第662回 健康なデブは存在せず!


論文を読んでいると“Metabolically healthy obesity”という言葉が散見されます。これを和訳すると“代謝的に健康な肥満”の意になりますが、米国医師会は肥満を疾患と認める決定を下しているので、健康な肥満って有りえない筈です。
御貴承の通り、心血管疾患はメタボリックシンドロームの主たる臨床的帰結(clinical outcome)とされていますが、韓国の成均館大学校の研究者Dr Yoosoo Chang et al.は、心血管疾患を患っていない健康な韓国人を対象として、心臓を取り囲むように走っている冠動脈のカルシウム石灰化スコアを調べた結果、肥満者は石灰化プラークの形成が多い傾向にあることが明らかになり、代謝的に健康な肥満という概念は否定されました。

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JACC Journal of the American College Cardiology
April 2014
Metabolically healthy obesity and coronary artery calcification

研究タイトル:
代謝的に健康な肥満者と冠動脈石灰化

目的:
代謝的に健康な肥満および代謝的に健康な標準体重の男女の冠動脈カルシウム代謝を比較した。

背景:
“代謝的に健康な肥満”と呼ばれる肥満関連の代謝異常が認められない肥満者での心血管疾患リスクについては議論の余地がある。

方法:
横断研究
心血管疾患既往歴のない代謝的に健康な30~59歳の男女14,828名を被験者とし、次の通り4つのグループに分けた。
・低体重:(BMI <18.5 kg/m2)
・標準体重:(BMI 18.5-22.9 kg/m2)
・過体重:(BMI 23.0-24.9 kg/m2)
・肥満:(BMI ≥25 kg/m2)

心臓CTで冠動脈カルシウム(CAC)スコアを調べた。
“代謝的に健康”の定義を次の通りとした:
・空腹時血糖値<100 mg/dL
・血圧<130/85 mmHg
・中性脂肪<150mg/dl(男性)、中性脂肪<50mg/dl(女性)
・インスリン抵抗性指数<2.5

結果:
代謝的に健康な肥満者は、代謝的に健康な標準体重の人より冠動脈石灰化の有病率が高かった。
多変量調整されたモデルでは、代謝的に健康な肥満者の冠動脈カルシウム(CAC)スコア比率は、代謝的に健康な標準体重の人に比べて2.26(95%信頼区間1.48~3.43)だった。
媒介分析で、代謝性リスク因子を更に調整すると関連性は著しく弱まり、もはや統計学的な有意性は認められなかった(CACスコア比率1.24;95%信頼区間0.79~1.96)
これらの関連は、臨床的に関連するサブグループでも違いは認められなかった。

結論:
“代謝的に健康な肥満者”は、“代謝的に健康な標準体重”の人よりアテローム性動脈硬化の発症が多く、“代謝的に健康な肥満者”が健康ではないことを示している。