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zoom RSS 第1042回 糖質制限食と低脂肪食の減量効果に有意差なし

<<   作成日時 : 2018/03/22 07:41   >>

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<背景>
肥満解消にベストの食事パターンは?
糖質制限食 vs 低脂肪食について、玉石混淆の研究データが飛び交い果てしない論争が続いている状況下で、栄養と肥満の研究における科学の質を向上させることにより、真実を明白に確立することを使命とし、NuSI(Nutrition Science Initiative)が設立されましたが、この設立に際しては、肥満の原因はカロリーではなく炭水化物だと強く主張するGary Taubesが深くかかわっていることは御貴承の通りです。
このNuSIが資金提供した1つ目の研究は、米国NIH(国立衛生研究所)傘下の国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)のKevin D. Hall, Ph.D.らによる研究でしたが、Gary Taubesの考え方を全面否定する内容のものでした…『第893回 体脂肪を減少させるには脂質と糖質どちらを制限するのが良いか?』、『第955回 高炭水化物食をケトン食に代えると代謝量と体組成は向上

Harvard Medical School/Nutrition at Harvard T.H. Chan School of Public Health/New Balance Foundation Obesity Prevention Center at Boston のDr. David Ludwigは、肥満関連疾患の食事療法としてグリセミック負荷(GL値)を考え出した著名な御仁ですが、“Dr Kevin Hallによる研究論文は、クロスオーバーデザインとなっておらず単なるパイロット研究であり、且つ、試験期間も十分でない”と異議を唱えて激論となりました…『第957回 肥満の真犯人はインスリン?』、『第958回 新説 “Insulin-Carbohydrate Model” Part-1』、『第959回 新説 “Insulin-Carbohydrate Model” Part-2

今般、NuSIの二つ目の研究として、米国スタンフォード大学のChristopher Gardner教授らによる研究論文が発表されましたが、これも皮肉なことにGary Taubesの考え方やDavid Ludwigの“Insulin-Carbohydrate Model”を完全に否定する内容となっています。
因みに、体重減少に関する研究における3大ハードルとして、(1)多数の参加者を募集すること、(2)長期間にわたり彼らをつなぎ留めて追跡すること、(3)割り当てられた食事の遵守を注意深く監視することが挙げられますが、Gardner et al.による当該研究ではこれらの点をクレアしています。研究内容の詳細は次の通りです。

JAMA
February 20, 2018
Effect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults and the Association with Genotype Pattern or Insulin Secretion


低脂肪食と低糖質食の減量効果に差なし
1塩基多型やインスリン抵抗性は食事療法の選択に影響しない


米国Stanford大学医学部のChristopher D. Gardner氏らは、低脂肪食と低糖質食の効果を比較し、遺伝子型やベースラインのインスリン分泌能が、これら食事法の有効性に関連するかどうかを検討するランダム化対照試験を行い、肥満者の減量効果に差はないこと、遺伝子型やインスリン分泌能は、より有効な食事法の選択の指標にはならなかったと報告した。結果は、JAMA誌2018年2月20日号に掲載された。

食生活の改善は、減量を成功させるために非常に重要だ。しかし、他の食事法に比べ一貫して効果が高いことが示されている食事法はない。また、同じ食事療法に取り組んでも減量効果は個人によって大きな幅がある。これまでに行われた研究は、遺伝子型やインスリン分泌能が、食事法の減量効果への影響を修飾する可能性を示唆していた。そこで著者らは、健康的な低脂肪食(HLF)と健康的な低糖質食(HLC)がもたらす減量効果を比較し、減量の程度に遺伝子型やインスリン分泌能が関係するかどうかを調べるランダム化対照試験DIETFITSを計画した。

試験参加者は2013年1月29日から2015年4月14日までの期間に、糖尿病ではなく、BMIが28〜40で、年齢が18〜50歳の地域住民から募集した。609人(平均年齢40歳、57%が女性、BMIの平均は33)を登録、12カ月間のHLF食(305人)またはHLC食(304人)の摂取に割り付けて、2016年5月16日まで追跡した。

遺伝子型の指標は、脂質と糖質の代謝に関係する3つの1塩基多型(PPARG、ADRB2、FABP2)の組み合わせとした。想定される27通りの組み合わせの中で、先の研究によりジェノタイプ頻度が1%以上であることが示されていた15通りのうち、5つを推定低脂肪食反応性ジェノタイプ、9つを推定低糖質食反応性ジェノタイプ、1つはいずれにも該当せずに分類した。低脂肪食反応性の患者は、低糖質食を摂取した場合より低脂肪食を摂取した方が体重減少が大きく、低糖質食反応性の患者は、低脂肪食より低糖質食を摂取した方が体重減少が大きいという仮説を立てた。

また、ベースラインでインスリン抵抗性が大きい人は、低糖質食を選んだ方が利益は大きいという仮説を立て、INS-30(75gブドウ糖負荷から30分後の血中インスリン濃度)を測定し、各食事法の減量効果に及ぶ影響を検討することとした。

健康な食事に関する専門家が、約17人からなる小グループセッションを12カ月間に22回(当初8週間は毎週1回、その後2カ月間は隔週で行い、それ以降は3週ごと、月1回と頻度を減らした)行い、HLFとHLCのための食生活の改善方法をそれぞれ教育した。例えばHLF群では、食用油、肉の脂身、乳製品、ナッツなどの割合を減らすように、HLC群ではシリアル、穀物、米、デンプン含有量の多い野菜や豆の割合を減らすように指導を受けた。

どちらのグループにも、野菜の摂取量を最大限に増やし、砂糖(原文はadded sugars)、精製小麦粉、トランス脂肪酸の摂取を最小にして、加工食品ではなく、栄養価の高い食材を選んでできるだけ自宅で調理するよう指示した。運動も推奨した。さらに、ダイエットの継続には、意識を高め、社会的認知理論に基づく自己制御による行動修正が必要であることを強調した。

主要評価項目は、12カ月間の体重の変化に設定、さらに、各食事法の減量効果と遺伝子型、インスリン分泌の間に有意な関係が有るかどうかを検討した。

609人のうち244人(40%)が低脂肪ジェノタイプで、180人(30%)が低糖質ジェノタイプだった。HLF食群では、130人(42.6%)が低脂肪ジェノタイプ、83人(27.2%)が抵糖質ジェノタイプだった。HLC食群では114人(37.5%)が低脂肪ジェノタイプ、97人(31.9%)が低糖質ジェノタイプだった。ベースラインでのINS-30の平均は93μIU/mLで、481人(79%)が12カ月まで試験を完了した。

ベースラインと介入期間の両群のエネルギー摂取量に差はなかった。エネルギー摂取量を減らすように指示したわけではないが、両群ともに介入期間を通じて、摂取量はベースラインより1日当たり500〜600kcal少なくなっていた。HLF食とHLC食を比較すると、主要栄養素の総エネルギーに対する割合は、糖質がそれぞれ48%と30%、脂質は29%と45%、蛋白質は21%と23%だった。

12カ月間の体重の変化は、HLF食群が-5.3kg(95%信頼区間-5.9から-4.7kg)、HLC食群は-6.0kg(-6.6から-5.4kg)で、両群間の平均差は0.7kg(-0.2から1.6)と、有意ではなかった。

体重減少に対する遺伝子型の影響は見られなかった。低脂肪ジェノタイプ、低糖質ジェノタイプ、どちらにも該当しないタイプ、のどの群も、HLF食とHLC食で12カ月後の体重減少に有意差は見られなかった。遺伝子型のβ係数は1.38(-0.72から3.49)だった。

同様に、インスリン分泌能で三分位群に分けて、HLF食群に割り付けられた人と、HLC食群に割り付けられた人の12カ月後の体重減少を比較したが、有意差は見られなかった。β係数は0.08(-0.13から0.28)だった。

入院が必要な重篤な有害事象は試験中に7件発生したが、このうち2件(腎結石と憩室炎による手術)が試験に関係ありと判断された。11件の有害事象のうち9件が試験に関係ありと判定された(ブドウ糖負荷試験後の高血糖など)。両群の発生率には差はなかった。

これらの結果から著者らは、HLF食とHLC食の減量効果に有意差は見られず、遺伝子型やベースラインのインスリン分泌能は、これら食事法による体重減少効果に有意な影響を及ぼしていなかったため、誰にどの食事療法を勧めるかの判断には役に立たないと結論している。なお、この研究は米国National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseasesなどの支援を受けている。

注:複数のジャーナルが訳文記事を書いていますが、日経メディカル(訳:大西 淳子さん)が一番詳しく報じておられるので引用させていただきました。


マイコメント(補足)

低脂肪食群は脂質1日当たり20gのみ/低炭水化物群は炭水化物1日当たり20gのみの摂取で始まったが、このような低い摂取レベルが守り続けられることなど期待はしておらず、各自が続けてやれる最低レベルを維持するようにと指導した。

3ヶ月に差し掛る頃には低脂肪食群の脂質摂取量は42g、低炭水化物群の炭水化物摂取量は96.6gとなっていた。

12ヶ月後の低脂肪食群の脂質摂取量は平均57g、低炭水化物群の炭水化物摂取量は平均132gだった。
因みに、試験前の摂取量はそれぞれ脂質87g及び炭水化物247gであった。

低炭水化物食群の炭水化物の摂取量は、試験期間を通すと1日当たり〜115gであった。
1日当たり≤50 gはごく一部の少数のみであった。

12ヶ月を通して摂取量が増えたことを以って、本研究の欠陥として指摘するセイゲニストもいるがお門違いです。
炭水化物および脂質ともに極端に低いレベルを維持することは、集中的な介入をしても平均的な世間一般の人たちにとっては難しいことが示されているのです。ヒトの性向を示す事実なのです。

炭水化物/脂肪/タンパク質/食物繊維/遊離糖(added sugars)摂取に関して、ベースライン時(食事介入開始時)には有意な群間差はなかったが、3ヶ月/6ヶ月/12ヶ月の時点では有意差が認められた。


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さらに、低脂肪食群では飽和脂肪酸の摂取量が有意に減少したが、低炭水化物食群ではGI値が全体的に低かった。GL値は両群で低下したが、低炭水化物群での低減がはるかに大きかった。

低脂肪食群と低炭水化物群の間に有意な体重減少の差は見られなかった。
12ヶ月の時点で、低脂肪食群は5.29 kg減少、低炭水化物食群は5.99kg減少していた。
その差は僅か0.70kgであり、統計学的にも臨床的にも意味のある数値とは言えない。

BMI、体脂肪率、胴囲、血圧、空腹時インスリンおよびグルコースレベルについては、両群ともに改善したが有意な群間差は見られなかった。
12ヶ月の時点で、低脂肪食群ではLDL-Cが有意に低下(-2.12 mg/dL)したが、低炭水化物食群では増加(+3.62 mg/dL)した。中性脂肪の減少も大きかった(-28.20 vs -9.95 mg/dL)

安静時代謝量(REE)は、いずれの時点でも有意な群間差は見られなかったが、12ヶ月の時点では両群ともにベースラインから有意に減少した(低脂肪食群-66.45kcal vs低炭水化物食群-76.93kcal)
総エネルギー消費量(TEE) は、群間またはベースラインと比較していずれも有意差がなかった。

因みに、
試験を完遂したのは609人中481人だった(脱落率21%)
管理栄養士との22回のグループセッションへの平均出席率は66%だった。

Take Home Message
低脂肪食と低炭水化物食の減量効果に有意差はない。
遺伝子型やダイエット開始前のインスリン分泌能との関連もみられなかった。
故に、食事パターンは、個人の嗜好や健康目標など個別性および継続性/遵守性/利便性といったサステナビリティに主眼を置いて選択することが大事なのです。

参照記事:
Examine.com
Low-fat vs low-carb? Major study concludes: it doesn’t matter for weight loss







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