第913回 糖質制限食vs 高炭水化物食(2型糖尿病)


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American Journal of Clinical Nutrition
First published July 29, 2015,
Comparison of low- and high-carbohydrate diets for type 2 diabetes management: a randomized trial

論文タイトル:
2型糖尿病管理のための低/高炭水化物ダイエットの比較:無作為化試験

背景:
十分に管理された研究で、超低炭水化物ダイエットが2型糖尿病に及ぼす効果を総合的に検討したものは殆どない。

目的:
2型糖尿病患者を対象として、「超低炭水化物/高不飽和脂肪酸/低飽和脂肪酸(LC)食」と「高炭水化物食/低飽和脂肪酸 (HC) 食」が52週間後に血糖コントロールと心血管疾患リスク要因に及ぼす効果を比較した。

デザイン:
ランダム化比較試験
被験者は肥満の2型糖尿病患者(成人)155名
・平均年齢 58 ± 7歳
・BMI 34.6 ± 4.3
・HbA1c 7.3 ± 1.1%
・糖尿病歴 8 ± 6年
かれらを無作為に“低カロリーのLC食” or “LC群と等カロリーのHC食”のいずれかに割り付けた。
カロリー設定は両群共に低カロリー(カロリー制限30%max/500~1000kcal減)とした。

LC食群
炭水化物14%(50g未満/day)
タンパク質28%
脂質58%(飽和脂肪酸10%未満)

HC食群
炭水化物53%
タンパク質17%
脂質30%(飽和脂肪酸10%以上)

両群共に有酸素運動と筋トレを60分/週3回行った。

結果については、血糖コントロールはHbA1cと空腹時血糖値で評価し、血糖変動は48時間連続グルコースモニタリング/糖尿病薬/体重/血圧及び脂質で評価した(ベースライン、24週間後、52週間後)

結果:
・両群の完遂率は略同じであった。
LC群:71%
HC群:65%

・減量(95% CI)
LC群:−7.1kg(−11.7 ~ −7.9kg)
HC群:−10.1 kg (−12.0 ~ −8.2 kg)

・血圧
LC群:−7.1 (−10.6 ~ −3.7)/−6.2 (−8.2 ~ −4.1) mm Hg
HC群:−5.8 (−9.4 ~ −2.2)/−6.4 (−8.4 ~ −4.3) mm Hg

・HbA1c
LC群:−1.0% (−1.2% ~ −0.7%)
HC群:−1.0% (−1.3% ~ −0.8%)

・空腹時血糖値
LC群:−0.7 mmol/L (−1.3 ~ −0.1 mmol/L)
HC群:−1.5 mmol/L (−2.1 ~ −0.8 mmol/L)

・LDL(悪玉)コレステロール
LC群:−0.1 mmol/L (−0.3 ~ 0.1 mmol/L)
HC群:−0.2 mmol/L (−0.4 ~ 0.03 mmol/L)

P-diet effect ≥ 0.10

・糖尿病薬物治療スコアの減少平均は、HC群に比べてLC群の方が大きかった。
LC群:−0.5 a.u.(−0.7 ~ −0.4任意単位)
HC群:−0.2 a.u. (−0.4 ~ −0.06 任意単位)
P = 0.02

・CONGA1で評価した血糖変動
LC群:−0.5 mmol/L (−0.6 ~ −0.3 mmol/L)
HC群:−0.05 mmol/L (−0.2 ~ −0.1 mmol/L)
P = 0.003

・中性脂肪
LC群:−0.4 mmol/L (−0.5 ~ −0.2 mmol/L)
HC群:−0.01 mmol/L (−0.2 ~ 0.2 mmol/L)
P = 0.001

・HDL(善玉)コレステロール
LC群:0.1 mmol/L (0.1 ~ 0.2 mmol/L)
HC群:0.06 mmol/L (−0.01 ~ 0.1 mmol/L)
P = 0.002

結論:
両群共に体重は著しく減少しHbA1cと空腹時血糖値も下がった。
LC群では脂質プロファイル、血中血糖変動、糖尿病メディケーションの点での改善がより顕著であり、これは2型糖尿病管理を最適化するための効果的な戦略であることを示唆している。

マイコメント
低炭水化物ダイエットについては、少なくとも2年或いは2年を超える長期的な効果、心血管疾患リスク要因についての安全性、耐糖能に問題ある肥満者の2型糖尿病に対する予防効果、また低高強度の身体活動のプラス効果など検証することが必要でしょう。本件を含めて1年ベースの研究がぼちぼち登場してきました。

因みに、低炭水化物食に対する米国糖尿病学会の現行の考え方の骨子は次の通りです:

全ての糖尿病患者への三大栄養素(炭水化物/タンパク質/脂質)の特定の理想的なカロリー比率はない。それ故、栄養比率は現行の食事パターン、嗜好、代謝目標の個別的評価に基づいて決定されるべきである。

糖尿病患者にとって、どの食事パターンを選ぼうとも重要なのは総エネルギー摂取量である。

低炭水化物食に焦点を当てたレビュー研究では、低炭水化物食の定義が一貫していない。超低炭水化物(21–70g/日)から中度低炭水化物(摂取カロリーの30~40%)とバラつきがあり、糖尿病患者への等カロリーでの炭水化物の特定推奨量に関するエビデンスは不十分である。

これらの研究の多くは小規模/短期間で、而もリテンション率が低い』、『同様に幾つかの研究は、高炭水化物食に比べて低炭水化物食の方が、中性脂肪、VLDL中性脂肪、VLDLコレステロール、総コレステロール、HDLコレステロールなど血清中脂質やリポ蛋白の改善を示したが、一方では有意差が認められなかったとする研究もある。

研究結果にはバラつきがあるが、炭水化物の摂取量をモニタリングすることは、食後血糖値の改善には有用な戦略である。


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