第311回 プラセボ効果とノセボ効果

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プラセボ効果
プラセボ(偽薬)でも、当人が良く効く薬だと信じていれば治病的効果が生じることを、「プラセボ効果」と云います。薬でなくても、体への一定の刺激、祈祷、儀式、或いは、“おまじない”をした場合でも、同じような効果が生じることがあり、これも「プラセボ効果」と呼ばれます。

フィリピン人の心霊手術が話題になりました。
両手でお腹から病巣のようなものを取り出すと患者は直ぐに良くなる。
手術後は何の傷跡もない。
結局は、有名な手品師により、巧妙なトリックであることが見破られました。
それにしてもこの心霊手術で随分と多くの人が助けられたそうです。
プラセボ効果とは凄いものです。

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昨年の忘年会の席上で、若い女性から不妊の悩みを打ち明けられました。
解決法として、“エッチが終わっても直ぐに立ち上がらず、仰向きのまま両足を高く上げた状態を15分続けると妊娠しやすい”と教えてあげました。もちろん酒の席でのジョークです(笑)
後日、彼女はホントにこれを実践して、妊娠したことを聞かされたときには、我が耳を疑いました。
これはプラセボというより、瓢箪から駒が出たと云った方が良いのかも知れません(^.^) 

ノセボ効果
プラセボ効果は一般的に知られていますが、その逆も真実であることが判明しています。
ドイツ、ハンブルク大学メディカルセンター神経学のUlrike Bingel博士は、健常22名を被験者として、強力なオピオイド系鎮痛薬レミフェンタニルを投与し、治療に対する患者の期待を変化させて、その効果を、脳MRIスキャナーで調べた。その結果、薬剤の投与量を変更しなくともレミフェンタニルの使用状況(有無)を信じることで、疼痛レベルが大きく変動した。また、患者に薬剤投与の中止を告げるとまもなく、疼痛レベルが急上昇する「ノセボ効果」がみられたという・・・医学誌“Science Translational Medicine”2011年2月16日

呪術で悪霊の力を借りして相手を呪う「黒魔術」や、日本古来の「藁人形に五寸釘」もノセボ効果と云っても良いでしょう。
ノセボ効果は、当人が自覚することで生じるものですから、科学的に呪っていることが相手に伝わらなければ実現しません。神社と云う場所に意図的に藁人形を残すことで、それを見た人の噂がいつか本人に伝わります。藁人形に名前を書くのも、誰を呪っているかを知らしめるメッセージです。
誹謗中傷の悪口を不特定多数の目にさらし、卑劣な手段で傷つけるインターネット上の書き込みは、現代版の藁人形呪術と言っても過言ではないでしょう。

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「プラセボ効果」と「ノセボ効果」という現象は、東洋医学で云われる心身一如、つまり人のBelief(信仰や信念)と健康状態との密接な関係を示していますが、現代医学でもこれらの詳しいメカニズムは解明されていません。
これらは宗教の世界とも深く関係しており、色々な見方がありますが、カナダのUniversity of British Columbiaの社会心理学者Ara Norenzayanは、May2 2012付けの英国科学誌New Scientistで、 “Analytical thinking erodes belief in God”・・・分析思考は信仰心を失わせる“ というタイトル記事の中で、『人間は情報を処理するために2つの認知システムを使う。ひとつは直感的(迅速)で、もう一つは分析的(スロー)である。超自然的な信念は直感的な思考に支えられており、分析的な思考が活性化すると直感的なシステムは無効化する。習慣的に分析思考をする科学者に不信仰者が多いのもこの理由による』と述べています。

遺伝子スイッチをオンにする生き方
遺伝子の権威と云われる村上名誉教授(筑波大学)が桐嶋洋子さんとの対談の中で、『糖尿病患者が漫才を聴き大いに笑うと、食後血糖値の上昇が抑制され、笑いは体の免疫力を高めてくれる薬だということが明らかになった。心と体は相互作用するもので、心の持ち方ひとつで健康を損ねたり、病気を克服したりするが、これには遺伝子が関係している。遺伝子には、繁殖して自分が得をしようとする「利己的遺伝子」と、繁殖を抑制して死のうとする「利他的遺伝子」があり、これで適正なバランスを保っている。そして、遺伝子のスイッチを入れる要素は、火事場の馬鹿力のような「環境の変化」や 「心の持ち方」であり、良い遺伝子スイッチをオンにするには、物ごとを良い方向に考える、つまりプラス思考になることである』と実に興味深い話をされています。

更に、上記に掲げたプラセボ効果とノセボ効果における「心」とは、「意識すること」「信じること」ですが、『遺伝子スイッチの研究は更に進んでおり、ハーバード大学やコロンビア大学が行った「祈り」の効果の実験で、病人を数百人ずつ二組に分けて、一方にだけ「早く治りますように」とお祈りをしたところ、そのことは全く知らされておらず、声など聞こえない遠距離からの祈りなのに、祈られたグループの方が、祈られなかったグループよりもずっと回復が早かったという結果が出たそうです。
「祈る」とは一種のエネルギーなので、距離を超えると考えられています。
「心」と「スピリッツ」は別物で、心は意識の世界、スピリットは無意識の世界につながっているのではないかと考えられ、現代の米国医学事情として、既に「スピリチュアル・ケア」が取り入れられています。西洋医学では治らない病気が一向に減らないので、最近の米国では代替医療や祈りの研究が盛んになっており、アメリカ国立衛生研究所(NIH)は、漢方薬、鍼灸、瞑想、祈りなどが慢性疾患に対してどのように効くかを明らかにするため、巨費を投じて研究している』とのことです。

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