第615回 エクササイズ vs 食後脂質異常症


卵に関するトピックで触れた通り、“コレステロール値”に対する食事の影響はあまり大きくありません。しかし、中性脂肪値は食後2~3時間は空腹時の1.5倍くらいまで上昇し、8時間くらいかけて元の値に戻るのが一般的ですが、中には数倍近くまでスパイクする人がいます。これが“食後脂質異常症”であり、動脈硬化が進みやすく、心筋梗塞などの心臓病や脳卒中になりやすいと云われています。

画像


Medicine & Science in Sports & Exercise:
February 2014 - Volume 46 - Issue 2 - p 239–246
“Exercise Energy Expenditure and Postprandial Lipemia in Girls”
By 英国Loughborough大学

“少女における運動エネルギー消費と食後脂質異常症”

イントロ:
アテローム性動脈硬化症のプロセスは小児期に始まるが、動脈硬化性疾患の臨床症状は、一般的には成人期まで明らかではない。血漿トリアシルグリセロール濃度(TAG=中性脂肪値)の上昇はアテローム性動脈硬化症のリスク増大と関連している。
食後TAG上昇の度合いと継続時間は、アテローム性動脈硬化症の進行と明確に関連している。さらに、最近の前向きコホート研究で、非空腹時(食後)TAGは、男女における将来の心筋梗塞や心不全など心血管イベントを予見する独立因子であることが示されている。
実際に、累積エビデンスは、“従来の空腹時での測定よりも食後TAGの方が、心血管疾患リスクを予見するにはbetterである”ことを示している。日常生活では、一日の大部分が食後の状態になっていることから、身体活動量が低い上に高脂肪や高炭水化物の食事が重なると、TAGがより長く高まることで心血管疾患リスクを高める可能性があります。そのため、TAG代謝を改善することにより、食後の脂肪血症を調節する介入は、理想的には小児期および青少年の間に始めるべきである。
多くの研究では、成人の場合は高脂質負荷試験の~18時間前まで一過性の有酸素運動を行い、その結果、時間に対する曲線TAG下の総面積が15%〜25%低減したことが示されている。
亦、青少年を被験者として、中~高強度運動が食後TAGに及ぼす影響を調べた研究があるが、
これらの研究では、対照群(運動なし)と比べて食後TAG反応は運動後に低くなっている。
運動誘発性食後中性脂肪の低減効果の程度は、運動における総エネルギー量に依存するように思えるが、対照的に少年に関する研究では示されていない。
13歳の少年を被験者としたvo2maxの55%の強度での断続的なトレッドミル運動で、30分(982 kJ)でも60分(1967 kJ)でも同様の効果があることが、複数の研究で示されている・・・
カッコ内の数値は消費カロ―で倍の違いがあるが、TAG低減差は僅か4%であった。
運動誘発性食後TAGの低減は少年で生じることを累積エビデンスは示しているが、女子では同様の研究は見当たらない。研究群は一貫して、女性よりも男性の方において食後TAGが大きく、それは内臓脂肪組織など性差が反映されているものと考えられる。
運動による食後中性脂肪の低減についての研究の大半は男性であるが、Gill et al.による男性30名女性43名を被験者とした研究では、差異がなかった(23.5% vs 19.8%)ことが報告されている。しかし、運動が少女の食後TAGを低減させるかどうかは分かっていない。

目的:
本研究の目的は、健全な少女がトレッドミルで中強度ウォーキングを30分及び60分行った際の、食後中性脂肪レベルに及ぼす影響を調べることである。

方法:
18名の少女(年齢10~14歳、体重48 ± 11 kg、体脂肪率19.0 ± 4.6%、VO2max47 ± 6)を被験者として、一試行が連続した2 日工程の実験に3 回参加して貰った。各試行の間隔は14日間とした。

一日目は、安静群(対照群)、運動30分群(3回x10分:インターバル10分)、運動60分群(6回x10分:インターバル10分)の3群に別けた。運動強度はvo2max56%とした。運動群の運動消費量は777 and 1536 kJ (186 and 367 kcal)である。

2日目は、 12時間の絶食後に、高脂肪ミルクシェイク( 体重1kg当たり80 kJを)摂取する前に毛細管血液サンプルを採取した。さらに6時間に亘って1時間ごとに安静時の血液サンプルを採取した。 ANOVAおよびスチューデントt検定を用いてデータを分析した。

結果:
空腹時TAGは運動60分群が、対照群(95%信頼区間:-0.36~0.04、効果サイズES:0.41
)及び運動30分群(95%信頼区間 -0.47~0.04、ES:0.46)より低かった。
全群の平均とも低かった(≤0.90 mmol•L−1)
主効果は食後TAGの経時的差異を示した(ES=0.36)
時間に対する曲線TAG下の総面積は運動60分群が、対照群(95%信頼区間:-2.66~-0.04、効果サイズ:0.40)および運動30分群(95%信頼区間:-2.11~0.15、効果サイズ:0.30)が低かった。因みに、対照群と運動30分群は類似していた((95%信頼区間:-2.11~0.15、効果サイズ:0.10)
食後血漿グルコースは群間差がなかった(主効果条件ES=0.40、主効果時間ES=0.50、条件-時間相互作用ES=0.09);TAUC-glucose (ES = 0.05–0.13) or iAUC-glucose (ES = 0.08–0.22)いずれも群間差はなかった。

結論:
高脂肪の朝食の~14.5時間前に行った60分間の中強度運動(エネルギー消費量1536kj)は、健康な少女の食後中性脂肪値を低減した。エネルギー消費量が約半分(777kj)の30分間の中強度運動では食後中性脂肪値を下げるには不十分であった。

関連記事
第558回の腹部・ヒップ・大腿部の肥満を徹底解明 Part1
第559回の腹部・ヒップ・大腿部の肥満を徹底解明 Part2
第560回の腹部・ヒップ・大腿部の肥満を徹底解明 Part3
第561回の腹部・ヒップ・大腿部の肥満を徹底解明 Part4