第941回 食事改善 vs 運動 Part 1


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Weight management
ウェイトマネジメントとは、『量的・質的に適正な食事』や『定期的な身体活動/運動』で、体重の維持、減量、および減量後の体重再増加の防止を管理することです。

食事管理
米国心臓協会(AHA)/米国心臓学会(ACC)は、過体重/肥満者へのガイドラインとして、1日当たりの摂取カロリーを女性1200~1500kcal/男性1500~1800kcalに抑えて、500~750kcal(or 1日に必要なエネルギーの30%)のエネルギー欠損にすることを奨励しています。

運動
減量は慢性疾患に関連する健康上のリスクを低減します。文献の多くは3%〜5%の減量で健康リスクが低減することを示していますが、国立心肺血液研究所(NHLBI)のガイドラインは10%の減量を奨励しています。
ACSMは過体重や肥満の予防、減量、及び減量後の体重再増加の予防のためのウェイトマネジメントの一環として運動を奨励しており、2001年の過体重肥満の成人向けガイドラインでは、健康促進には最低150分/週、長期的な減量には200~300分/週の中強度運動を奨めていました。しかし、1999年以降のエビデンスを再吟味し現在では次の見解に立っています。

・体重増加を防ぐには中強度の運動150~250分/週が効果的であることをエビデンスが示している。この運動量でささやかではあるが減量も期待できるでしょう。250分/週を超えると臨床的に有意な減量につながる。

・キツクない緩やかな食事制限に並行して、150~250分/週を行うと体重減少が促されることが複数の研究で示されている。減量後の体重維持については幾つかの前向き横断研究が示しているが、減量後の体重再増加の予防に有効であることを示す堅牢なRCT試験はない。

・レジスタンストレーニングには体重減少を高める効果はないが、FFM(除脂肪量)を増やして脂肪量の減少を高めることで、健康上のリスクを低減させる。有酸素運動やレジスタンストレーニングを行うと、体重減少が伴わなくても健康上のリスクを改善することがこれまでのエビデンスが示している。しかし、体重増加を伴う場合には慢性疾患リスクの予防や低減を示すエビデンスは十分ではない。

<参照文献>
ACSM:Appropriate Physical Activity Intervention Strategies for Weight Loss and Prevention of Weight Regain for Adults


減量には食事制限と運動のどちらが効果的(effective)でしょうか?
いずれも効果的です。
何故なら、どちらの方法でも一定のカロリー欠損をつくり出すことが出来るからです。
両者が凡そ等しく効果的であることを示す一つのエビデンスとして、米国心臓協会は『体重を減らすためには消費カロリー>摂取カロリーにする必要がある。しかし、それをどうやるかは常にはっきりしていない。大方の人にとっては、成功に導くダイエットプランは、健康的な食品の選択と身体活動の二つの要素から成り立っている。両者のバランスを理解することが、減量とその後の維持を容易ならしめる一助となる』、そして『“The National Weight Control Registry (NWCR)” とは、少なくとも13.6kg(30pound)の減量に成功し、少なくとも1年間は維持している10,000名を超える18歳以上の男女を対象とした調査研究だが、これによると継続的に減量をキープした成人の内訳を見ると、98%が食習慣を変え、94%が身体活動レベル(特にウォーキング)を増やした』と述べています。


減量には食事制限と運動のどちらが効率的(efficient)でしょうか?
第938回 同じ距離ならランニングとウォーキングの消費カロリーは同じ?” に記載の消費カロリー表が示す通り、体重70kgの人がvery very brisk paceで1時間ウォーキングして消費カロリーは515kcalです。
ガイダンス推奨の1週当たり250分で1年間の消費カロリーを概算すると112,000kcalとなり、7000kcal=1kgとすると体重16kgに相当します。つまり、1kg減量するのに約23日間も掛かってしまうことになります。
他方、ヤマザキのコッペパン(ジャム&マーガリン)は1個で525kcalですから、数字だけで判断すれば運動よりも食事制限の方が速く減量できるので効率的だと言えます。

もうお分りになられたと思いますが、「効果」とは目標に対する達成の度合いであり、「効率」とは目標の達成に対してどれだけ時間や費用がミニマイズできるかの度合いを指します。効果があったうえで効率があります。

(註1)“急いては事をし損じる”という諺のとおり、減量を効率(速さ)のみで捉えると、クラッシュダイエットのように “リバウンド” や “摂食障害” という望まざる落とし穴が待ち受けていることに要注意です。

(註2)御如才なきこととは思いますが、これら効果/効率は専ら減量に対して言っているのであって、各種ホルモン作用などを含め臓器や組織に及ぼす生理学的/生化学的な影響は一様でないことは言うまでもありません。因みに、不健康なライフスタイルの積み重ねによる代謝異常、あるいは老化や遺伝子によって適応熱産生(BMR/TEF/TEA)や摂取量に変化が起こり、エネルギー収支バランスがINPUT>OUTPUTになることで肥満を招来しますが、1日に必要なエネルギー量=BMR+TEF+TEA(TEE+NEAT)という図式そのものは基本的に変わりません。

つぎは角度を変えて、“食事制限/運動を順次的に行う” 又は “同時に行う” ではどちらが効果的/効率的かについて、上記の点を踏まえて取りまとめます。
次回のトピックスで取り上げます。

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