第204回 スポーツ損傷とアイシング


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氷や冷却パックによる局所冷却は、スポーツ損傷の一般的な治療方法となっています。
アイルランドのUlster大学/Limerick大学の研究チームが、2011年4月まで遡って37件の研究報告をレビューした結果、20分以上局部を冷やし直ちに競技に戻ると、スピード、パワー、俊敏な走行タスクが著しく落ちるので、時間を置くかウォームアップしてから競技に戻るなど配慮するのが望ましい旨の報告が、2012年1月1日付けで“Sports Medicine” に掲載されています。

要約
アイスなどで患部を局所冷却するのが、スポーツ障害の一般的な手当てとして知られています。
しかも、局所冷却を施して直ぐに競技に戻るのが、アスリートの常識となっています。

そこで、2011年4月まで遡って37件の文献をレビューし、局部組織の冷却とパフォーマンス/スポーツ環境との関連性について調べた。
研究実験の有効性と効果量(計算値)は、グループを二手に分けて評価した。
35件が選択基準を満たしたが、それらは全てバイアス(先入観)のリスクが高かった。
平均サンプルサイズは19件であった。
メタ解析は、臨床的多様性のため実施しなかった。

大多数の研究は、冷却時間を20分以上として実施されている。
体力(ピークトルク/力)は冷却直後で75%低下することが25件の研究が示し、スピード、パワー、敏捷性ベースのランニングタスクに逆効果であると報告している。
そのうちの2件は、短時間でも体を温めてやると、このような逆効果はなくなることを示している。
筋持久性に関しては、少数だが対立エビデンスもあり、上肢の機敏性と的確性が低下することが報告されている。

現行のエビデンスから総合判断して、冷却後すぐに競技に戻ると、アスリートのパフォーマンスに悪影響することを示していますが、これら実験の冷却時間は20分以上であり、それは現行のスポーツ環境下で許される時間を超えるもので、実用面から言えばフィージブルではないでしょう。しかも、医学的な変化は小さく、エリートスポーツのみに言えることだと思料します。

結論としては、
もっとベターなエビデンスが揃うまでは、冷却時間を短くするか、冷却後に温めて再プレーすることを推奨します。

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