第897回 中学生に運動を無理強いすると期待に反した結果となる


ミドルスクールの生徒たちの身体活動と自己決定理論との関連性について調べた結果、生徒たちは運動をするという選択が自発的なものでないと感じた時、或いは大人からもっと運動しなさいとプレッシャーを受けると、逆にやろうとしなくなる。しかし、運動が自己決定によるものだと感じている生徒は、自分自身を運動する人間だと認識し、その結果もっと運動するになることが、米国ジョージア大学の研究チームから報告された。

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Medicine & Science in Sports & Exercise:
September 2015-Volume47-Issue9-p1913–1921
Motivation and Behavioral Regulation of Physical Activity in Middle School Students

目的:
内発的動機付けと行動の自己調整が中学生の身体活動に関連しているのかどうかを検討することである。

方法:
構造方程式モデリングを用いて自己決定理論の横断的/縦断的テストを行った。

補足説明:

構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling/SEM)は共分散構造分析(covariance structural analysis)とも呼ばれ、構成概念や観測変数の性質を調べるために集めた多くの観測変数を同時に分析するための統計的方法です。

自己決定理論(Self-Determination Theory)では、“無理やりやらされるよりも楽しいほど続けられる”、つまり、動機づけ(モチベーション)は、“自己決定的なほど高く、非自己決定的なほど低い”とされており、量的ではなく質的な違いで6段階に分けられています。モチベーションは内発的動機づけと外発的動機づけ(統合的調整)が最も高い状態とされています。

非動機づけ(amotivation)
勉強であれスポーツであれ何らかの行為を、思いつきや命令などが動機(motive)となって単発的にやることはあっても、やり続けようとはしない状態です。

外発的動機づけ(extrinsic motivation)
報酬や名誉など楽しさ以外の理由で、ある行為をやり続けるようになった状態を指します。やり続ける理由がどの程度「自己決定的」かによって4段階に分かれます。

外的調整(external regulation)
やれば金銭などの報酬が得られる、やらなければ懲罰が加えられるといった理由で、やり続けている状態です。

取り入れ的調整(introjected regulation)
やれば誇らしく、やらなければ恥ずかしいという価値観を受け入れたため、やり続けている状態です。

同一化的調整(identified regulation)
やれば自分の目標や成長に役立つ、と納得して、やり続けている状態です。

統合的調整(integrated regulation)
やるのが自然なこととなって、やるのが楽しくすらなって、やり続けている状態です。

内発的動機づけ(intrinsic motivation)

好奇心などのように、行動すること又は経験することそのものによって満足がもたらされるような動機を意味し、人が生まれながらに持つ動機とされている。つまり、外的報酬によらず活動それ自体が楽しいから、喜んでやり続けている状態です。

結果:
理論通りだった。加速度計で測定した結果を見ると、中高強度の身体活動は外発的動機づけ/統合的調整(integrated regulation)と内発的動機づけ(intrinsic motivation)に最も強く関連していた。生物学的な成熟度とは無関係であった。
この評価における構成概念妥当性/等価性は6学年と7学年、男女、非ヒスパニック系黒人と白人の子供、過体重及び標準体重の生徒間で縦断的に確認された。

補足説明:
米国での学年の数え方は1学年~12学年までとされ、日本のように中学・高校になっても1年生から数えなおさない。Middle schoolは初等教育と中等教育の中間で、学年は地域により異なるが、本研究では5学年は初等教育、6学年及び7学年はいずれも中等教育を指す。


結論:
子どもは小さいときに、自発的により良く運動を行う傾向があるが、年齢とともに活動レベルは低下するといわれており、本研究では他律的動機付け(外的調整および取り入れ的調整)よりも自律的動機付け(同一化的調整、統合的調整、内発的動機づけ)が7学年の身体活動に一層強く関連していることが分かった。また、7学年では取り入れ的調整の変化と身体活動の変化に関連性があり、持続的な活動と身体的/精神的/社会的に良好な状態にあることには有害とされる内在的な社会的抑圧が動機づけにもなっていることを暗示している。
これらの結果は、調整や自律的モチベーションベーションが如何に身体活動を発展的にするか、更にそれが身体活動を増やすように設計された介入に応答するかどうかを明確にするには、小児期および青年期に関する長期的な前向き研究を行うことを奨励している。

解説記事(抜粋)
Science Daily
Sept2 2015
'Guilting' teens into exercise won't increase activity

本論文の主筆者である米国ジョージア大学Rod Dishman教授は次のように語っています。

5学年(初等教育)と6学年(中等教育)の間では身体活動レベルが50%も減少しており、この年齢は子どもの人生の重要なジャンクションと言えよう。

本研究の結果は子供たち抱いている信念が身体活動にレベルに関係していることを裏付けており、身体活動を活発にすることの価値を実感し楽しむような状況に子供達を導いていく方法を検討している。

音楽や芸術に惹かれる子どもたちがいるのと同様に、身体活動に興味を示す子どもたちがいる。身体活動に対して興味を示していない子どもたちに興味を持たせることも必要だ。
両親や教師にやってもらいたくないのは、運動しないことに罪悪感を持つことだ。何故なら、子供たちはもっと身体活動をしなくちゃならないと義務感や負担感を持つと、全体的に身体活動から疎遠になっていく。

参考記事
モチベーションが高い、とは何か卓上RPGを考える

マイコメント

・良い意味でも反面教師としても、子供は親を見て育つことを忘れちゃいけない。

・ときどきヤフー知恵袋を見ることがあるが、 “誹謗中傷や無理だと言う回答は要りません”という中学生からの無理なダイエットについての質問を見かける。生意気だなと思ったりもしたが、この研究内容を見ると頷ける。

・それから、運動は楽しいからやるということがベストだと研究者は結語しているが、然らば、いまどきの中学生は色気も旺盛の様だし、 “第5回の効果絶大のダイエットコース” の手法を応用するのも一計かも知れない。レベルの低いコメントで失敬!