第382回 姉妹都市 vs 兄弟都市


雑談あれこれ(^.^)

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まるで奥歯に物が挟まったように、随分前から私の中でスッキリしないことがあります。
それは男性名詞と女性名詞です。
姉妹校、兄弟校、姉妹都市、兄弟都市、姉妹会社、姉妹品、兄弟船(演歌)など様々な使われ方がされています。
例えば、

神戸と米国シアトルは姉妹都市(sister city)です。

新潟とロシアのハバロフスクは兄弟都市です。

ゲルマン語系の英国では双子都市(twin city or twin town)と呼びます。

高校野球で馴染み深い智弁奈良と智弁和歌山は、理事長はいずれも藤田清司氏で共学校ですが“兄弟校”と呼ばれ、韓国、オーストラリア、米国に“姉妹校”があると記述されています(ウィキペディア)。

そこで、これらの背景にあるものを探ってみました。

ロシア語
ロシア語では名詞は全て、男性名詞・中性名詞・女性名詞に分かれます。
・男性名詞は、ア行およびオ行以外の音で終わります。
・中性名詞は、オ行の音で終わります。
・女性名詞は、ア行の音で終わります。

例えば、ハバロフスク(Хабаровск)は男性名詞で、モスクワ(Москва)は女性名詞ですが、都市(город)という言葉自体が男性名詞なので、一般的には海外も含め都市間の場合は 、”兄弟都市” と云います。
会社(Компания)は女性名詞ですから、関係会社を姉妹会社と呼び、兄弟会社とは言いません。
学校(Школа)という言葉は女性名詞ですが、もう少し突っ込んで調べてみると、ロシアはソ連時代の教条的な男女同権により共学が主体でしたが、新生(金満)ロシアになってからは、男女別で多くのエリート校(生徒の質と言うより、豪華な設備を売りにする富裕層の子弟の取り込みを目的にしている)が出来ています。
初等・中等教育の学校は女性名詞ですが、大学になると男性名詞となります。

ヨーロッパ系祖語の名詞
ラテン語は、ローマ帝国の公用語となったことにより、広大な版図に伝播しました。
現代のイタリア語、ルーマニア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語などロマンス諸語は、俗ラテン語から派生した言語であり、また、ドイツ語、オランダ語、英語などのゲルマン諸語にも文法や語彙の面で多大な影響を与えました。

印欧祖語の名詞には元来は男性・女性・中性の区別がありましたが、現在ではこれら三つの性を全て残している言語もあれば、性をほぼ完全に失った言語もあり、性の様相は多彩となっています。

男性・女性・中性の区別を全て残している言語としては、ラテン語、ドイツ語、スラヴ語(ロシア語、チェコ語、ウクライナ語など)等があります。

ラテン語から派生したフランス語、スペイン語などは、中性が男性に吸収され、性は男性と女性の二種類で、都市は女性名詞です。また、デンマーク語、スウェーデン語、オランダ語では、女性と男性が融合して通性(両性or共性)になり、性は通性と中性の二種類となっています。

ゲルマン語系の英語では性はほぼ失われており、生物学的性に対応したもの及び擬人法を除けば、船や国名など一部の名詞(但し必須ではない)、3人称単数代名詞(he/she/it)においてのみ現れます。
米国ミネソタ州のMinneapolis-St.PaulやWinston-Salemは“twin city”と呼ばれます。
また、ジョージア州のTwin Cityは固有名詞です。
スペイン語の詞複数形冠詞として、ラス(Las:女性名詞)とLos(ロス:男性名詞)があり、 米国の都市名になっています。ラスベガス(Las Vegas)はベガ(女性名詞:肥沃な土地)の複数形に冠詞がついたものであり、ロスアンゼルス(Los Angeles)はエンジェル(男性名詞:天使)の複数形に冠詞がついたものです。

日本
姉妹都市運動は、米国やヨーロッパ諸国の主導で、第二次大戦後の復興および敵対した国との関係修復のため、国境を超えた交流により世界平和を実現するという目的で始まりました。姉妹都市と名付けられた所以は、上述した通り、西欧の言語には女性名詞・男性名詞などの区別があり、都市は女性名詞であることからです。
東京都の友好都市は、ニューヨーク、北京 、パリ、オーストラリアのニューサウスウェールズ、ソウル、ジャカルタ、サンパウロ、カイロ 、モスクワ、ベルリン、ローマの11都市で様々ですが、総じて姉妹都市と呼ばれています。
その延長線上で、姉妹校、姉妹品、姉妹会社などの慣用句が生まれています。
メンタームで有名な近江兄弟社を近江八幡で創業したのは宣教師ヴォーリズですが、彼の出身地である米国レブンワース市と近江八幡市を兄弟都市と呼ぶように、所謂こじつけ的なものもあります。
上述したように智弁学園のケースでは、国内校の関係を兄弟校、海外校との関係を姉妹校と呼んでいますが、その理由については今一つ良く分かりません。

このように現在の日本では、言語系に由来した呼び方、米国ミネソタ州のMinneapolis-St.PaulやWinston-Salemのような地理的(隣接)な理由、イメージに因るものなど様々な理由が混在し、男性名詞と女性名詞の明確な棲み分けの定義は、どうやら無いようです。

余談ですが、
日本語では、“母なる海”、“母なる大地” と云われますが、英語では海は男性名詞、国家は女性名詞ですが、国土を表す時は男性名詞となります。
ITによる情報のグローバル化や男女同権が徹底し女性の男性化が進む時代の流れの中で、男性名詞と女性名詞の棲み分けが崩れてしまっているのかも知れません。

参照引用ソース
・ウィキペディア
・ロシア語については、東京外大ロシア語学科卒のMGさんから助言をいただきました。