第145回 お酒を飲んでダイエット


愛飲家に朗報です!

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「アルコールが肥満及び筋肉に及ぼす影響」についての面白い記事があります。
“The truth about alcohol, fat loss and muscle growth”と題して、Mr Martin BerkhanがJuly 17, 2010に書いたもので、多くの研究論文を参照しながら、非常に斬新的な切り口から、アルコール摂取を肯定しています。但し、その基本コンセプトは、”Moderate Alcohol Consumption”・・・つまり適量の飲酒であって、飲み過ぎても問題ないと言うものでもありません。最後部分には、お酒を自由に飲みながら脂肪を落とす短期的/戦略的なやり方が書かれています。
記事の和訳(ダイジェスト)は以下の通りです:

アルコールと熱産生
アルコールのカロリーをカウントすべきかどうかは長年の懸案事項です。
飲まない人よりも低体重のドリンカーがいる事実と、アルコールカロリー相当分の脂質/炭水化物に置き換えて摂取したら体重が減ったと言う研究が、この論争に火を付けました。
低体重と適量飲酒との関連性は、特に女性には顕著に現れますが、男性ではそれ程でもありません。

グラム当たりのエネルギー密度が、アルコールは脂質の次に高いことを考えると、この理由を何と説明したら良いのだろう?・・・(訳者注釈:米国では脂質のカロリーは7.7カロリーです。詳しくは第4回の「体脂肪1kg減少に必要なカロリー?」を参照してください)
アルコールが液体であるが故に、満腹感がないからだろうか?

アルコールはグラム当たり7.1カロリーですが、食事誘発性熱産生が総摂取カロリーの20%なので、実際のカロリーは大体5.7カロリーになります。
アミノ酸の配列にもよりますがタンパク質の熱産生が大体20~35%だから、アルコールはタンパク質の次に高い。
また、アルコールカロリーの熱産生には、ある程度はカテコラミンが絡みます。

アルコールの熱産生が、ドリンカーが低体重であることの理由なのだろうか?
しかし、アルコールが他の栄養素のような満腹感をもたらさないことも忘れてはいけない。
酔いが食欲抑制力を弱め、過食を促すのかもしれない。

通常では、アルコールの体重への影響は、アルコールの高い熱産生だけに起因するものではないだろう。
長期的には、アルコール摂取すると食物の摂取が減るし、定期的にアルコールを飲むと、インスリンの抵抗性が改善され、栄養素のパーティションに好影響することも然りでしょう。

アルコール、インスリン感受性、健康
適量のアルコールを飲むと、インスリン感受性が改善し、トリググリセリド濃度は低減し、血糖値をコントロールします。このことは、デンマークのAarhus University Hospitalの研究によって、健康な人だけでなく第二型糖尿病の人についても言えることが判っている。

アルコールのインスリン感受メカニズムのはっきりしたコンセンサスはないが、アルコールが骨格筋のAMPKを刺激し痩せを促進することを、米国サンジィエゴPantox Laboratoriesが研究発表している。

アルコールのインスリン感受性への影響に、今ひとつピンとこない人は、お酒を飲まない人よりも、適量飲む人の方が長生きすることが、米国のBrigham and Women's Hospitalの研究により、明らかになっていることを考えてもらいたい。この研究では心血管疾患が対象となっているが、その他にもアルコールは、アルツハイマー病、神経痛関節炎、メタボリックシンドローム、風邪、ガン、うつ病etc/etcを予防し、健康的で無病の生活をもたらしてくれます。

このように、適量の飲酒が、飲まないより健康的であることは疑いの余地も無い。
それなのに、フィットネスや健康コミュニティがアルコールを排除していることが不思議でならない。
このような不合理な風潮は、アルコールは太るし、筋量アップを阻害すると言った考えに根付いています。

アルコール、ホルモン、トレーニング
皆さんも、アルコールがテストステロンを低下させると言う話を聞いたことがあるでしょう。
これは事実なのですが、実際のインパクトは針小棒大に語られています。
オランダの研究者が、中年男性10名、閉経後女性9名を被験者とした3週間の実験で、30~40g/日を飲酒させた結果、男性では6.8%低下したが、女性には変化がなかった。この量はビール1日3本程度に相当するが、1週間に2~3本しか飲まない人にはその影響は高がしれたものです。

相当量のアルコール量を飲まないと、明確にテストステロンは低下しません。フィンランドのUniversity of Helsinkiの研究に依れば、ビール10本相当の120gのアルコール摂取で、テストスロンは23%低下し、どんちゃん騒ぎ後も16時間続いたということです。無茶飲みしない限り20%と云った低下は起こらないのです。

University of North Texasの研究では、アルコール70~80g、ビールにして6~7本を運動後に飲み、ホルモン反応を実験したが、テストステロンには影響しなかったが、コルチゾルに多少の変化が見られた。

黄体形成ホルモン(LH)については多くの研究が行われているが、エタノールの影響を肯定/否定する報告があり、意見が分かれている。

フィットネス団体は、自分達の主張を裏付ける都合のよい研究のみをcherry-pick(いいとこどり、つまみ食いの意)して、アルコールはテストステロンを阻害するという都市伝説を広く喧伝している。これだけでなく、食事の回数を増やすと痩せるとか、数え切れない逸話を流布している。

筋力トレーニングの後、適量の飲酒(60~90g)程度であれば、トレーニングによるダメージを悪化させることはないし、筋力にも影響しないことが、米国University of MassachusettsやデンマークのAarhus University Hospitalの研究で判明しています。

このカテゴリーでは、否定的な研究も有りますが、それらに言えることは運動量がタフすぎるか、飲酒量が多過ぎることです。一つは大腿四頭筋のエキセントリック収縮を300回行った後で、80 g range(1g/kg)飲酒したところ、トレーニングで痛んだ回復に障害があったという研究報告で、もうひとつの研究は、運動後に120 g range (1.5 g/kg)飲酒した結果、テストステロンは明確に低下し、翌日まで持ち越したというものす。

タンパク合成についはどうなのでしょうか?
不思議なことに、筋肉のタンパク合成に及ぼすアルコールの慢性効果に関する、一般人を事例とする専門的な文献がありません。
慢性アルコール中毒症に関する資料はありますが、それによると。筋肉内のタンパク合成率が減少したと報告されています。

筋肉の減少をもたらす慢性のアルコール性ミオパシー(筋障害)は飲み過ぎの副作用であることが、英国のKing's College School of Medicine and Dentistryの研究で明らかになりましたが、その中で筋障害の無いアルコール依存症患者の体脂肪率は低く、LBM(除脂肪体重)は飲まない人と同じであるという報告もあります。

同じ研究者によるネズミでの実験報告がありますが、人間生理学に適用できるものではありません。人間と齧歯類では、栄養素と毒素への反応に大きな違いがあります。

アルコールと脂肪蓄積
先ず、栄養素の貯蔵・燃焼プロセスをレビューしましょう。
1. 炭水化物とタンパク質はインスリン分泌を高め、脂肪の酸化(燃焼)を抑制します。しかし、これらの栄養素は脂肪の合成には直接的に関与しません。

2. 脂肪燃焼が抑制されると、食べ物として摂取した脂質は脂肪細胞に貯蔵されます。

3. 時間が経つとインスリンの分泌は平常化し、脂肪が脂肪細胞から分泌されます。
脂肪細胞が進行作用して、脂肪酸はin/outを繰り返します。
脂肪が増えたか減ったかは、インプット(摂取カロリー)とアウトプット(消費カロリー)によって決まります。

アルコールは、このようなプロセスの中で優先的に処理され、脂肪酸化や炭水化物及びタンパク質の燃焼を抑制します。
アルコール毒素は、肝臓で副産物である無害のアセテート(酢酸)に分解され、一部は脂肪に変わりますが、大部分はアセチルCo-に変えられてエネルギー源となります。

人間に関しての飲酒後の脂肪合成の文献は無いですが、
“De novo lipogenesis, lipid kinetics, and whole-body lipid balances in humans after acute alcohol consumption”と題する米国University of California at Berkeleyの研究論文では、飲酒後のDNLは~3%,つまり24gの飲酒に対して、肝臓での脂肪合成は0.8gと報告されています。

アルコールの影響は、脂肪酸化を抑制する炭水化物に類似しており、食べた脂質を簡単に脂肪として貯えさせます。しかし、炭水化物から脂肪の転換は、グリコーゲンが飽和状態の時に行われますが、アルコールの場合はそうではありません。

まとめ
◆ 適量のアルコールには多くの健康上の利点がある。
インスリン感受性と体重への長期的な影響は、特に我々の関心事である。

◆ アルコールの熱効果は高く、実際のカロリー値は7.1kcal ではなく、~5.61kcalである。
然し、満腹感は低いので、飲み過ぎて摂取過剰になり易い。
加えて、陶酔が食欲抑制を弱め、過食を促進させる。

◆ テストステロンと筋肉回復についてのアルコールの悪影響は、フィットネス業界で針小棒大に語られている。慢性的に多量のアルコールを飲まなければ、トレーニングや筋量アップに有意な悪影響は出ない。

◆ 人体を事例とする筋肉のタンパク合成に及ぼすアルコールの影響は明らかになっていない。
悪影響するという仮説があるが、信じるに値するような重要なものではない。

◆ アルコールは肝臓でアセテートに変換される。
アセテートの酸化は他の栄養素に優先して行われ、酸素によって二酸化炭素と水に分解され、最終的に体外に放出される。

◆ アルコールは脂肪分解を抑制する作用はあるが、適量であればアルコール/アセテートだけでは太らない。大きな原因はアルコールと一緒に「食べる」からである。

飲酒しながら脂肪減少・肥満防止のハウツウ
アルコールの基質代謝への影響について理解したと思うので、最後に、飲酒しながらどうやって脂肪減少させるのか、あるいは脂肪を増やさずに何時も通りに飲むにはどうしたら良いのかについて話します・・・カロリー計算せず、飲みたいだけ飲む。
皆さん相手に奇妙な実験をしようというものではないので安心してください。自分自身でやったことだし大勢のクライアントにもやって貰いました。注意して読むと背後にある理論的根拠が理解できるでしょう。そのやり方とは次の通りです:

脂質摂取を体重1kg当り0.3g/日まで限りなく落とす。
炭水化物を体重1kg当り1.5g/日に制限し、且つ炭水化物は野菜やタンパク源の食物から摂る。アルコールもフルーツジュースで作られた飲み物やビールなど糖質を多く含むものは控える。
因みに、糖質の含有量は、辛口ワインで4 fl oz/115mlのグラス1杯当り0.5-1 g、甘口ワインはそれよりかなり高く4-6 gです。コニャック、ジン、ラム、スコッチ、テキーラ、ウオッカ、ウイスキーは基本的に糖質ゼロです。
タンパク質はいくら食べても結構ですが、脂質をかなり制限しているので,蛋白源の低脂肪コテージチーズ、プロテインパウダー、鶏肉、七面鳥、ツナ、豚肉、卵白などを食べてください。

効果的に脂肪を減らすため、一週間に一度の夕食はこのようにしてください。そして週ベースで食事管理すれば、1週間ごとに体重が減っていきます。
カロリーと炭水化物を制限すると、血中グルコースとインスリンが低減し、脂肪分解が活性化しますが、このやり方には理論的根拠があり、ハイパーカロリーの状態で脂肪合成が活性化しないように考慮しています。
1日の食事をアルコールとタンパク質をメインにすると、アルコールは脂肪酸化(燃焼)を抑制するが、脂質摂取を抑えているので、脂肪は溜まりません。またタンパク質はDNL(脂肪への変換)の有意な原因にはならないし、アルコールには満腹感がないことの補てんにもなります。
体内の水分貯留を取り除く一助にもなります。

Mr Martin Berkhanは次の文章で締めくくっています:
これは脂肪減少を視野に入れ自由に飲酒するための短期的な戦略であり、日常的に皆さんに励行するよう奨めるものではありません

最後に、これはマイコメントです:
こうすれば、お酒を飲みながら減量できるでしょう!
こうして、お酒を控えるともっと減量出来るでしょう!

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