第688回 暑い時は熱い飲み物でクーリング


「発汗量は冷たい飲み物と温かい飲み物によって一過性的に変化すること、そしてその変化は体幹温度や皮膚温度に関係なく、而も口内ではなく腹部内の温度受容器によって独立的に調整されるものである」ことが、カナダOttawa大学の研究チームから発表されました。

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Journal of Applied Phylosogy
2014 Apr 15
Evidence that transient changes in sudomotor output with cold and warm fluid ingestion are independently modulated by abdominal, but not oral thermoreceptors.

二つの研究を実施し、(1)運動中に温度の異なる水分を摂取した後の局所発汗率(LSR)の変化を調べ、(2)独立的に発汗作用を調整する消化管にあると考えられている温度受容器の位置を特定した。

研究①では、
12名の男性を被験者として、運動5分前及び運動15分/30分/45分後に、1.5°C、37°C、50°Cの少量の水分(3.2 ml/体重1kg)を摂らせ、Vo2max 50%の運動強度で75分間のサイクリングを行わせた

研究②では、
8名の男性を被験者として、上記と同条件で運動を行わせ、運動15分/30分/45分後に、
1.5°Cまたは50°Cの水分を、鼻腔栄養チューブで胃に直接送り込む(NG)か、或いは、暫く口に含むだけで吐き出させた(SW)

直腸(Tre)/耳管(Tau)/平均皮膚温度(Tsk)、及び額、上背部、前腕の局所発汗量を測定した。
研究①では、直腸(Tre)/耳管(Tau)/平均皮膚温度(Tsk)についは群間差が無かったが、1.5°Cの水分を摂取するとLSRは全部位で有意に抑えられ、37°Cと比べて50°Cの水分摂取では高まった(P < 0.001)
1.5°C 及び 50°Cの水分摂取後の両者の平均LSRのピーク差は0.29 ± 0.06 mg/min(-1)/cm(-2)であった。
研究②では、1.5°C及び50°Cの水分を口に含んだ(SW)ケースではLSRの群間差は認められなかったが、経鼻腔チューブで摂取すると直腸(Tre)/耳管(Tau)/平均皮膚温度(Tsk)の同時差異は無いにもかかわらず、1.5°Cの水分を摂取した方がLSRは全部位で低かった(P < 0.001)。
これらのデータは、体幹及び皮膚の温度が同じでも、LSR(局所発汗量)は冷暖水によって一過的に変化すること、そして水分摂取中の発汗出力を独立的且つ急性的に調整する温度受容器は、恐らく腹部領域内に存在し口腔内ではないことを示している。

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マイコメント
皆さんも気化熱を利用してスイカやビールを冷やした経験はあるでしょう。
暑いのに熱い物を口にする光景は、中近東やインドなど酷暑地でのテントや室内でよく見かけますが、これも体温を上げずに発汗作用と気化熱を利用して涼を取る生活の知恵だそうです。しかし、アラブの炎天下の砂漠をエアコンの壊れたランドクルーザーでアドベンチャーした時、車窓を空けるとヘアードライヤーのような熱風に耐えられないので、窓を閉め切って汗びっしょりになって、窓をいきなり開けることで一瞬の涼を感じたことが思い出されますが、このように大量の汗をかくような状況では、熱いものを飲む必要性は全く見出せません。
又、シンガポールでゴルフをすると滝のような汗が出て、まるで雨に打たれたように全身びしょ濡れになるので、アイスカチャン(かき氷)であろうと熱いコーヒーであろうと此処でも関係ありません。
酷暑地で私が体験したクーリングの最善の方法は、脱水症状にならないようにアイスボックスに入れた冷たい飲み物をたっぷり飲み、帽子に保冷剤を入れて脳天を冷やして、氷の欠片で火照った肌に摩りつけることでした。
この研究は、“一般的な気温条件下で、低強度の運動を体温を上げずに上手に汗をかいて行う”という視点で読めば良いのでしょうか・・・いやいや、つべこべ言わずに結果だけを真摯に受け止めることにします。

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