第852回 カロリー欠損 vs 筋肉カタボリズム


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Q:
ボディビルには筋量アップ(オフシーズン/増量期)と過剰に付いた脂肪を剥ぎ落す(減量期)という二つのフェーズがあることは御貴承の通りです。余分な脂肪を取り除くためにはカロリー欠損レベルをlow、medium、highにするやり方がありますが、今回の質問の主旨は「減量期に筋量を維持するのはどのやり方がベストなのか?」ということです。例えば、増量期に20%になった体脂肪を10%まで落とすに際して、欠損量を500kcal/日にしてゆっくり落とすか、或いは、もっと積極的に1000kcalにするケースでは、結果に違いが生じるのか教えて頂きたい。

A:
承知しました。それでは先ず、食事管理で減量すると筋肉減少は不可避であるという大前提についてですが、このことは長い間に亘って事実として世に受け入れられ、正直言って私自身も繰り返してそのように説明してきました。しかし、本当は正しくはありません。
初期のダイエット実践の多くは、その大半は薬物の力を借りた80年代に由来するものですが、筋量の減少を容認していました。しかし、正しく行えばそのようなことは起こらないのです。

正しい事とは少なくとも次の3つのことを指します。
1.脂肪減少のための適切なウェイトトレーニング
2.十分なタンパク質
3.Refeed(再給餌)/ダイエットブレーク

例えば、私の著書Ultimate Diet 2.0では、約4日間はカロリー欠損を非常に大きく/3日間は高カロリーとして、これらを交互にやることを紹介していますが、この方法を実践した人は筋量アップしながら非常にleanになりました。
亦、Rapid Fat Loss Handbookでは、カロリー欠損は非常に大きいですが、プロテイン摂取量を多くし(up to 2 g/lb for leaner individuals)、適切な高強度ウェイトトレーニングを義務付けているので、大半の人で筋肉の減少は最少に抑えられています。

初期の段階での問題は、薬物使用者が行っていたことをダイエッターが試みたことでした。
高強度ウェイトトレーニングを行わず高レップス/スショートレストを行い、それが原因で筋肉が減少したのです。彼らはプロテイン摂取量を低くしようとしていました。しかし、Eric Helmsが推奨するように体重1kgあたり2.3-3.1gは必要で、これは私が書いたProtein Book in 2007での推奨量と全く同じです。

ということで、質問の残りの部分に答えましょう。
仰る通り、初期の研究では、カロリー欠損を大きくするとLBMの減少が大きくなることを示唆していますが大きな問題があります。これらの研究の多くは1日の摂取量を320~400kcalとし、プロテインはその半分でした。

つまり、プロテインは肥満者でも体重1kg当り1.5g/日は必要なのですが、ここでもダイエッターは1日50g程度しか摂っておらず、これが筋量減少の原因なのです。彼らは勿論レジスタンストレーニングは行っていませんでした。繰り返しますが、プロテインを十分に摂っていなかったことで筋肉減少が起こったのです。

肥満の男性を被験者とした最近の研究では、超低カロリー食を3週間または低カロリー食を6週間割り当てたところ、トータルの脂肪減少は同じでした。因みに、プロテイン量は、肥満者の体重は107kgで本来ならば1日当たり約150g必要ですが、これら食事には 1日当たり50gしか含まれていませんでした。
低カロリー食では実際にダイエット期間の長さに関連してLBM減少がより大きかったが、脂肪の減少もより大きかったのです。

エリートアスリートを対象とした他の研究では、ゆっくりした減量または早期減量のいずれかを割り付け、ゆっくり群には1日当たり1900kal(カロリー欠損450kcal)、早期群には1700kcal(カロリー欠損800kcal)を割り当てた。プロテイン量は両群共に1.6g/kgで必要量には近いが依然として低い。因みに、早期の減量期間は半分だった。

ゆっくり減量群では筋肉が少し増えましたが、早期減量群はLBMが1ポンド減少しました。しかし、これは一種の誤解を招くものであり、実はアスリートが行ったのは初めての上半身のトレーニングで、ここでも筋量アップは初心者効果だったのです。早期減量群では体脂肪も少し減少しました。

しかし、私が言いたい大きなポイントとしては、正しいやり方で行えばLBMは減少しないということに加えて、早くやれば早く終わるということです。つまり、6週間に対して3週間で行えば、それだけより速く維持食または少し高カロリーの食事で現実的なトレーニングに戻ることが出来るということです。6週間のところを3週間で終えると、残りの3週間をより効率的なトレーニングに費やすことが出来、3週間で失った僅かな筋肉も残りの3週間でより多く取り戻せることが出来ということです。

総てのダイエッターに早期脂肪減少ダイエットを推奨している訳ではありませんが、タンパク質とトレーニングが十分であれば、LBMの減少は全体的に最少で抑えられることははっきりしています。脂肪減少期間を短くすることでLBM減少は大きくはなりません。従って、巷に流れる“短期で減量すると筋肉の減少は大きくなる”という古い考え方は間違いです。繰り返しますが、タンパク質を十分に摂取し、高強度筋トレを行い、有酸素運動に夢中にならない限り、脂肪減少期間を早めることによってLBM減少が大きくなるということはありません。逆に、カロリー制限に縛られない食事により速く戻れます。

参照記事
Body Recomposition
Size of Deficit and Muscle Catabolism:Q&A
By Mr Lyle McDonald

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