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zoom RSS 第192回 ランニング・エコノミー

<<   作成日時 : 2012/01/09 06:42   >>

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体重1kgあたりに必要な酸素量は各人各様に異なるので、“同じ酸素摂取量で走った場合でも、ランナーによって出せるスピードが違う”、つまり、“同じ最大酸素摂取量(VO2max)のランナーでも、走れるスピードが異なる”ということになります。
ランニング・エコノミーとは、自動車の燃費性能と同じで、少ないエネルギーで効率よく走れる能力を意味し、長距離ランニングのパフォーマンスの直接的な要因となります。
その指標は、一定速度で走った時の酸素摂取量(ml/kg/min)を測定し、“酸素摂取量が高ければランニング・エコノミーが低い”、逆に、“酸素摂取量が低ければ、ランニング・エコノミーが高い”と評価されます(Wikipedia)。

第158回の「減量 vs ランニングスピード」で書いたように、トレーニングを継続するとLT(乳酸性作業閾値)に代表されるような持久性パフォーマンスが向上し、より早いペースで走れるようになります。更に、同じペースで走っても、より楽に走れるようにもなりますが、これにはLTの向上だけでなく、ランニング・エコノミー能力が大きく影響します。
因みに、ランニング・エコノミーには、走行フォーム、筋肉の種類形態生理学特性、体重、身長といった要因が影響すると云われていますが、特にフォームに関しては、第148回の「アスファルト vs 柔らかい地面」第149回の「フォアフット vs かかと着地」で説明した通りの論議が持ち上がっています。ついでながら、長距離ランニング界で活躍するアフリカ勢の選手は、日本人選手と最大酸素摂取量は余り変わりませんが、ランニング・エコノミーが格段に優れていると云う説もあります。

加齢vsランニング・エコノミー
2011年12月23日付のニューヨークタイムズに「The Journal of Strength and Conditioning Research」の“高齢化とランニング・エコノミー”に関する記事が掲載されているので、ご参考になればと思い紹介します:

<目的>
米New Hampshire大学の主導の下で、5`又は10`のロードレースでトップ3に入賞経験のある18〜77歳の男女51名を被験者として、ランニング・エコノミーに関する実験を行い、一定の速度で走った場合の酸素摂取量を調べることである。

<実験方法>
被験者は3つのグループに分けられた。
ヤンググループ: 18〜39歳 18名
マスターグループ: 40〜59歳 22名
高齢者グループ: 60〜77歳 11名
ランニング速度は4段階 (161、188、215、241m•min(-1)) に分けられ、各々5分間の走行を実施した。

<実験結果>
最大酸素摂取量(VO2max)
高齢者グループはヤンググループ/マスターグループより顕著に低かった。
ヤンググループ= 64.1 ± 3.2 mlO2•kg(-1)•min(-1)
マスターグループ = 56.8 ± 2.7
高齢者グループ= 44.4 ± 1.7

最大心拍数
各グループで顕著な差異があった。
ヤンググループ = 197 ± 4;b•min(-1)
マスターグループ = 183 ± 2
高齢者グループ= 170 ± 6

速度@LT
各グループ間で顕著な差異があった。
ヤンググループ = 289.7 ± 27.0 m•min(-1)
マスターグループ = 251.5 ± 32.9
高齢者グループ = 212.3 ± 24.6

VO2max@LT
高齢者グループグループがヤンググループ/マスターグループより顕著に低かった.。
ヤンググループ = 50.3 ± 2.0 mlO2•kg(-1)•min(-1)
マスターグループ = 48.8 ± 2.9
高齢者グループ = 34.9 ± 3.2

柔軟性、パワー、上半身の筋力
高齢者グループグループがヤンググループ/マスターグループより顕著に低かった。
複数の回帰分析によって、筋力とパワーは走行速度に関係することが判った。

<結論>
加齢によるパフォーマンスの低下は、最大/最大下の心拍変数と体力/筋力の低減に原因するが、ランニング・エコノミーは関係しないことが判明した。

補足説明
被験者のこれまでの走行スピードの記録によると、高齢者グループは若いアスリートよりも遅いことから、研究者は当然のこととしてランニング・エコノミーも劣るだろうと予測していました。然し、いざ実験で酸素マスクを付けてトレッドミルで走らせたところ、予測に反して60歳以上のランナーは20〜30代の若者に比較しても生理学的にエコであるばかりか、酸素を効率よく使用することで肺や大腿筋に何ら問題なく早く走れることが判明しました。加齢と共にランニング・エコノミーが低下しないことに研究者たちは驚きを隠せなかったと言っています。
1980〜2009年のニューヨークマラソンの統計数値を見ても、マスターや60歳以上の高齢者のパフォーマンスは向上しており、40歳より若い人たちのゴール到達率が低下しているのに対して、マスターランナーは男女共に伸びています。

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然し、良いことばかりではなく、若者に比べて特に40歳以上の中高年ランナーは、アキレス腱、ハムストラング、ふくろはぎの怪我をしがちなこと、更に老化と運動の頻繁回数により、損傷した筋肉の回復が大幅に長引くことがAmerican College of Sports Medicine (ACSM)に掲載されています。

更に、研究者は、“高齢者ランナーは上半身の筋力と下半身の柔軟さが落ちて、競争能力に悪影響すること”、加えて、“特にアップヒルの走行では手を大きく振ることによって、パワーと速度を生み出すことが必要で、それには上半身の筋力強化は大事であること”を指摘しています。
“加えて、下半身の腱や筋肉の柔軟性は走るストライドに関係します。今回の実験ではステップ幅を計測しなかったが、恐らく60歳以上の高齢者はステップが小さく、その為にランニングスピードも出ないのではないか”と述べています。
因みに、高齢者の脚力はヤンググループに比して遜色はないが、腕と肩の筋量/筋力/パワーでは遥かに劣っていると言っています。
最近のニューヨークマラソンの60歳以上のランナーの最速のフィニッシュタイムは7分、女性は16分も落ちているそうです。

最後に、“年寄りの冷や水”という言葉もありますので、第136回の「運動と心筋梗塞リスク」にも目を通してください。経験ない人がいきなり過激な運動をすると危険です。自分に合った運動強度から始め、様子を見ながら斬進性の原則で徐々に強度を上げて行くようにしてください。

追記
上述したように、「持久性/スピードなどパフォーマンスの大きな要因は、ランニング・エコノミー/LT(乳酸性作業閾値)である」というのが現在の主流の考え方です。一方、MLSSも同様にパフォーマンス指標の一つであると考えられてきましたが、それを否定する説が幾つか出てきています。次の研究もその一つです。
2011年12月23日付けEuropean Journal of Applied Physiologyに、“Blood lactate concentration at the maximal lactate steady state is not dependent on endurance capacity in healthy recreationally trained individuals.” のタイトル記事で,オーストリアVienna大学による結果報告が発表されました。その内容骨子は、『健常な62名を被験者とし自転車エルゴメーターで実験した結果、MLSSでの血中乳酸濃度は、性差を問わず、一般ランナーの持久性パフォーマンスには関係しないことが判った』というものです。
因みに、この論文の中に出てくる、RCP(Respiratory Compensation Point)とは“呼吸性代償閾値”の意で、MLSS(Maximal Lactate Steady State)とは“最大乳酸定常値”のことです。
これら一連の専門用語を含めて、最大酸素摂取量およびLT(Lactate Threshold)について、次回のコラムで詳しく説明する予定です。

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