第867回 高塩分摂取は高脂肪食による体重増加を抑える!?


食品業界では、依存性のあるsugars・塩分・脂質の組み合わせに工夫を重ねて、消費者がOver-eating(過食)やHyper-eating(大食)、つまり “もっともっと食べたくなるhyperpalatable foods(超美味の食品)”を製造販売することを大命題としているという非難の声が高まっている中で、米国アイオワ大学から「高塩分摂取で高脂肪食による体重増加が抑えられる可能性がある」ことが示唆されました。つまり、塩分が消化を抑制し脂質の吸収が抑えられることで、体重増加を防止することが出来るらしい。ここでも“calorie is calorie”が否定されています。

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論文:
Scientific Reports
11 June 2015
Dietary Sodium Suppresses Digestive Efficiency via the Renin-Angiotensin System

論文タイトル
食事性ナトリウムはレニン-アンジオテンシン系を介して消化効率を抑制する


アブストラクト
脂質とナトリウムいずれも口当たりが良く、相乗的に摂食行動を促して肥満に結びつく。
この仮説に反して、脂質45%の高脂肪食を与えたC57BL / 6J実験マウスの体重増加は、塩分量を増やすことで抑制された。

塩分による体重増加の抑制効果は、摂食行動/身体活動/安静時代謝とは関係なく専ら消化効率の低減によるものでした。循環アンジオテンシンIIレベルを変えると高塩分の消化抑制効果は逆転しました。

AT1受容体阻害薬“ロサルタン”は、低ナトリウムを与えたマウスでは効果がなかったが、AT2受容体阻害薬PD-123319は消化率を抑制しました。
AT2受容器遺伝子欠損の近交系FVB / NCrlマウスでは標準食でも消化率の抑制が認められました。

これらのデータは、肥満の発症機序に於いて消化効率が重要であること、更にマウスの系統や食事含まれる多量栄養素の組成に関係なく、消化効率のコントロールに食事性ナトリウム(塩分)、レニン - アンジオテンシン系、及びAT2受容器が関っていることを示しています。これらの知見は、栄養吸収制御生理学をより深く理解する必要性を強調しており、エネルギーバランスの動物実験での消化効率のより均一な評価を促しています。

解説
研究者は次のように語っています。

研究者はマウスを通常食グループと塩分濃度0.25~4%の高脂肪食グループに分けた。最も体重が増加したのは塩分濃度が最も低い高脂肪食で、16週間で15g増加した。高脂肪/高塩分グループは標準食グループと同レベルで体重増加は低く約5gであった。

高塩分が体重増加を防止した理由を調査するために、研究チームはエネルギーバランスに影響する鍵となる4つの要因について検討した。エネルギーINの面では、全マウスは塩分濃度の違いに関わらず同カロリーの食事を摂っていたので、摂食行動の変化は除外した。次にエネルギーOUTの面では、安静時代謝量や身体活動量に群間差はみられなかった。対照的に、塩分濃度の違いにより消化効率に有意な影響が見られ、脂肪の吸収が変化した。

本研究が示唆しているポイントは塩分の多い食事が、突然よいものになったということではない。塩分の摂り過ぎは心血管疾患リスクの増加と関連していることには変わりなく、カロリーのない栄養素がエネルギーバランスと体重増加に計り知れない影響を有しているという点に注意を向けてもらいたい。

我々の研究結果は、「Not all calories are created equal、つまり、すべてのカロリーは等しく産生されるわけではない」、「食事効率orカロリー吸収には個人差で広い幅があり、これが太り方に関係しているのではないか」ということを示している。

参照記事:
Science Daily
High salt prevents weight gain in mice on a high-fat diet

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