第874回 さようなら低脂肪ダイエット!?


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米国人のための2015年版食事ガイドラインの策定に向けて、米国食事ガイドライン諮問委員会(DGAC)は米国保健福祉省(HHS)と米国農務省(USDA)宛てに、策定の基礎データとなるレポートを今年2月に答申しました。両省はこのレポートを参照した上で最終案を策定し、今年後半に正式発表する予定となっています。

扨て、2015年6月23日付け米国医師会ジャーナルJAMA “The 2015 US Dietary Guidelines・・・Lifting the Ban on Total Dietary Fat!” によると、米国食事ガイドライン諮問委員会の答申のなかで広く見逃されている大事なポイントがあるとして、米国タフツ大学フリードマンスクール学部長Dr Dariush Mozaffarianおよびハーバードメディカルスクール教授/ハーバード公衆衛生大学院教授/ボストン小児病院ダイレクターのDr David Ludwigは、諮問委員会がテクニカルレポートで脂質の総摂取量の制限を撤廃していることを挙げ、これは1980以降で初めての快挙であると拍手を送っています。
現行の食事ガイドラインでは脂質の摂取量を20~35%とするよう推奨していますが、これを裏付ける確たる科学的エビデンスはないとして、近く発表予定の“2015食事ガイドライン”では脂質の総摂取量の制限を必ず撤廃するよう、両省をはじめその他の政府機関にも呼びかけています。

Dr Mozaffarianは、「ナッツ、植物油、魚など健全な脂質を多く含む食品を多く食べると、特に心血管疾患の予防効果があることを現代のエビデンスが明確に示している」「脂質リッチな全乳やチーズなどはどちらとも言えないが、低脂肪デリミート/無脂肪サラダドレッシング/ベイクドポテトチップなど脂肪を多く含む食品は好ましくなく往々にして全脂肪食品より悪いことさえある」「脂質は量よりも質が大事である」と述べています。

NPR(National Public Radio)のAllison Aubrey女史は、脂質が大悪人とされた背景として、「1980年に最初の食事ガイドラインが出されたが、そこでは脂質とりわけ飽和脂肪酸に問題があるとして摂取を減らすよう指導しました。最近の科学的エビデンスが示すように、飽和脂肪酸はLDLコレステロール高めることから当時の推奨は間違いではありませんが、その結果として無脂肪食品のブームが引き金となり、高脂肪食からパンや白米など生成されたものや遊離糖を含む高炭水化物食へ移行してしまった」と説明しています。

米国砂糖協会の不満の意やトウモロコシ精製事業者協会の表明をも考慮に入れて、米国保健福祉省(HHS)と米国農務省(USDA)がどのような最終案を作り上げるのか注目したいと思います。

因みに、2015年6月9日付け Mayo Clinic proceedingsで、米国アラバマ大学やクイーンズランド大学は、「米国食事ガイドライン諮問委員会の答申の基盤となっているデータは欠陥だらけである。彼らが答申した科学的レポートは、過去24時間に飲食した すべての内容をインタビューで聞き出す24時間思い出し法や食物頻度票(FFQs)など主としてメモリベースの食事評価方法(M-BMs)によって調査したものである。M-BMsデータは、摂取/消費の実態を殆ど反映していないという数十年来の動かぬ証拠があるにもかかわらず、M-BMsの妥当性と価値を無批判的に信じることは、多額の研究資金の無駄遣いであるばかりでなく、肥満と栄養についての研究の科学的進歩への大きな妨げとなる」と酷評しています。

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