第159回 朝食 vs ダイエット


画像


朝飯前という言葉があります
語源由来辞典には次のように書かれています。
朝食前は空腹で且つ時間も無いため、簡単な仕事しかできない。
特に江戸中期までは1日2食だったため、朝食前に力が入らない。
そういうことから、「朝食前にも仕上げられる簡単な仕事」と言う意味で、「朝飯前」と言われるようになった。

朝飯前は、英語では “a piece of cake” になります。
更に、英語の慣用句辞典 “Scholastic Dictionary of Idioms” には、「特に簡単で楽しい仕事という意味で、語源は19世紀のアフリカ系アメリカ人のダンス大会で、優勝者がケーキを貰ったことに始まる。"that takes the cake" という表現はそこから来ており、"easy as pie." も同義である」と書かれています。
因みに、知り合いの米国人に聞いたところ、"that takes the cake" という言葉は、本来は「偉業」に対して言うので良い意味ですが, 同時に悪いことに対して皮肉を込める場合にも使われます。つまり、「ずば抜けて良い」と「ほとほとバカらしい」という二つの意味を持っており、実用的にはその場の状況で使い分けられるそうです。

同じ意味の言葉でも、日本と米国ではニュアンスが随分と違うものなんですね!
そう云えば、子供の頃に読んだイソップ物語の「アリとキリギリス」、ある英国文学者によれば、勧善懲悪の思想を説いているのは日本を筆頭にごくごく少数国だそうです。さらに現代的解釈では、アリは食べるべきものも食べずに、働き過ぎで過労死するそうです。

腹が減っては戦は出来ぬ
語源由来辞典には、「何事も腹が減っていては、良い仕事が出来ないと云う意味」と書かれています。 “Une armée marche sur son estomac” は、かのナポレオンが残した有名な台詞で、英語では “An army marches on its stomach” となり、直訳すると “兵士は胃袋で歩く” です。
One needs food in order to complete a task or function efficiently(仕事や役目を効率的に遂行するには食べねばならない)、The mill stands that wants water.(水のない水車は動かない)も、「腹が減っては戦は出来ぬ」と同義として使われます。

このように考察すると、経験的、自然科学的、医学的、生理学的、スポーツ科学的にも、食べることがパフォーマンスに大きく影響することは、紛れもない事実のようです。
現に、「運動前、運動中、及び運動後の栄養摂取」のことを、「Around Workout Nutrition」と言い、低強度の有酸素運動では必要ではありませんが、激しい高強度の運動では欠かせぬものであることが、幾つかの研究によって判明しています。

扨て、食事の回数の変遷については、「第76回のダイエットと食事の回数」で話した通り、定期的に食事をするようになったのは、農耕栽培や牧畜により安定供給が確保されたからです。そして、照明などの文明の進歩と共に、夜の生活が長くなったことで晩食が遅くなり、その結果として1日3食の食文化が生まれました。そして、道徳的/宗教的な教義として“勤労は美徳”であり、“早起き/朝食”は、その延長線上で重要な意味合いを担います。また、健全な生活を送る上で、不規則は結果的に食べ過ぎになることもあるだろうし、そういった意味では私も朝食の大切さを否定は致しません。
しかし、ダイエット(=減量)には朝食/昼食/夕食が金銀銅であるとか、朝食を摂ると痩せるとか、摂らないと太るという話になると、断固として否定します。大事なことは基礎熱力学の第一原則(エネルギー保存則)による1日のエネルギーバランスであって、トータルで摂取量>消費量なら太るし、摂取量<消費量なら痩せるのです。

<関連記事>
第70回の「白米食は女性の敵」
第71回の「穀物食品と血圧及び心血管リスク」
第78回の「牛乳とオレンジジュースの効能」
第85回の「ダイエットと食事の回数(続報)」
第87回の「フィチン酸と玄米食 vs 白米食!」
第91回の「満腹指数(SI値)とは何か御存じですか?」
第102回の「たまごとコレステロール」
第114回の「ビバリーヒルズダイエット」
第130回の「穀物フィチン酸と酵素フィターゼ」
第138回の「食事回数を増やすと肥満解消できる?」

参考文献
ご参考までに朝食に関する三つの研究発表を紹介しておきます。

Schusdziarra et al. Nutrition Journal 2011,
“Impact of breakfast on daily energy intake - analysis of absolute versus relative breakfast calories”
280名の肥満者と100名の標準体を被験者とした10~14日間の観察結果では、朝食を摂ると結果的に1日のトータル摂取量が増えた。従って、過体重や肥満者は朝食のカロリーを減らすべしというものです。

American Journal of Clinical Nutrition
「Skipping breakfast: longitudinal associations with cardiometabolic risk factors in the Childhood Determinants of Adult Health Study」Sept 2010
「幼少時より朝食を食べない成人は、心臓病のリスクが高い」ことが判明したというものです。
マイコメント:この種の観察実験で問題となる摂取量/消費量の基礎データの信憑性の問題が拭い去れない。

European Journal of Clinical Nutrition
「The glycaemic potency of breakfast and cognitive function in school children」23 June 2010
朝食のグリセミック指数(GI)とグリセミック負荷(GL)は、学童時の認知機能に関係するというものです。