第131回 運動後の入浴と疲労回復!


激しい運動後の水風呂は疲労回復を早める!

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激しい運動後の水風呂が、疲労回復に良いことは御貴承の通りですが、これまでの一連の研究内容は、水温、時間、測定方法が異なり、結果にバラツキが見られます。しかし、2011年7月に“European Journal of Applied Physiology”に掲載されたフランスの“Research Department, National Institute of Sport, Expertise and Performance (INSEP)”の研究は、フットボール、ラグビー、バレーボールのトップアスリートを被験者としていることと、水風呂の推奨温度と時間を明確にしている点でも、従来の研究とは異なっており、非常に良く纏まったレポートとして評価を受けています。それではその研究内容を要訳してご紹介します。

被験者
男性のトップアスリート41名
年齢 21.5±4.6歳
体重 73.1±9.7kg
身長 176.7±9.7cm
水風呂が運動の最大強度、最大出力、運動後の炎症反応にどのような効果を与えるかを検証する為に、20分間の激しい断続的運動の後に、異なる水温の風呂に15分間入らせた。

実験方法
1.TWI(Body-Temperature Water Immersion):36℃の温かい湯に入浴
2.CWI (Cold Water Immersion):10℃の水風呂に入浴
3.CWT(Contrast Water Temperature):10℃と42℃の風呂に交互に入浴
4.PAS: 入浴せずそのままの状態で回復待ち.
(註)1~4の時間はいずれも15分間

疲労と筋肉ダメージを誘引するための運動として、ロウイングエクササイズと鉛直方向への跳躍(Counter Movement Jump)が行われた。

激しい運動前、運動直後、1時間後、24時間後に、最大30秒のロウイングのパフォーマンス(パワー)、鉛直方向への跳躍力(Counter Movement Jump)、膝伸筋群の最大随意筋力(MVC; maximal voluntary contraction)の測定を実施した。
加えて、同様のタイムスケジュールで筋肉ダメージを調べる血中白血球、CKやLDHの血液検査を実施した。

その結果、
CWIとCWTグループは、最大随意筋力(MVC)とロウイングのパフォーマンス(P30s)に有意な改善が観察された(運動前vs運動後)。
更に、CWIグループは、運動後一時間後の白血球の増加が抑制され、運動後24時間のクレアチンキナーゼの血中濃度が低減した。

このことは、水風呂が激しい運動後の疲労回復を早めるという従来の研究を裏付けると同時に、「10℃で15分間」という具体的な数字を示したことに意義がある。

<補足説明>
CK(クレアチンキナーゼ)
筋肉が破壊されると、筋肉から血液中にCK(クレアチンキナーゼ)という筋原性酵素が出てくるのでそれを調べます。

LDH(乳酸脱水素酵素)
細胞内でブドウ糖からエネルギーを産生するために糖を分解する酵素です。心筋、腎臓、骨格筋、肝臓、赤血球などのあらゆる臓器や組織に含まれており、これらの臓器や組織に障害がおこったり壊死したりすると、血液中にLDHが増加します。

Mb(ミオグロビン)
骨格筋や心臓の筋肉細胞に多く含まれており、これらの筋肉が障害を受けると血中濃度が上昇します。CKと同じような意味合いを持つ検査ですが、CKに比べると血中への増減が非常に早い性質を持っており、筋肉の障害に伴い速やかに上昇し、尿への排泄により速やかに消失します。

ALD(アルドラーゼ)
糖を分解する酵素の一つで、筋肉組織や肝臓、腎臓、脳神経組織に多く含まれています。従って、血液中のアルドラーゼを測定すると、筋肉組織の損傷や代謝障害の程度を知ることができます。

GOT(血清トランスアミナーゼ)
ASTとも呼ばれ、肝細胞に多く含まれる酵素です。
組織が病的状態におちいり細胞膜の透過性を高める変性又は、崩壊があれば細胞内の酵素は血液中に逸脱して血清中の酵素活性は上昇します。
血清トランスアミナーゼ活性値は、損傷組織や損傷の程度を推定する指標となります。