第845回 Sugarsの適正摂取量・・・Part2


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WHOが言っているstrongな科学的エビデンスとはどういうものなのか気になるので調べてみました。Sugarsと肥満に関する研究論文は次の3件で、その内2件はハーバード大学公衆衛生大学院/ハーバード大学医学部および附属病院のBrigham and Women's Hospitalによるものです。もう1件は米国Yale 大学によるものです。
いずれも結論として、sugar入り飲料の多飲は体重増加や肥満と相関することが報告されています。

因みに、いつものことながら、WHOの新しい勧告を引用して “肥満の元凶は糖質でエネルギー収支バランスをも超越する” と針小棒大に語る人たちがきっと現れるでしょうから、予め否定しておきます・・・これら研究論文を以てsugar入り飲料と肥満との独立的な因果関係を立証するには不十分です。。



それでは3つの研究論文について簡単に説明します。

一つ目の論文は1966~2005年5月にMEDLINEで公開されたsugar入り飲料と体重増加リスクの関係についての研究です。

アブストラクト:
sugar入り飲料、その中で特に炭酸飲料の摂取は、添加糖類が多く含まれていること、満腹感がなかなか得にくい事こと、1日に必要なエネルギー量より多量摂取してしまうと云った理由から、過体重や肥満の蔓延への大きな要因のひとつではないかと考えられている。しかし、sugar入り飲料と体重増加との間に関連があるのかどうかは明らかになっていない。そこで、オンラインデータベースMEDLINEに1966年~2005年5月に掲載されたsugar入り飲料と肥満リスクの関係についての研究を検索し、横断研究15件/前向きコホート研究10件/実証研究5件を選出し調査した。大規模の横断研究と追跡期間が長期のコホート研究は、子供および成人ともにsugar入り飲料の摂取量が増えると体重増加および肥満と正相関することを示している。
成人を対象としたsugar入り飲料についての短期研究でも、正のエネルギー収支バランスとひいては肥満につながることが報告されてはいるが、研究数そのものが少ない。
子供を対象とした学校ベースの1年間の介入試験、及び成人を対象とした最近の25週間の無作為化比較試験では、sugar入り飲料と過体重/肥満が相関することが示されている。


引用文献:
American Journal of Clinical Nutrition
2006 Aug 84(2):274-88
Harvard School of Public Health
Malik VS1, Schulze MB, Hu FB.
Intake of sugar-sweetened beverages and weight gain: a systematic review.



二つ目の論文には “In a meta-analysis of 88 studies・・・We found clear associations of soft drink intake with increased energy intake and body weight”と書かれています。
和訳すると、「88件の研究をメタ解析した結果、ソフトドリンクがエネルギー摂取量を高め体重の増加と明らかに関連することが分かった」と述べられています。

引用文献:
American Journal of Public Health
2007 Oct; 10(4):120
Yale University
Effects of soft drink consumption on nutrition and health: a systematic review and meta-analysis.



三つ目の論文には数値が詳しく記載されています。統計学的に有意な数値であっても実際的にはインパクトはないのでないかという疑問も出てきますが、ここではアブストラクトを和訳するだけに止めておきます。因みに、ここでも糖質がエネルギー収支バランスを超越するとは書かれていません。

2013年3月までのPubMed、EMBASE、及び Cochraneのデータを検索し、sugar入り飲料と体重の関係を評価した前向きコホート研究/無作為化比較試験(RCT)のメタ解析を行った。

文献記事の内訳は、
子供に関する文献20件(total25,745名を対象としたコホート研究15件、total2,772名を対象とした無作為化対照試験5件)
成人に関する文献12件(total174,252名を対象としたコホート研究7件、total292名を対象とした無作為化対照試験5件)

主要評価項目は、
子供に関する前向きコホート研究では、各研究期間中にsugar入り飲料の摂取を1サービング12oz(360ml)/day増加した場合のBMI変化、及び子供に関する無作為化対照試験では、介入群と対照群のBMI平均差
成人に関する前向きコホート研究では、1年間でsugar入り飲料の摂取を1サービング12oz(360ml)/day増加した場合の体重の変化、及び成人に関する無作為化対照試験では、ベースラインからフォローアップ終了までの介入群と対照群の体重の平均差

結果は、
子供に関する研究
sugar入り飲料の摂取が1サービング12oz/day増量する毎に、BMIは0.07増加した(95%CI 0.01,0.12;変量効果モデル)
1年間ではBMIは0.06 (95%CI 0.02,0.10;変量効果モデル)増加した。
無作為化対照試験に関しては、変量効果モデルでsugar入り飲料の摂取を減らしてもBMIへの影響は認められなかったが(加重平均差-0.17;95%CI -0.39,0.05)、固定効果モデルではBMIは有意に減少した(-0.12;95%CI -0.22,-0.02)

成人に関する研究
sugar入り飲料の摂取を1日当たり1サービング12oz/day増やす毎に、体重は1年間で0.22 kg (95%CI 0.09,0.34;変量効果モデル)増加した。
無作為化対照試験では、対照群とsugar入り飲料の摂取を増やした介入群との間で有意な体重差が認められた(加重平均差0.85 kg;95%CI 0.5,1.2)

結論として
先行研究の前向きコホート並びにRCT(無作為化対照試験)をシステマティックレビュー/メタ解析した結果、Sugar入り飲料は子供および成人の体重増加を促すことが分かったと述べています

引用文献:
American Journal of Clinical Nutrition
2013 Aug21
Brigham and Women's Hospital & Harvard Medical School
Malik VS1, Pan A, Willett WC, Hu FB.
Sugar-sweetened beverages and weight gain in children and adults: a systematic review and meta-analysis


最後に、
これら研究論文が示すようにsugar(遊離糖)と肥満が関連することは良く分かりました。しかし、これらの独立的な因果関係と実態的有意性を立証するには、更なる研究が必要ではないかと思料します。
統計学/科学では “Correlation does not imply causation” という言葉が使われます。つまり、“相関関係は因果関係を含意しない”と云う意味で、相関関係があるだけでは因果関係があるとは断定できず、因果関係の前提に過ぎません。



註:2015年4月22付けでアップデートし、一つ目の論文内容の和訳を追記しました。