第786回 米国糖尿病学会が推奨する栄養療法(脂質)


米国糖尿病学会が推奨する栄養療法” について、『脂質の項目に関する補足説明』の部分を和訳します。

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総脂肪

Evidence is inconclusive for an ideal amount of total fat intake for people with diabetes; therefore goals should be individualized (C); fat quality appears to be far more important than quantity. (B)

糖尿病患者にための理想的な総脂肪摂取量に関するエビデンスは不十分である;したがって、目標は個別化されるべきである(C);脂肪の量より、質の方が遥かに重要である(B)

<補足説明>

現在の処は、慢性病の不備リスクや予防リスクが生じる脂質の総エネルギー摂取量に占める割合を定義づけるデータは不十分であり、故に、脂質摂取についての必要量または1日当たりの推奨量は明らかにされていない。しかし、米国医学研究所(IOM:Institute of Medicine)は脂質摂取の耐用上限量を設けず、目標値として20~35%の許容範囲(AMDR)を定めている。

脂質摂取のAMDRは、低脂肪/高炭水化物食による冠動脈性心疾患(CHD)リスクを示すエビデンス、及び高脂肪食での肥満や合併症の増加に対するエビデンスに基づいた推定値である。これらの推奨は糖尿病特有のものではないが、糖尿病患者に関する研究が限られている。脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸(一価不飽和脂肪酸 or 多価不飽和脂肪酸)に分類される。

トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸と考えても良いが、構造的に異なっており健康へ悪影響を及ぼす。代謝目標をサポートしたりCVDリスクに影響を与えるという点で、脂質は総脂肪(量)よりもタイプ(質)がより重要である。従って、目標を個別化するときは脂質摂取のタイプに一層の注意を向けるべきである。

糖尿病患者は、減量若しくは維持目標を適えるためには、脂質摂取を節制するよう奨励されるべきである。

一価不飽和脂肪酸(MUFA)および多価不飽和脂肪酸(PUFA)

In people with type 2 diabetes, a Mediterranean-style, monounsaturated fatty acid (MUFA)-rich eating pattern may benefit glycemic control and CVD risk factors and can, therefore, be recommended as an effective alternative to a lower-fat, higher-carbohydrate eating pattern.

2型糖尿病患者では、地中海スタイルの一価不飽和脂肪酸(MUFA)が豊富な食事パターンは、血糖コントロールと心血管疾患リスク因子に有用なので、低脂肪/高炭水化物の食事パターンの効果的な代替として推奨することができます・・・B

<補足説明>

大規模な前向きコホート研究、臨床試験、およびランダム化比較試験(RCT)の系統的レビューによるエビデンスが、高MUFA食は血糖コントロール改善やCVDリスク改善又はリスク因子と関連することを示している。MUFAが豊富な地中海スタイルの食事パターンは過去10年間に亘って広く研究されてきた。炭水化物や飽和脂肪酸をMUFAに置き換えることで血糖コントロールや血中脂質が改善したことが、2型糖尿病患者を対象とした6件のRCTsで報告されている。
2011年には、アメリカ栄養士会のEvidence Analysis Library (EAL)が非糖尿病および糖尿病患者を含む13件の研究に基づいて、食事性MUFAが血中脂質の改善と関連しているという強力なエビデンスを発見した。Evidence Analysis Library (EAL)に因れば、飽和脂肪酸をMUFAにカロリーベースで5%置き換えると、インスリン抵抗性および2型糖尿病患者のインスリン応答性が改善する。
糖尿病患者のω-6多価不飽和脂肪酸(PUFA)の効果についてのエビデンスは限られている。
ω-6とω-3のベストな摂取比率については論争がある:ω-6及びω-3は飽和脂肪酸やトランス脂肪酸と置き替えることが望ましい。

n3多価不飽和脂肪酸

Omega-3 fatty acids c Evidence does not support recommending omega-3 (EPA and DHA) supplements for people with diabetes for the prevention or treatment of cardiovascular events. (A)

糖尿病患者に心血管疾患の予防と治療のために、n3多価不飽和脂肪酸(EPAとDHA)のサプリを奨めるのはエビデンスがサポートしていない・・・A

As recommended for the general public, an increase in foods containing long-chain omega-3 fatty acids (EPA and DHA) (from fatty fish) and omega-3 linolenic acid (ALA) is recommended for individuals with diabetes because of their beneficial effects on lipoproteins, prevention of heart disease, and associations with positive health outcomes in observational studies. (B)

長鎖n3多価不飽和脂肪酸(脂肪の多い魚からのEPA/DHA)とαリノレン酸(ALA)を含む食品を増やすことは、観察研究において、リポ蛋白、心臓病の予防、及び正の健康アウトカムとの関連に有用な効果を及ぼすことから、一般の人達と同様に糖尿病患者にも推奨される・・・B

The recommendation for the general public to eat fish (particularly fatty fish) at least two times (two servings) per week is also appropriate for people with diabetes. (B)

特に脂肪の多い魚を少なくとも週2回(2人前)食べることを、一般の人達と同様に糖尿病患者にも推奨する・・・B

<補足説明>

ADA系統的レビュー(2002~2010年)は7件のRCT、ω-3脂肪酸サプリを用いた1件の単一群試験、及びω-3自然食品の摂取に関する1件のコホート研究を同定した。
2型糖尿病患者では、ω-3脂肪酸サプリで血糖コントロールは改善しなかったが、多量服用するとトリグリセリド(中性脂肪)が減少した。
これらの試験ではCVDリスクの付加的な血液由来マーカーに一貫して変化は認めらなかった。糖尿病患者では、30日~12週間の短期RCT6件でω-3(EPA & DHA)サプリとプラセボを比較した多量栄養素レビューが行われているが、CVDリスク因子や例えばうつ病などその他の健康上の問題に及ぼす有力効果は極微または全く無かったこと、或いは混合効果やバラツキ効果が見られたことが報告されている。
亜麻仁(32g/日)又は亜麻仁油(13g/日)を12週間サプリで摂取したが、血糖コントロールやアディポカインには影響しなかった。
3件の長期研究(4ヶ月/40ヶ月/6.2年)でも混成結果が報告されている。二つの研究は全く効果ないと報告している。そのうち1件の研究では2型糖尿病患者を被験者として、無作為にアトルバスタチン又はプラセボand/or ω-3サプリ(2g/日)又はプラセボが割り当てられた。
10年間の推定CVDリスクは、ω-3サプリ及びプラセボの両群で差異は認められなかった。最も大規模かつ長期試験で、2型糖尿病患者がω-3脂肪酸サプリ1g/日を摂取しても、プラセボ群と比べて心血管イベント発症率、全原因死亡率、及び不整脈による死亡率は減少しなかった。しかし、心筋梗塞後の糖尿病患者を被験者とした1件の研究では、低用量400mg /日のω-3脂肪酸サプリを割り当てると、心室性不整脈関連イベントに対する予防効果が生じ、且つ、死亡率が減少したことが報告された。
このように、証拠力のある観察/前臨床研究があるにもかかわらず、CVDの一次または二次予防のためのω-3サプリの推奨は、ランダム化比較試験(RCT)ではサポートされていない。
海洋性ω-3脂肪酸or植物性ω-3脂肪酸であるリノレン酸を含む食品の効果について糖尿病患者を対象とした研究は限られている。
サプリメントを用いた先行研究では、空腹時血糖値とA1Cレベルについて混成効果が示されている。
しかし、ω-3脂肪酸(多脂魚)vs ω-6脂肪酸(赤身魚やリノレン酸)が多く含まれる食事を比較した研究では、いずれの食事もグルコース測定に有害な影響を及ぼさなかったこと、更に、どちらもインスリン感受性とリポ蛋白プロフィルを改善したことが報告されている。

飽和脂肪酸、食事性コレステロール、及びトランス脂肪酸

The amount of dietary saturated fat, cholesterol, and trans fat recommended for people with diabetes is the same as that recommended for the general population. (C)

糖尿病患者に推奨される食事性の飽和脂肪酸、コレステロール、およびトランス脂肪酸の摂取量は、一般の人達への推奨量と同じです・・・C


<補足説明>

糖尿病患者における飽和脂肪酸の摂取量/血糖コントロール/CVDリスク間の関係を探求した調査研究は少ない。Wheeler et al.による系統的レビューで、低飽和脂肪酸食(トータルカロリーの8%)と高飽和脂肪酸食(トータルカロリーの17%)を比較した3週間の小規模の研究を見つけ、血糖コントロールと殆どのCVDリスク測定で有意差がなかったことが報告された。また、糖尿病患者での最適な食事性コレステロールとトランス脂肪酸の摂取量に関する研究は限られている。2型糖尿病の女性を対象にした大規模の前向きコホート研究では、コレステロール200mg/1000kcal毎にCVDリスクは37%高まった。この種の研究は欠如しているので、糖尿病患者は一般の人向けのガイドラインに準拠するべきであろう。
アメリカ人のための食生活指針2010は、CVDリスクを減らすための飽和脂肪酸の摂取カロリーを10%未満に抑えるように推奨している。
消費者は全脂肪乳製品/バター/霜降り肉やベーコン/ココナッツやヤシのようなトロピカルオイルなど飽和脂肪酸の多い食事を、キャノーラ/トウモロコシ/ベニバナ/大豆/ひまわりなど植物油やナッツ油、全種ナッツ、ナッツバター、アボカドなどMUFAやPUFAに置き替えることでガイドラインを満たすことが出来る。
CVDは糖尿病患者にとって一般的な死因である。それ故、糖尿病患者はCVDリスク要因を管理するためには一般集団と同様の栄養勧告に従うことが奨励されている。
これらの推奨事項は、飽和脂肪酸の摂取をトータルカロリーの10%に減じること、食事性コレステロールは300mg /日を目指すこと、トランス脂肪酸は可能な限り制限すると云ったことを含む。

植物スタノールと植物ステロール

Plant stanols and sterols c Individuals with diabetes and dyslipidemia may be able to modestly reduce total and LDL cholesterol by consuming 1.6–3 g/day of plant stanols or sterols typically found in enriched foods. (C)

植物スタノールと糖尿病や脂質異常症の患者は、典型的な強化食品で見られる1.6~3g/日の植物スタノールor植物ステロールを摂取することで、総コレステロール及びLDLコレステロールを緩やかに下げる可能性がある・・・C


<補足説明>

植物ステロールとスタノールエステルは、食事性および胆汁性コレステロールの腸管吸収をブロックする。
御貴承の通り、植物ステロールとスタノールエステルを含む食品が、冠状動脈性心疾患(CHD)リスクを低下させることは科学的に証明されており、現在、アメリカ栄養士会のEvidence Analysis Library (EAL)は、脂質異常症患者には心臓保護食に一日あたり2~3gの植物ステロールとスタノールエステルを組み入れることを推奨している。
この勧告は糖尿病患者に特有のものではないものの、20件の臨床試験のレビューを基にしている。さらに、アメリカ栄養士会は植物スタノール/ステロール摂取で有害な影響を示さなかった28件の研究をレビューしている。特に糖尿病患者におけるフィトステロール/スタノール摂取による心保護効果に関しては非常に小規模のエビデンスはある。総コレステロール、LDLコレステロール、及び非HDLコレステロールに対する有益な効果が4件のRCTで観察されている。
これらの研究では一日あたり1.6〜3gのフィトステロールまたはスタノールが用いられ、介入は3~12週間続いた。これら研究の二つは1型糖尿病患者であり、1つで既にスタチン治療を受けていた人たちにコレステロール低下という付加的な利点が認められた。さらに、2件のRCTが、非糖尿病および2型糖尿病患者を被験者として植物ステロール摂取(1.8g/日)の有効性を比較している。
いずれの研究も両群の脂質プロファイルに有意差は認められず、この治療の有効性は高コレステロール血症を有する非糖尿病および糖尿病患者についても同様であることを示唆している。
現在では、スプレッド、乳製品、穀物、パン製品、ヨーグルトなどの植物ステロールを含む様々の食品や飲料が入手可能になっている。これらの製品はカロリーがかなり高いことから、患者は摂取するに際してはカロリー収支を保って体重増加を避けるために、相当食品に置き換えるべきである。