第899回 2型糖尿病患者が朝食を抜くと血糖スパイクの引き金となる


すい臓のβ細胞は休ませすぎると役割を忘れる!
“お昼まで空腹の状態でいると、昼食/夕食後に血糖スパイクをもたらし、インスリン反応が損なわれる”ことが、イスラエル・テルアビブ大学/ヘブライ大学、ベネズエラ・セントラル大学、スウェーデン・ルンド大学による共同研究チームから報告されました。

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Diabetes Care
Jul28 2015
Fasting Until Noon Triggers Increased Postprandial Hyperglycemia and Impaired Insulin Response after Lunch and Dinner in Individuals with Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial

目的:
2型糖尿病患者が朝食をスキップすると、HbA1cと食後血糖値が高まることが分かっています。本研究では、朝食を抜いた後で等カロリー(700kcal)の昼食/夕食を摂ると、血糖値にどのような影響をもたらすかについて検討しました。

デザイン/方法:
無作為化臨床試験、クロスオーバーデザイン
22名の糖尿病患者(病歴 8.4 ± 0.7年、年齢 56.9 ± 1.0歳、BMI 28.2 ± 0.6 kg/m2、HbA1c 7.7 ± 0.1%;61 ± 0.8 mmol/mol)を被験者として、無作為に二日の試験日に割り付けた。
1日は朝食/昼食/夕食いずれもアリ(YesB)
もう1日は朝食ナシ、昼食/夕食アリ(NoB)
食後の血漿グルコース、インスリン、C-ペプチド、遊離脂肪酸(FFA)、グルカゴン、およびインタクトグルカゴン様ペプチド-1(iGLP-1)を評価した。

結果:
YesB と比較して、
NoBの昼食後の曲線下面積0~180分は、血漿グルコース36.8%高、遊離脂肪酸41.1%高、グルカゴン14.8%高だったが、インスリン及びiGLP-1はそれぞれ17%低および19%低だった。(P < 0.0001)
NoBの夕食後の曲線下面積0~180分は、血漿グルコース26.6%高、遊離脂肪酸29.6%高、グルカゴン11.5%高だったが、インスリン及びiGLP-1はそれぞれ7.9%低および16.5%低だった。(P < 0.0001)
更に、NoBのインスリンピークは、YesB と比較して昼食/夕食後30分遅れた。

結論:
朝食をスキップすると、昼食/夕食後の高血糖が昂進し、iGLP-1分泌の低下とインスリン反応の悪化をもたらす。
本研究では、朝食が終日のグルコース調節に与える影響を示している。朝食を摂ることは2型糖尿病における食後高血糖を低下させる成功戦略になるであろう。

<補足説明>
本論文の主筆者であるテルアビブ大学のJakubowicz教授はScience Daily誌で次のように語っています(抜粋):

2日間のコースで、朝食はミルク、ツナ、パン、チョコレートバーとし、昼食/夕食は同一カロリー(700kcal)でバランスの摂れた食事とした。唯一の違いは、1日目が朝食アリで2日目は昼食まで絶食していたという点である。

我々は朝食を抜くのは健康的ではないことを理論化したが、糖代謝の顕著な劣化が観察されたことは驚きであった。朝食を抜いた日の血糖ピークは異常で、昼食後では268 mg/dL、夕食後は298 mg/dLであった。他方、朝食を摂ったときの昼食および夕食後の血糖値は、それぞれ192mg/dL、215 mg/dLであった。

インスリンを産生する膵臓のβ細胞は、夕食と翌日の昼食の間が長いため「メモリ」を失う。つまり、β細胞は本来有している重要な役割を忘れてしまう。その結果、β細胞が回復するために余計に時間がかかり、インスリン反応は低減/遅延し、延いては終日の血糖レベルが過度に高まることになる。
もう一つの要因は、昼食まで空腹が続くと血中の遊離脂肪酸が高まり、インスリンが効果的に血糖値を下げることが出来ない状態になっているからである。

本研究の結果を踏まえると、糖尿病患者は朝食を抜かないことを強く推奨する。何故なら、β細胞機能に大きなダメージを与え、昼食や夕食で澱粉や遊離糖など糖質量を減らしても高血糖レベルを抑えられないからである。

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マイコメント:
走り込みによって有酸素能は向上し、使わない筋肉は委縮すると云ったように、人体は生理学的に順応する特性を有しています。「炭水化物をカットすることで血糖値の上昇は抑えられますが、逆に耐糖能が退化するのではないか?」という疑問を前々から抱いていましたが、上記の研究者の説明は参考の一助になりました。
いずれにしても、本研究は平均年齢50歳後半の2型糖尿病患者を対象としたものですから、健常な人たちの一般的なダイエットとごっちゃにして捉えるのは賢明ではないでしょう。

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