第549回 筋トレ中断がパフォーマンスに及ぼす影響


muscular strength(筋力)はスポーツ・パフォーマンスの主たる決定因子です。
筋繊維タイプ、筋断面積、筋肉構造など筋の形態変化と運動単位の動員数の増加やインパルスの発火頻度の増加などを含めた神経一筋の機能的変化との2つの主要因が相互作用し、大きな力を生み出します。
今回は、筋トレ中断が筋力・パフォーマンスへ及ぼす影響についての研究を紹介しますが、本題に入る前に、先ずは語句の説明をしておきたいと思います。

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Powerと forceの違い
物理学では、Powerは仕事率やパワー出力、forceは力と和訳されますが、この2つはまったく別の概念です。つまり、power=force x velocity(速度関係)として示されます。

トルクと馬力
トルクとは瞬間的な力(=force)で、大きければ大きいほど出だし(加速)が良くなります。
馬力(horsepower)とは仕事率を表す単位の一つで、ある決められた時間内に、どれだけ重い荷物を、どれだけ遠くまでに運べるかを、馬何頭分に当たるかで表示したものです。
つまり、馬力とは継続的な力(=power)で、大きければ大きいほどスピードが出て、荷物を早く遠くへ運ぶ事ができます。

もっと具体的な例を挙げて話しますと、
AさんとBさんが60kgの砂利を100m先の地点に移しました。
Aさんは一度に運びました。
Bさんは三度に小分けして運びました。
速く運び終えたのはBさんでした。
この時、Aさんは持ち上げる力(トルク)は強いけれど、Bさんの方が馬力は大きいということになります。

なお、一般的なケースでは、powerは物理的な能力だけでなく、社会的な地位や権力など他人の行動を支配する力も含まれます。
また、muscular strength(筋力)と言うようにstrengthも力を意味しますが、strengthは内に備えられた精神的/物理的な力、つまり人の体力や力を指すことが多い。

European Journal of Clinical Nutrition
2013 Jan24
Effect of training cessation on muscular performance: a meta-analysis.

<アブストラクト>
本研究の目的は、レジスタンストレーニングの中断がstrengthパフォーマンスに及ぼす影響を解析によって評価することである。七つのデータベースを検索し、284件中103件が選択基準を満たした。
トレーニング状態、性別、年齢、およびトレーニング中断の期間は、モデレーターとして使用した。筋肉パフォーマンスの標準化平均差(SMD)を算出し、全体的な効果およびその95%信頼区間を算出するために分散の逆数で重み付けした。
結果:筋肉のパフォーマンスを構成するすべての要素に不利益な影響があることを示した。
・submaximal strength:SMD -0.62 95%CI -0.80~-0.45 P <0.01
・maximal force:SMD -0.46 95% CI -0.54~-0.37 P < 0.01
・maximal power:SMD -0.20 95% CI -0.28~-0.13 P < 0.01
・高齢者の方が影響は大きい。

追記
アブストラクトだけでは余りにも舌足らずなので補足説明します、

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(註)
・maximal forceの測定は、1~5RM及びピークトルク
・maximal powerの測定は、垂直跳び高さ、スプリントパフォーマンス及びピークパワー
・submaximal strengthの測定は、6~12RM、枯渇までの時間、及びトータルワークアウト

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(註)筋トレ中断後1週間はmaximal forceと同様の低減傾向を示していますが、8~14日後には筋トレ中よりもmaximal powerは僅かながらも高まっています。これを速筋のovershoot(supercompensation)とする見方もありますが、forceが減少していることを勘案すれば、power=force x velocityですから、velocity(中枢系)部分が昂進していると考えるのが妥当だとの指摘もあります。

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