な体重減少は高GI食と低GI食で有意な群間差は認められない。従って、本研究は体重管理に低GI食が有効であるという仮説を支持しない”と結論付けている。(9)

・2016年3月のMakimura et al.の研究では、ホルモン感受性リパーゼの阻害剤“acipimox 250 mg”を肥満者に一日三回6ヶ月に亘って割り当てたが、カロリー摂取量、多量栄養素の摂取量、代謝率、体重などに差異が生じなかった。(10)

・脂肪組織からの脂肪の放出速度は、肥満者の方が痩せた人よりも高い。(11

・げっ歯類はヒトと同様に炭水化物を食べるとインスリンを放出し、脂肪細胞はインスリンに反応する。しかし、Ludwig が主唱するcarbohydrate-insulin modelとは異なり、主に精製された炭水化物食やsugarより脂肪食で太る傾向がある。(12,13
これは厳しく管理された条件下で行われたアウトカムであるが、Ludwigの主張と同様の応答が生じなかったのは何故なのか?

・GLP-1受容体作動薬リラグルチドは、インスリン分泌を刺激する糖尿病治療薬として開発されたが、肥満治療(14,15)や代謝改善(16)にも有効である。


Ludwig が主唱する“Insulin-Carbohydrate Model of Obesity”の仮説は正しくないとGuyenetは結論付けています。






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