第947回 筋肥大/筋力アップに最効のトレーニング頻度


・分割法 vs 全身トレのどちらがBetter?
・ボディビルディング方式? それとも パワーリフティング方式?
・低負荷で筋肥大するのか?

これらはよくある質問(FAQ)です。
Schoenfeld et al.が、これらに答える形での研究論文を発表しているので併せて紹介します。因みに、本ブログでも取り上げた「カロリー欠損でも筋肉は肥大する」「脂肪減少と筋量アップは同時に可能か」と云ったテーマに関する研究論文は、 “トレーニング歴のない初心者や過体重/肥満者が被験者となっているから可能なのである” というコメントで片づけられることが多いですが、Schoenfeld et al.の研究では筋トレ経験を積んだ健常な男性を対象としており、そういう意味でも興味深い。


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全身トレーニング vs 分割法

Journal of Strength & Conditioning Research
2015 Jul
“Influence of Resistance Training Frequency on Muscular Adaptations in Well-Trained Men”

<アブストラクト>
筋トレ経験を積んだ大学生20名(男性、年齢23.5 ± 2.9歳、体重78.0 ± 10.7 kg、身長176 ± 5cm)を被験者として、週3回の全身ルーティン(TOTAL) vs 週1回のスプリットルーティン(SPLIT)が骨格筋に及ぼす影響を調査した。先ずはベースライン時の体力に応じて被験者をペアマッチした上で、SPLIT群(分割法)またはTOTAL群(全身トレ)のいずれかに各10名ずつ無作為に割り付けた。実験前と実験後にベンチプレス及びスクワットの最大拳上重量1RM、並びに前腕屈筋/前腕伸筋/外側広筋の筋厚を測定した。その結果、実験後に前腕屈筋の筋厚はSPLIT群に比べてTOTAL群で有意に増加した。1RMには有意な群間差は認められなかった。本研究は、週当たりの筋トレ頻度を高めると、筋肥大に優れた潜在的効果があることを示唆している。


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それでは、もっと詳しく説明しましょう!

イントロ

レジスタンストレーニング(RT)後の筋肉の順応を最適化するには、 ”variable”を巧みに操作実行することが必要不可欠である。ここで云うvariableとは、目標を達成するためのニーズ分析、運動種目の選択、レップ数、セット数、強度、レスト、及び頻度などを指す(13)。
特定の筋肉群への最適なトレーニング頻度は明らかになっていないが(30)、相対的に低頻度で、且つ、セッション毎に複数種目で各筋肉群を集中的に鍛えるスプリットルーティン(分割法)が、筋肥大のための一般的なトレーニング方法として広く行われている。

Hackett et al.は、男性ボディビルダー127名を対象とした最近の研究論文で、かれらの3分の2以上が分割法で各筋肉群を週1回の頻度でトレーニングしていることを報告しているが(9)、対照的にFry et al.は “successful weightlifting performance is not dependent on Ⅱb fibers, and that weightlifters exhibit large percentages of type Ⅱa muscle fibers and MHC Ⅱa isoform content” と結論付け、ウェイトリフターやパワーリフターはもっと頻繁に全身トレーニングを行っていることを報告している(7)。

Schoenfeld et al.は、筋肥大を最大化するためのvariablesの最適な組み合わせに関する研究がないことを鑑み、先行研究(25)ではトレーニング経験を積んだ17名の若者を被験者として、ボディビルディング方式(3 sets of 10 RM with 90 seconds rest interval)とパワーリフティング方式(7 sets of 3RM with a 3-minute rest interval)の2群に無作為に割り付けて8週間の実験を行った結果、上腕二頭筋の筋厚に有意な群間差がなかったが、最大筋力を高めるにはパワーリフティング方式が優っていることを報告している。しかし、この研究は両群のトレーニングボリュームは釣り合うようにしているものの、負荷とrest intervalが異なっているため、頻度の直接比較が出来ていないと述懐している。

トレーニング頻度を直接的に比較している研究は極めて限られている。
トレーニング経験者を対象として、同一トレーニング量で週1 vs 週3の頻度を比較した研究では、McLester et al.(17)は12週間の実験後に週1群の筋力増加は週3群の3分の2未満だったこと、更に、LBMの増大は統計学的には有意ではないが、週3群が優位であった(週3群~8% vs 週1群~1%)と報告している。
しかし、この研究では体組成の測定にスキンフォールドが用いられ、筋成長の直接測定を怠っている。更に、トレーニングボリュームは典型的なボディビルディングルーティンを下回っているので、両群間の違いを結論付けることは難しい。

他方、Candow and Burke (4) のコホート研究では、年齢27~58歳の男女29名の初心者を対象として、週2群と週3群の効果を比較しているが、6週間の実験結果は筋力およびLBM(by DXA)共に群間差がなかったことを報告している。

これら二つの研究間の不一致は恐らく被験者のトレーニング経験の有無によるものであろう。
因みに、Rhea et al (23)は、初心者に比べてトレーニング経験者は、筋力を最大化するには週間トレーニングセッション量を増やす必要があることを報告している。

本研究はこれら先行研究群を発展的に深化探求したもので、トレーニング経験を十分に積んだ男性を被験者として、「筋肥大には分割トレ、筋力アップには全身トレが優っている」という仮説を立てて実験を行った。

方法

平均トレ歴4.5 ± 3.1年の男子大学生20名(年齢23.5 ± 2.9歳、体重78.0 ± 10.7 kg、身長176 ± 5cm)を被験者として、先ずはベースライン時の体力に応じてペアマッチした上で、SPLIT群(分割法)またはTOTAL群(全身トレ)のいずれかに各10名ずつ無作為に割り付けて骨格筋に及ぼす影響を調査した。
実験前と実験後にベンチプレス及びスクワットの最大拳上重量1RM、並びに前腕屈筋/前腕伸筋/外側広筋の筋厚を測定した。

トレーニング内容
SPLIT群は3分割法で各部位を週1回、TOTAL群は全身トレを週3回実施した。実施種目は両群共に週単位では21種目で全く同じだが、TOTAL群の全身トレはDay1~3それぞれ種目が異なるように巧く工夫されている。

・トレーニング期間:8週間
・レップ数:各種目8~12 reps、セット間インターバル90秒
・セット数:各種目2~3 sets、トータル18 sets/日
・種目:トータル21種目/週
・負荷:種目別に上述のセット数/レップ数で筋肉が限界に達するように調整

一覧表にまとめると下記の通りです。

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結果

<筋肥大>
超音波イメージングを用いて分割トレ群と全身トレ群の肘屈筋群(上腕二頭筋)/肘伸筋群(上腕三頭筋)/外側広筋の筋厚を測定した。下記の図表と一覧表が示す通り、両群共にベースライン時に比べて各筋肉群の筋厚は実験後に有意に増加した。
しかし、ベースライン調整後に有意に優れた群間差が認められたのは全身トレ群の肘屈筋群のみであった(β=1.41; p=0.012)

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前腕屈筋(左図)
両群共にベースラインに比べて実験後に増加した(p<0.001)
・TOTAL群3.2 mm(6.5%)アップ
・SPLIT群2.1 mm(4.4%)アップ
ベースライン調整後、分割群より全身トレ群の方が優れた結果をもたらすことが有意に示された(β=1.41; p=0.012)

前腕伸筋(中央図)
両群共にベースラインに比べて実験後に増加した(p < 0.001)
・全身トレ群3.6 mm(8.0%)アップ
・分割群2.3 mm(5.0%)アップ
絶対的/相対的な変化に対する有意な群間差は無く、ベースライン時の上腕三頭筋の筋厚を調整しても同様であった(β=1.10; p=0.24)
全身群の効果量は96%で分割群よりも大きかった(全身トレ群0.90 vs 分割群0.46)

外側広筋(右図)
両群共にベースラインに比べて実験後に増加した(p < 0.05)
・全身トレ群3.6 mm (6.7%)アップ
・分割群1.2 mm (2.1%)アップ
絶対的/相対的な変化に対する有意な群間差は無く、ベースラインを調整しても同様であった(β=1.86; p = 0.08)
大腿四頭筋の筋厚もトレーニング頻度を高めることで効果量は顕著におおきくなった(全身トレ群0.70 vs 分割群0.18)

これらのデータは、トレーニング経験者が筋肥大の最大化を目標としてトレーニングする場合には、週3回の頻度で筋肉群を刺激する方が望ましいことをエビデンスとして示している。
これら結果は筋タンパク合成の経時的変化と一致して、トレーニング後48時間持続することが示されている(16)。
理論的には、筋タンパク合成が毎週に亘って昂進持続すると、筋原繊維タンパク質付着を高めるため筋肉サイズにプラス効果をもたらすであろう。


<最大筋力>
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両群共にベンチプレス及びスクワットの最大筋力(1RM)は、ベースライン時に比べて実験後に有意に増加したが、有意な群間差は認められなかった(ベンチプレスβ=9.87; p = 0.14、スクワット β=4.65; p = 0.52)

1RMベンチプレス
・全身トレ群:10.6%
・分割群:6.8%

1RMスクワット
・全身トレ群:11.3%
・分割群:10.6%

ベンチプレス1RMの効果量は、分割群に比べて全身群で効果が見られ(全身トレ群0.57 vs 分割群0.41)、これは意味のある差異であることを示唆しているが、スクワット1RMについては、両群の効果量は同一であった。

<Dietary Adherence>
MyFitnessPal.comを用いた自己報告です。
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<負荷ボリューム>
負荷調整後の各部位毎の週間トータルボリュームは下表の通りです。
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最後に、一つ気になる点が有ります。
本論文の主筆者であるDr Schoenfeldは、『この研究はトレーニング頻度を単離して、頻度の違いが筋肥大にどのように反応するか直接的に調査した最初の研究であり、トレーニングボリュームが同じであれば、高頻度で全身トレーニングを行う方が筋肥大に優れた潜在的効果があることを示唆している』と結論付けていますが、Discussionの中で、“the novelty factor of changing programs may have unduly influenced results”と述べた上で、「被験者19名の内16名が分割トレを習慣的に行っていたこと」「プログラムのvariablesを変えると不慣れによる新たな刺激で筋肉の順応が高まるという研究論文が(12)が存在すること」を強調しています。もしそれが本当なら、トレーニング頻度の垣根を超えて ”ピリオダゼーション” の議論に発展するではないでしょうか。




筋肥大にはボディビルディング方式 or パワーリフティング方式のいずれが有用か?

上述した通りですが、更なる詳細についてはMr McDonaldがこちらで解説しているので参考になさってください。文中で紹介されているCategories of Weight Training: Part 1~Part 15も併せてご覧ください。折を見て和訳したいとは思っています。


低負荷で筋肥大は出来るのか?
Schoenfeld et al.はトレーニング経験者を被験者とした“低強度 vs 高強度筋トレによる筋量アップ効果”に関する研究論文を発表しており、Mr Lyleが解説記事を書いています。
第853回 低強度 vs 高強度筋トレによる筋量アップ効果」で、和文で紹介しているので参照してください。

因みに、McMaster Universityの研究チームは、「筋トレは高強度と低強度のいずれで行っても、筋タンパク合成は同じである。低負荷/高回数でも筋量アップする」旨の論文を発表していますが、Full textが無料公開されたので再チェックしたところ、被験者はレクレショナリーに活発だが、過去1年以上筋トレ経験の無い若者(21 ± 0.8歳)でした・・・第248回 高負荷は筋量アップの決定要因ではない!


Schoenfeld et al.によるその他の研究論文
第790回 筋収縮モーターユニットの活性化(低強度 vs 高強度)