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zoom RSS 第1044回 運動の種類/強度が生活習慣病の改善に及ぼす影響

<<   作成日時 : 2018/05/02 13:28   >>

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「メタボリックシンドロームとは、下表に示された5つの臨床リスク因子(腹部肥満、高トリグリセリド、高血圧、HDLコレステロール低減、インスリン抵抗性/空腹時血糖値の昂進)のうち3つ以上を有すること」と国際糖尿病連盟は定義づけしている。
メタボリックシンドロームの蔓延は世界的に右肩上がりの傾向を示しており、今や世界人口の20%以上がこの診断基準に該当すると推計されている。メタボリックシンドロームは、心血管疾患発症および2型糖尿病の発症リスクが非常に高く、公衆衛生上の大きな課題である。

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これまでのメタ解析で、運動がメタボリックシンドロームと2型糖尿病に有益であることが示されている。しかし、これらメタ解析には食事と運動を組み合わせた研究も含まれているため、運動そのものの利点を同定することが出来ない。
しかも、その大半は有酸素運動による介入である。

筋トレに関する研究は数少ないのが現状だが、Lemes et alのメタ解析では“血圧には有益だが他のメタボリックシンドローム基準への利点はないこと”が示唆されている。

Grace et alは2型糖尿病患者を対象にして有酸素運動の強度が血糖値に及ぼす影響を報告しているが、運動そのものの相対的/単離的な効果は明らかにされていない。

Aguilera et alによるメタ解析では、メタボリックシンドローム治療に最適な運動強度について有意義な結論を導き出すための十分なエビデンスを明らかにすることができなかった。

Lin et alの研究では、運動が心臓のリスク因子に及ぼす有益な効果が報告されているが、この研究では代謝疾患を有する人たちだけでなく健常者も被験者に含まれていた。


どんなタイプの運動が、且つ、どのような強度の運動が、患者にとって最適であるかは現状では明らかになっていない。従って、オーストラリアUniversity of New EnglandのJewiss et alは、メタボリックシンドロームの改善における運動単独の役割を調べるために、メタボリックシンドローム患者を対象とした総ての既存データのプール解析を実施し、且つ、運動の種類による効果の違い及び高強度運動の効果サイズを明らかにするために運動トレーニング試験を層別化しました。


Cardiovascular Diabetology
2017 Aug 30
The effect of exercise training on clinical outcomes in patients with the metabolic syndrome: a systematic review and meta-analysis


本研究は、“メタボリックシンドロームを患う人たちを、運動介入群と対照群(セデンタリー)の2群に割り付けて比較した無作為化対照試験”のメタ解析です。
最終的にトータル16の研究(23件の比較)が選択されました。この内、19件は“有酸素運動”で、4件は“有酸素運動+筋トレ”に関する研究です。尚、食事療法を含む研究は、食事が運動群と対照群の両群で一致している場合のみに限定して採用されました(4件)。
研究期間は8〜52週間で平均すると約16週間となっています。
なお、本研究は報告バイアスを最小限に抑えるために、事前登録(preregistered)されています。

結果を簡単にまとめると、
・有酸素運動はHDL-Cを除くあらゆる項目で有意な改善が見られた。
・有酸素運動+筋トレによる有意な改善は腹囲、収縮期血圧、及びHDL-Cのみだった。
・運動強度は心肺能力と血圧に影響し、強度が高くなると効果も大きくなるようだ。しかし、その他のリスク因子は強度を変えても類似していた。

詳細な数字は下記の一覧表の通りです。

有酸素運動 vs 対照群

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有酸素運動と筋トレの組み合わせ vs 対照群

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運動種目および運動強度の違いによるアウトカム比較

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考察:

メタボリックシンドロームを患う人々を対象に、“有酸素運動”と“有酸素運動+筋トレ”の利点を比較するプール解析はこれまで行われておらず、更に運動強度別に比較するのも本研究が初めてである。

有酸素運動+筋トレに比べて有酸素運動の方が、体組成/心血管系/代謝系の改善により広範に有益であることが示されている。
有酸素運動+筋トレの効果が大きくなかった理由の一つとしては、研究数が少ないことが挙げられよう。本研究では4つの研究のみ用いられており、有意差を検出できなかったのは統計力が不十分だった可能性がある。

体組成に関する評価項目

有酸素運動によるBMIの改善は統計的には有意だが、臨床的には有意ではなかった。オーストラリア健康福祉研究所(AIHW)のレポートによると、BMIの1単位(1kg m-2)は女性では2-3kg/男性では3-4kgに相当し、重篤な病気の相対リスクの改善を観察するための最低限の要件と考えられている。

BMIは身長と体重のバランスにより肥満度を算出するもので、脂肪量と除脂肪量を区別するするものではない。脂肪量の減少は、除脂肪量の増加に対応するので、運動トレーニングによる有意な変化は隠れているのかも知れない。

体重は有酸素運動で1.16kg減、有酸素運動+筋トレで0.03kg減であり、健康上の利益へ臨床的に意義があると考えられている3%〜5%の体重減少には達していない。
研究の平均期間がわずか16週間であったことは留意すべきである。

腹囲は有酸素運動+筋トレで約4cm変化しており、この種の運動療法は腹部肥満を軽減するのに最適であることを示唆している。

Willis et al.による研究では、有酸素運動プログラムが脂肪量と体重を減らすのに最適である一方、過体重/肥満の中高年者では除脂肪量を増加させるため有酸素運動+筋トレの併用プログラムが必要であることを示唆している。

心血管に関する評価項目

Peak VO2は有酸素運動および有酸素運動+筋トレのいずれにおいて有意に改善したが、有酸素運動+筋トレによる改善が著しく大きく(+4.6 vs +3.0 mL/kg/min)、臨床的に重要と考えられている1 MET(3.5 ml / kg /分)よりも大きかった。

代謝系に関する評価項目


有酸素運動+筋トレではなく有酸素運動で、空腹時血糖値、中性脂肪およびLDL-Cにわずかな改善が観察された。有酸素運動+筋トレはHDL-Cのみで小さな変化が観察された、中性脂肪のみ正常レベルの13%減少に達したが、その他の変化はいずれも臨床的に有意ではないが、体組成および心血管の改善と併せて全体的な健康リスクの改善に集約的に寄与する可能性がある。

運動強度の効果

Moderate/vigorous及び高強度のトレーニングのサブ解析では、体組成に関する項目で有意な改善が見られた。運動強度の違いによる統計的な有意差は見いだせず、優れた運動強度の優位性を同定することは難しい。
最適な運動強度を定義するにはデータが不十分である。
因みに、先行研究では、高強度の運動がメタボリックシンドロームやその他の慢性疾患の治療に最適であることが示されている。

最適な運動療法に関する推奨事項

運動群と対照群との間に顕著な差異を見出せなかったが、いくつかの解析では効果サイズが大きくなる傾向が見られることに注意すべきである。特に、腹囲、peak VO2および収縮期血圧の変化は、有酸素運動+筋トレの組合せが最適のようだ。対照的に、体重と拡張期血圧の変化は有酸素運動が最適と思われる。

運動量は重要事項である。
本研究では、有酸素運動は1セッション30〜60分を週3〜5回I12〜52週間、有酸素運動+筋トレは1セッション40〜75分を週2〜3回I12〜52週間おこなっている。しかし、運動プログラムの期間(weekly or total)や食事による追加介入は、メタボリックシンドローム患者には付加的な効果とはならないようだ。

しかし、筋トレを組み合わせた運動に関する研究は未だ不足している。
メタボリックシンドローム患者は現行の糖尿病における運動ガイドラインを遵守すべきである。

関連記事
食後の運動が血糖管理に及ぼす効果(T2D)

関連文献
Diabetes Care
Physical Activity/Exercise and Diabetes: A Position Statement of the American Diabetes Association
米国糖尿病学会の考え方は、簡潔に言うと“Recommendations and precautions vary depending on individual characteristics and health status”、“Physical activity and exercise recommendations should be tailored to meet the specific needs of each individual”です。
全文を和訳して紹介したいと思ってはいるのですが、何しろ長文なので未だ着手できていません。





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