第907回 エネルギー収支バランスって何ですか?


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日本人の食事摂取基準2015年版(厚生労働省)に明記されているように、エネルギー収支バランスの定義は、“摂取量-消費量”です。その結果がBMIと体重の変化であり、エネルギー摂取量がエネルギー消費量を上回る状態が続けば体重が増加し、逆に、エネルギー消費量がエネルギー摂取量を上回る状態では体重が減少します。

もっと詳しく説明しましょう。
私たちが1日に消費するエネルギーは次の4つに大別されます。
基礎代謝量(Basal Metabolic Rate:BMR)
運動による熱産生効果(Thermic Effect of Exercise:TEE)
・非運動性活動熱発生 (Non-exercise activity thermogenesis:NEAT)
食事による熱産生効果(Thermic Effect of Food:TEF=DIT)

つまり、
1日に消費する総エネルギー(A)=基礎代謝量(BMR)+運動(TEE)+生活活動(NEAT)+食事誘導性体熱産生(DIT)となり、食事を構成する栄養素が炭水化物(糖質)、脂質、タンパク質いずれがメインであっても、

・総摂取カロリー>Aなら「太ります」
・総摂取カロリー=Aなら「不変です」
・総摂取カロリー<Aなら「痩せます」

図でもっと分かり易く説明しましょう。

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グリーン部分が食後フェーズ(アナボリック期)で、ブルー部分が吸収後フェーズ(カタボリック期)です。
食後フェーズでは、栄養素は消化管で消化吸収され血中に放出されます。このとき体内はアナボリック(同化)の状態で、栄養素は各組織に蓄積されます。
吸収後フェーズでは、食べたものは全て消化吸収されて消化管は空っぽの状態で、各組織に蓄積された栄養素が分解されエネルギーとして使われます。
一日を通して、私たちは食べる度に食後フェーズと吸収後フェーズの間で変化し、栄養素を組織に貯蔵したり引き出したりしています。
言うまでもありませんが、運動するとブルーの部分が更に増えます。

もうお分りになったと思いますが、夜遅く食べようが朝ごはんを抜こうが朝食前に走ろうが、夕食後の筋トレであろうが、『1日24時間を通してトータルでアナボリック期(グリーン部分)>カタボリック期(ブルー部分)なら太り、グリーン部分<ブルー部分にすると痩せる』ということです。

日常の食事を構成する栄養素の中で炭水化物の比率がもっとも高く、そういう意味では炭水化物を減らすことはダイエットでは寧ろ自然体と言えるでしょう。
しかし、一部の医師が推奨する糖質制限ダイエットは、まるで営利を主目的とする悪徳ダイエット業者の如く、「糖質制限ダイエットは最強である」、「お腹いっぱい食べて楽々痩せる」「お酒を呑み、お肉をいくら食べても太らない」、「糖質は全て毒物である」とダイエット本やTVで針小棒大に喧伝されています。「とにかく炭水化物を食べさえしなければ、好きなものをいくら食べても痩せる」という手軽な印象を前面に押し出して、スリムになることに憧れている多くの人たちの関心を引いています。しかし、上述の通り糖質制限ダイエットも数あるカロリー制限ダイエットのバリエーションの一つに過ぎません。

人体は千差万別であり、ダイエットに “one size fits all” という考え方は通用しません。糖尿病治療、メタボリックシンドロームの予防や健康促進、美容(スリム)、バルクアップ(lean)、運動パフォーマンスの向上など目的別に応じて、年齢、性別、体組成値、食品のアベイラビリティ、遺伝子、健康食品への知識、嗜好、文化、知的度、宗教、健康志向、収入、時間的制約、地域性、家庭の状況etc各人の個別性を考慮してダイエットプログラムを組むことが肝要です。