第283回 フィチン酸(玄米 vs 白米 vs ナッツ)


Brown rice(玄米)は、Husk(殻)+Bran(ふすま)+Grain(胚乳/胚芽)で構成されており、これを精白してEndosperm(胚乳)の部分だけにしたものが白米(精白米)です。
全粒穀物とは精白処理していない穀物の総称です。


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Endosperm(胚乳)は澱粉体です。
Bran(ふすま)とGerm(胚芽)には多くの有効成分が含まれており、玄米食が健康に良いとされる所以です。

玄米と白米の成分比較
科学技術庁資源調査会:五訂日本食品標準成分表

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フィチン酸
穀物や豆類に多く含まれているフィチン酸は、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄分、亜鉛などのミネラルや微量元素の吸収を阻害するだけではなく、脂質やタンパク質の吸収、ビタミンCやビタミンDの吸収、更にペプシン、アミラーゼ、トリプシン等の酵素の作用にも悪影響を及ぼすと言われています。

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酵素フィターゼ
上表から玄米やナッツ類にはフィチン酸が多く含まれていることが分かります。
この問題を解決する鍵はフィターゼという酵素で、玄米をSprouting(発芽)、soaking(浸漬)、fermenting(発酵)させると活性化し、フィチン酸を分解すると言われています。
そこで、玄米を水に浸漬させて発芽させるという中国発信の情報が定説となり、今でも炊飯前に一晩吸水させている方が大勢いらっしゃることと思います。
ところが、2010年4月に『発酵させてもミネラルと亜鉛は体内に吸収されなかったことが判明し、発芽や吸水についても研究し直す必要がある』ことが米国で報じられました。

最近では、『ナッツ&種子のケースでは、18時間soaking(浸漬)した後で、低温で乾かして料理すると大部分のフィターゼが除去できる(7時間でもそれなりの効果あり)し、更に水に塩を加えるとフィターゼがより活性化する』といった説も登場しています。
『トウモロコシ、小麦、大豆と異なって、ココナッツやココナッツ粉に含まれるフィチン酸にはミネラルと結合するキレート効果はないので、soaking(浸漬)する必要がない』事も報じられています。

このような状況の中で、玄米食の推奨派は、『動物実験によりフィチン酸は無害であることが科学的に検証された』と標榜していますが、牛、ヒツジ、ヤギなどの反芻動物は、ルーメン微生物によりフィターゼを体内産生するので、フィチン酸の問題は起こらないし、マウスは人間の30倍のフィターゼを体内産生します。従って、このような動物を使ってのフィチン酸の実験データは、人間には役に立ちません。
更に、フィターゼは、高温のみならず、冷凍や長期保存によっても破壊されることが判っています。

それでは、白米食が良いのかというと、米ハーバード大学公衆衛生大学院が 「白米のご飯を食べると食後に血糖値が上昇しやすく、玄米と比べて食物繊維やミネラルも少ないため、糖尿病になりやすい」 ことを2010年6月14日に発表しました。
これにやむなく追随するかのように、厚生労働省ガン研究班は2010年11月12日付け日本経済新聞に同様主旨の研究報告を発表しました。

最近では逆に、過去のデータを参照しフィチン酸の効用が唱え始められています。
例えば、『フィチン酸は、血中グルコース、コレステロール、トリアシルグリセロールを低減し、がんや心臓病のリスクを軽減する』、『フィチン酸は、過剰の鉄分や中毒性ミネラルに結合し体内から除去し、キレート剤のようにデトックス効果を促進する効果がある』といった声が聞かれるようになった。

米ハーバード大学公衆衛生大学院は、「全粒穀物の摂取を推奨する」 考え方を変えていません。

以上の通り、それぞれの利益団体の思惑も絡んで、錯綜した情報が飛び交っているのが実情で、我々消費者は迷ってしまいますが、このような論争は今後とも続くことでしょう。

それではどうしたら良いのでしょうか?
そもそも、玄米だけでミネラルを補うという考え方が間違っているし、加えて、玄米やフィチン酸を多く含む食品を摂ったからと云って、体内でミネラルが不足するわけでもありません。玄米食が良いのか、白米食が良いのか、それともパン食か、さらにナッツやマメ類かと云うことよりも、大事なことは、いずれであっても『適量を摂取すること』です。そしてカロリーと栄養価バランスは、副食を含めたトータル(24H)で考えるべきです!

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参照記事
Coconut Flour and Phytic Acid: Does it need to be soaked?
2012/03/09