第901回 朝ごはんを食べなければ太るって話は本当ですか?


ダイエット関連の分野では、myth(つくり話)と云われる情報が散乱しており、「朝ごはんを食べると痩せる」とか、「朝ごはんを抜くと太る」と云った類の話もその中のひとつです。

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2013年9月4日付け American Journal of Clinical Nutritionで、アラバマ大学バーミンガム校David Allison et al.は、「朝食抜きは太る原因である」という考え方を主張している研究論文92件のメタ解析を行いましたが、朝食と肥満の因果関係は認められなかったことを報告しています。「証拠力を欠く研究」や「言葉の不適切な使い方や偏った解釈による研究報告」が、科学的エビデンスを飛び越えて読者の信奉に影響を与えてしまっていると述べています。


次いで、2014年6月4日付け American Journal of Clinical Nutritionで、同研究チームは20〜65歳の健康な過体重および肥満成人(BMI:25~40)309名を被験者とする16週間の無作為化対照試験で、朝食アリ群と朝食ナシ群の体重変化を比較しましたが、両群に有意な体重差は認められなかったことを報告しています。


2014年6月5日付けでAmerican Journal of Clinical Nutritionに掲載された英国Bath大学James Betts et al.による6週間のランダム化比較試験RCTでは、21~60歳のリーンな成人男女を朝食抜き群と朝食あり群に割り付け、朝食がエネルギーバランスと健康に及ぼす因果的役割を調べました。その結果、身体活動量が高まり全体の食事エネルギー摂取量が増大しましたが、安静時の代謝変化は認められませんでした。BMI/脂肪量については、ベースラインおよび追跡期間いずれにおいても群間差は認められませんでした。心臓血管の健康指標は朝食あり/朝食抜きのいずれにも影響されなかったが、朝食ありは朝食抜きより午後と夕方の血糖が安定したことが報告されています。


科学的エビデンスのヒエラルキーとして、系統的レビュー/メタ解析が最上位に位置し、次いで無作為化対照試験(RCT)が続きます。故に、David Allison et al. およびJames Betts et al.によるこれら3件の研究論文は非常に質が高いと言えます。


上記2つのRCTにおける被験者は20〜65歳で、試験期間は6~16週間の短期となっています。
"teenager"とは数字に"teen"のつく年齢13歳(thirteen)から19歳(nineteen)までということで、12歳以下は”child(お子ちゃま)“です。
子供とティーンエイジャーを対象とした研究と長期の体重減少/維持について研究が2005年に発表されています。

前者はJordan Metzl et al.による2005年5月に発表された研究で、朝食と栄養適正(9件)、体重(16件)、学業成績(22件)との関連を調べたトータル47件の研究結果を纏めた結果、各研究群における食事の質にばらつきはあるが、朝食を摂っていると報告した被験者は、朝食抜きに比較して過体重が少なくなる傾向があること、更にメモリに関する認知機能、テストの成績、学校への出席が改善することが示唆されています。

もう一つの長期の研究は、Rena R Wing & Suzanne Phelanによって2005年7月に報告された研究で、長期の減量および維持のための戦略として、ハイレベルな身体活動(~1 h/d)、低カロリー食、低脂肪食などに加えて、規則的に朝食を摂ることを挙げられています。

しかし、これら2005年の研究はいずれも傾向を示すものであり、朝食と肥満の因果関係を明らかにするものではありません。


因みに、“第402回の肥満に関するウソとホント”で説明したように、「推定」とは、科学的に正しいとも間違っているとも証明されていないが、多くの人に受け入れられている信念を指しますが、“朝食を規則正しく食べることは、肥満の予防に役立つ”という項目が、6つの推定の一つとして掲載され、そして、“2つのランダム化試験により減量効果は確認されず”とされています。


「太る」「痩せる」はエネルギー収支のバランスによって決まります。つまり、エネルギー摂取量がエネルギー消費量を上回ると太り、エネルギー消費量がエネルギー摂取量を上回ると瘠せにつながるのです・・・日本人の食事摂取基準(2015年版)


まとめ
朝ごはんを抜くと太るという因果関係を実証する科学的エビデンスはありません。


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それでは、
朝食はもっぱら1日の中で最も重要な食事だと云われていますが、朝食を摂る/摂らないは私たちにとって大事なことではないということでしょうか?


いいえ!
朝食を抜くと太る、或は、朝食を摂ると痩せるということは実証されていませんが、ハーバード公衆衛生大学院の研究チームから、統計学的な相関関係ではありますが、朝食を抜くと2型糖尿病や冠動脈疾患のリスクが高まることが報告されています。

2013年6月12日、ハーバード公衆衛生大学院のRania A Mekary女史(research associate)ら研究チームから、46,289名を対象とした約6年間の大規模調査“US women in the Nurses’ Health Study(看護師健康追跡調査)コホート研究”で、朝食を摂らない女性は糖尿病リスクが20%高まったことが報告されています・・・第501回 不規則な食事 vs 糖尿病リスク

2013年7月22日、同大学院栄養部門のLeah E. Cahill女史(research fellow)からは、第「冠動脈疾患(CHD)の発症リスクと食事の回数との有意な関連性は認められなかったが、朝食抜きの男性は、朝食を欠かさない男性に比べてCHDの発症リスクが27%も高い傾向にあることが、米国の男性医療従事者対象のHealth Professionals Follow-up Study(HPFS)で明らかになった」との研究報告がありました・・・505回 朝食抜き vs 冠動脈疾患リスク


しかし、上述した英国Bath大学James Betts et al.によるランダム化比較試験(RCT)では、リーンな成人の場合では、心臓血管の健康指標は朝食あり/朝食抜きのいずれにも影響されなかったことが報告されています。


朝食が一日を通しての心身行動に及ぼす影響や運動パフォーマンスへの影響はどうでしょうか?


上述したように、子供やティーンエイジャーではメモリに関する認知機能、テストの成績、学校への出席にも影響します。

2013年11月27日付けAmerican Journal of Clinical Nutrition by Kirsten Corder et al.:
14.5 ± 0.5歳の860名の男女を朝食抜き群と朝食あり群に割り付け、4日間の身体活動レベルを調べました。週末休みに朝食を食べることと身体活動量の増加には正の相関が認められました。朝食群とスキップ群で身体活動時間の最大値が異なっていました。若者が週末休みに朝食を食べると身体活動の増加につながる可能性があること示す価値ある追加調査です。


最後に、Jul28 2015付け Diabetes Careに、2型糖尿病患者が朝食を抜いて“お昼まで空腹の状態でいると、昼食/夕食後に血糖スパイクをもたらし、インスリン反応が損なわれる”ことが、イスラエル・テルアビブ大学ら共同研究チームから報告されています。


締め括りますと、
朝ごはんを食べることが、多数の人たちにとって有益であろうことに異論はありませんが、さりとて誰にも絶対不可欠のことではありません。十人十色と言いましょうか、基本的には年齢、性別、糖尿病患者、健常者、メタボリックシンドロームの予防、健康促進、運動パフォーマンスの向上、食事の質、健康志向、社会的制約、地域性、家庭の状況etc各人の個別性によって異なってくるようです。しかし、掲題の体重の増減という観点では、朝食ありと朝食抜きの違いは無作為化対照試験で認められてはいません。