第16回 「寝る前に食べると太る」は迷信です


Updated 2017/11/9

寝る前に食べると太ると主張する人がいたら、このブログ記事と関連記事を読んでもらった上で、彼らの主張を裏付ける科学的エビデンスを示して貰ってください!

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おばあちゃんの代から「寝る前に食べると太る」と言い聞かされてきました。
今なおこの話を支持する人達に、是非ともお尋ねしたいです。
三時のケーキは太らないのですか?
昼間に食べて余った栄養素は何処かに隠れちゃうのですか?

「寝る前に食べると太る」という人達は、次のような理屈を実しやかに並べ立てます。

1. 筋肉や臓器はエネルギーを活発に消費しないので、吸収された栄養素は、中性脂肪として肝臓や脂肪細胞に蓄えられる。

2. BMAL1遺伝子と体内時計:
夜行性のネズミで実験されました。その研究結果によると、人間には太陽光に大きく影響される「体内時計」と云う機能が備わっている。これは、太古の昔から人間が生き延びるために組み込まれたプログラムである。そして、この体内時計というシステムを調節するのが「BMAL1」で、脂肪を体内に積極的に貯め込もうとする働きを持っており、その量は夜の10時頃から深夜2時頃にかけてピークとなり、朝日を浴びる時間帯から減少する。

3. 自律神経には、交感神経(昼の神経)と副交感神経(夜の神経)がある。
起きている時は交感神経の働きが優位で活動的となるが、寝ている間は副交感神経の働きが優位となり、体を休息させて摂取した栄養素を体内に貯蔵しようとする。

4. 食事を摂ると消化吸収活動が起こり、深い眠りに付く事が出来ない。

5. 成長ホルモンは夜睡眠中にもっともよく分泌されるが、寝る前に夜食を食べてしまうと、血糖値の量の関係から分泌量が減り、肥満どころか背まで伸びなくなる。

反論・反証

◆ 確かに時間帯によって、栄養の吸収率に多少の違いが生じるでしょう。
しかし、栄養吸収率が高くても、カロリー不足であれば太らないし、栄養吸収率が低くても、食べ過ぎれば太ります。

◆ 食事を摂ると消化吸収活動が起こり、深い眠りに付く事が出来ないどころか、満腹になると睡魔が襲ってきたり、逆に小腹が減って眠れなかったという経験はありませんか?

◆ 人間は基本的に昼行性だから、生体反応としては「夜間は摂取したカロリーは脂肪として蓄積されやすく、昼間は摂取したカロリーは脂肪として蓄積されにくい」という考え方に、とやかく言うつもりは毛頭ありません。
しかし、上記に掲げた全ての理屈は、人の生体反応として、定性的には間違っていないとしても、針小棒大に語り過ぎです。

◆ 脂肪代謝、糖質代謝、タンパク代謝は、睡眠時・安静時・活動時24時間中ずっと合成・分解を繰り返しています。だから限定されたスポット時間帯で判断するのではなく、「生活単位としての一日」のトータルで考えなくてはならないのです。

◆ 本当に「眠る前に食べると太る」ならば、食糧不足の飢餓地域の人達は、「寝る前に食べた方が良い」と云うことになりますが、そのような話は聞いたことがありません。

人間の体は、基礎熱力学の第一法則(エネルギー保存則)に適応しています。
生活単位の24Hの中で、寝る前に食べようが、何回に分けて摂ろうが、“現体重を維持するために必要な1日のカロリー(維持カロリー)”よりオーバーカロリーになれば太るし、維持カロリー<総消費量なら痩せるのです。


それでは、「眠る前に食べると太る」という話を否定する幾つかの具体的データを紹介します。

「Eating Before Bed(就眠前摂取)はNighttime Eating Syndrome(NES)」だと位置づける米国の記事も散見されます。しかし、それはBad Habit(悪い習慣)とDisorder(不規則)であって、結果として食べ過ぎるからだと注釈されています。

「Eating Before Bed:就寝前に食べると太ると言う話は、事実or迷信?」と云う米国レポートでは、2000人を被験者とした実験結果を引用し、おばあちゃんの代から語られてきた「寝る前に食べると太る」と云う話は、迷信であると報告しています。

ブログ「The Healthy Haven」に、「True or False? Eating at Night Will Make You Gain Weight」と云うタイトル記事が掲載されています(2011年2月11日)。その内容の骨子は、

・ 米国の国立糖尿病・消化器・腎研究所は、「寝る前に食べると太るは迷信である」という考え方をしている。

・ 「Oregon Health and Science University」の12匹のサルを使った1年間に亘る長期の実験結果は、何時に食べるかは問題ではないこと証明している。
因みに、上述のBMAL1は夜行性のネズミ実験によるもので、サルの方がより人間に近いのではないかと付言しています。
一例として、「フィチン酸と玄米」に関する記事の中で述べましたが、マウスは人間の30倍のフィターゼを体内産生する。故に、齧歯動物を使ってのフィチン酸の実験データは、人間には役に立たない。

The Hebrew University of Jerusalemの研究が、 “Greater Weight Loss and Hormonal Changes After 6 Months Diet With Carbohydrates Eaten Mostly at Dinner”というタイトルで、U.S. National Library of Medicineに掲載されています(2011年4月11)。その和訳(ダイジェスト)は次の通りです:
BMI30以上の78名の警察官を対象として、ディナー中心にしかも炭水化物を摂取するという方法で、ダイエット実験を行った結果、体重は有意に減少し、空腹時血糖値、インスリン濃度、インスリン抵抗性、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、C反応性たんぱく(CRP)、TNF-α、IL-6、レプチン、アディポネクチンが、全て好転したことが判明しました。

Nutrition
May 2007
Influence of meal time on salivary circadian cortisol rhythms and weight loss in obese women
BMI>40の肥満女性12名を病院施設に収容し、食事時間が唾液中コルチゾール概日リズムと体重減少に及ぼす影響を調べた。

参考
唾液コルチゾール濃度は、血中コルチゾール濃度と相関しており、起床時に最高値となり、就寝時にかけて低下することが先行研究で報告されている。


食事は約1000kcalの低カロリー食を割り当てた。
Stage-1(18日間): 5回に分けて食事
Stage-2(18日間): 9時~11時の間に完食
Stage-3(18日間): 18時~20時の間に完食
各ステージ間に5日間のウォッシュアウト期間を設けて自宅で通常食
その結果、
ウエスト・ヒップ比を除いて、体重、体組成値、安静時代謝量、および窒素バランスはステージ1/2/3で変化に違いはなかった。コルチゾールの概日リズムも食事時間によって変化なかった。


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