第928回 炭水化物の質/量と2型糖尿病リスクとの関連性


妊娠糖尿病の既往歴がある女性の2型糖尿病リスクについては、 “第925回 糖質制限 vs 2型糖尿病リスク” で説明した通りです。今回は、研究スタート時点で心血管疾患、癌、および糖尿病を発症していない70,025名の女性を対象とした研究で、Dr Walter C Willett(ハーバード公衆衛生大学院)/Dr Frank B Hu(ハーバード医学部)が率いる研究チームによる報告では、「澱粉が多い」、「食物繊維が少ない」、或いは「穀類繊維に対する澱粉の割合が高い」食事は、女性の2型糖尿病のリスク増と関連するようです。

日本では、白米の70%はデンプンですが、白米と2型糖尿病の関連性が女性で認められたことが国立がん研究センターなどから発表されています・・・第70回 白米食は女性の敵!?

尚、本論文の食事に関するデータは4年毎のアンケートによるものであること、更に論文の“背景”及び“結論”ともに「may be」で言い表されていることを予め言い添えておきます。
因みに、可能性を表す単語を不適切に和訳すると、読者に過大な期待を与えてしまいかねません。ニュアンス的には、「probably」「likely」は70%以上の確実性、「may be」や「perhaps」は30~50%の可能性で“ことによると、もしかしたら”と解するのが一般的でしょう。

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American Journal of Clinical Nutrition
First published Nov4 2015
Carbohydrate quality and quantity and risk of type 2 diabetes in US women

背景:
炭水化物の“質”は2型糖尿病の重要な決定要因かも知れない。しかし、様々な炭水化物の質の指標と2型糖尿病リスクとの関係については系統的に調べられていない。

目的:
炭水化物/でんぷん/食物繊維、及びこれらを組み合わせたものと女性の2型糖尿病リスクとの関連を前向きに検討することが本研究の目的である。

デザイン:
私たちは看護師健康調査(1984年~2008年)のデータを用いて、ベースライン時に心血管疾患、癌、および糖尿病を発症していない70,025名の女性を前向きに追跡調査した。
食事に関する情報はアンケートで4年毎に収集しました。Cox回帰を用いて2型糖尿病の発症との関連を評価した。

結果:
追跡1,484,213人年の間に6,934件の2型糖尿病症例を確認した。
極端な五分位数を比較した多変量解析では、炭水化物の摂取量を増やすことは2型糖尿病と関連していなかった(相対危険度RR = 0.98; 95% CI: 0.89, 1.08; P-trend = 0.84)が、澱粉は2型糖尿病のリスク増と関連していた(RR = 1.23; 95% CI: 1.12, 1.35; P-trend <0.0001)

総繊維(RR = 0.80; 95% CI: 0.72, 0.89; P-trend < 0.0001)、穀類繊維(RR = 0.71, 95% CI: 0.65, 0.78; P-trend < 0.0001)、および果物繊維(RR = 0.79; 95% CI: 0.72, 0.85; P-trend < 0.0001)と2型糖尿病リスクとの関連は低かった。

総繊維に対する炭水化物の割合は、僅かながら2型糖尿病のリスク増と関連していた(RR = 1.09; 95% CI: 1.00, 1.20; P-trend = 0.04)

他方、穀類繊維に対する炭水化物の割合(RR = 1.28; 95% CI: 1.17, 1.39; P-trend < 0.0001)、総繊維に対する澱粉の割合(RR = 1.12; 95% CI: 1.02, 1.23; P-trend = 0.03)、及び穀類繊維に対する澱粉の割合と2型糖尿病に正の関連があることがわかった。

結論:
澱粉が多い、食物繊維が少ない、或いは穀類繊維に対する澱粉の割合が高いと、2型糖尿病のリスク増と関連しました。穀類繊維に対する澱粉の割合が高い食事は、2型糖尿病に関する炭水化物の”質“を評価するための新しい指標かも知れない。

マイコメント
ウォルター・ウィレット博士は米国人医師で、ハーバード大学公衆衛生大学院の教授を務めています。同博士は栄養疫学研究の第一人者といわれており、アメリカの女性看護師121,700名に関する疫学研究 Nurses' Health Study (NHS)、52,000名の男性医療従事者を追跡調査した疫学研究Health Professionals Follow-up Study (HPFS)といった大規模な前向きコホート研究を指揮しています。ハーバード大グループによる主な疫学研究としては、このほかにDr. Frank Speizerが率いる若い女性116,000名を対象としたNurses’ Health Study IIがあります。
ハーバード大学グループの栄養に関する考え方の骨子は、 ”第172回 食事のバランス” の通りですので、目を通しておくと良いでしょう。
尚、ハーバード公衆衛生大学院は、“Harvard School of Public Health” から“Harvard T.H. Chan School of Public Health”へ名前を変更しました。

炭水化物の内訳について今ひとつ理解できていない読者のために、簡単に説明を加えておきます。


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Brown rice(玄米)は、Husk(殻)+Bran(糠・麸・胚芽)+Grain(胚乳)で構成されており、これを精白してGrain(胚乳)の部分だけにしたものが白米(精白米)です。
全粒穀物とは精白処理していない穀物の総称です。


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