第912回 持久力トレーニング vs VO2max(最大酸素摂取量)


心臓から運ばれていった酸素の量(心拍出量×動脈血中酸素)から、心臓へ還ってきた酸素の量(心拍出量×混合静脈血中酸素)を引いたものが、全身で消費された酸素の量である。これが Fick の原理で、式で表すと酸素摂取量(VO2)=心拍出量(Q)×動静脈酸素較差(a-VO2 diff)となります。
しかし、今般スイスZurich大学Montero et alから、『最大酸素摂取量は最大心拍出量とは正相関するが、動静脈血酸素較差とは関連しない』ことが報告されました

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Medicine & Science in Sports & Exercise:
October 2015 - Volume 47 - Issue 10 - p 2024–2033
Endurance Training and V˙O2max: Role of Maximal Cardiac Output and Oxygen Extraction

論文タイトル:
持久力トレーニングとVO2max:最大心拍出量と酸素抽出の役割

目的:
持久力トレーニングは一般的に最大酸素消費量(VO2max)を高めるが、それは最大心拍出量(Qmax)のみ、或いは、動静脈血酸素較差(a-VO2diff)と併せて関連しているのかどうかは依然として明らかになっていない。本研究では健康な若者を被験者とした研究群の系統的レビューを行い、持久力トレーニングが最大運動時のVO2max/Qmax/a-VO2diffに及ぼす影響を決定することを目的とした。

FYR:
運動中に体内に摂取される酸素の単位時間当たりの最大値をVO2max(最大酸素摂取量)と言います。
Maximal Cardiac Output(Qmax)とは最大心拍出量を指し、1分間に心臓が拍出する血液量の最大値です。
Oxygen Extraction(酸素抽出)は単位体積の血液が全身に供給する酸素量のことです。
aVO2diff(動静脈酸素較)とは動脈血に含まれる酸素量と静脈血に含まれる酸素量の差のことです。


方法:
“40歳未満の健康な成人を対象として、持久力トレーニング≧3週間が最大運動時のVO2max/Qmax/a-VO2diffに及ぼす影響を評価した論文”に関し、MEDLINE/Scopus/Web of Scienceから2014年9月までの全ての論文を検索して系統的レビューを実施した。
トレーニング後/トレーニング前の測定間の最大運動時VO2max/Qmax/a-VO2diffの標準化した平均値の差(SMD)を決定するためにメタ解析を行った。
サブグループとメタ回帰分析を用いて、標準化平均差及び潜在的緩和因子間の関連を評価した。

結果:
最終的に対象となったのは13件の研究で、トレーニングしていないか適度にトレーニングしている平均年齢22~28歳の健康な若者トータル130名を対象としている。
持久力トレーニングの期間は5~12.9週間であった。
データプール後、最大運動時のVO2max (SMD = 0.75, P < 0.0001)とQmax (SMD = 0.64, P < 0.0001)は持久力トレーニング後に高まったが、 a-VO2diff (SMD = 0.21, P = 0.23)は高まらなかった。
有意な異質性は検出されなかった。
メタ回帰では、Qmaxの標準化平均差はVO2max (B = 0.91, P = 0.007)の標準化平均差と正相関した。最大運動時のa-VO2diffの標準化平均差は VO2maxの標準化平均差(B = 0.20, P = 0.40)とは関連しなかった。

結論:
トレーニング歴がない、或いは適度にトレーニングを行っている健康な若者を被験者とした研究の数は少ないが、5~13週間の持久力トレーニング後のVO2maxの向上はQmaxの増加と関連し、a-VO2diffとは関連しないことが示されている。

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