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zoom RSS 第1046回 糖尿病の発症原因

<<   作成日時 : 2018/05/28 19:20   >>

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糖尿病は慢性高血糖を主徴とする多因子疾患であると解説されています。
主要なリスク因子は何でしょうか!
遺伝子ですか?
肥満ですか?
インスリン抵抗性ですか?
膵β細胞量の減少ですか?
膵β細胞機能の障害ですか?

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遺伝子

糖尿病って本当に遺伝するのでしょうか?
答えは、「半分イエス、半分ノー」です。
親や肉親が糖尿病だと、糖尿病の家族歴がない人に比べて糖尿病になりやすい。しかし、遺伝するのは糖尿病そのものではなく“糖尿病になりやすい体質”である。このような体質を持った人に、食べ過ぎ、運動不足、肥満、加齢、ストレスといった環境因子が加わってはじめて糖尿病が発症する。この糖尿病になりやすい遺伝的体質のことを糖尿病の「遺伝的素因」と呼ぶ…京都大学・糖尿病教室

素因と誘因の違い
地滑りを例として分かり易く説明すると、素因とは地すべりが発生する場所の地形や地質、地質構造、水文地質条件などが地すべりの発生しやすい状態にあることを指し、誘因とは、降雨や融雪に伴う地下水圧の上昇や人為的要因がトリガーとなることである。つまり、地すべりは、もともと地すべりが発生する規制条件などの素因を持つ斜面に、誘因としての何らかの作用が生じたことによって起こる。


米国の一卵性双生児の研究で発病率が全く同じではないこともわかっています。


肥満/インスリン抵抗性

肥満はインスリン作用の障害を介して2型糖尿病(T2D)を引き起こすと言われている。2型糖尿病(T2D)の発症リスクがBMIとともに著しく高まることは間違いない。しかし、肥満が真に2型糖尿病(T2D)の原因であるとするなら、肥満者の大部分が高血糖を発症する筈だが、実際には肥満者の〜80%が糖尿病ではない。肥満およびインスリン抵抗性は糖尿病リスクを高める重要な補因子である…Diabetes Care/Role of Reduced β-Cell Mass Versus Impaired β-Cell Function in the Pathogenesis of Type 2 Diabetes.



膵β細胞

真の発症原因(因果関係)はβ細胞と明確に関連している。1型2型糖尿病ではともに膵β細胞量が減少していることが報告されており、β細胞量を再度増加させることは1型2型を問わず糖尿病の治療戦略としてきわめて重要である。
マウスやヒトの研究で膵β細胞は主に複製によって生成されることが報告されている(Dor et al., 2004; Meier et al., 2008; Teta et al., 2007).
β細胞は胎生期と新生児期に急速に増加するが、その後の複製速度は極めて遅い。ただし、妊娠中や高血糖時、膵が傷害を受けた際、末梢インスリン抵抗性がある場合などは、複製速度は上昇する。…Cell/Betatrophin: A Hormone that Controls Pancreatic β Cell Proliferation.


Butler et al.は、肥満91名(T2D 41名/耐糖能異常(IFG)15名/非糖尿病35名)とLean33名(T2D 6名/非糖尿病17名)トータル124名の死体解剖を行い、膵β細胞量、アポトーシス(死滅)、ネオジェネシス(新生)、既存細胞からの複製を測定した…Diabetes 2003年/β-Cell Deficit and Increased β-Cell Apoptosis in Humans With Type 2 Diabetes.


ダイジェスト:
・非糖尿病の症例では、leanの対照群と比較して肥満者の膵β細胞量は約50%増加.
・β細胞量の増加は、増殖(proliferation)よりも新生(neogenesis).
・非糖尿病の肥満に比し、IFG肥満及びT2D肥満の膵β細胞量は各々40%/63% 欠損.
・LeanなT2DはLeanな非糖尿病に比し膵β細胞量は41%欠損.
・膵β細胞量の欠損は、新生と複製はnormalだがアポトーシスが増加したことに因る.
・膵β細胞アポトーシス頻度は、非糖尿病の対照群に比べて leanなT2Dで10倍、肥満のT2Dで3倍高まる.


同研究チームは2013年にDiabetes Careでもう一つの研究(20歳〜102歳の非糖尿病167名の剖検) “β-Cell Mass and Turnover in Humans:Effects of obesity and aging” を発表し、肥満者のβ細胞量が約50%(0.8g → 1.2g)高いことを再確認している。

Dr. Butlerは、「剖検の結果から、β 細胞が〜50%減少で耐糖能異常(IGT)、〜65%減少(35%残存)で T2D発症」と糖尿病学会のシンポジウムで講演している。


2008年には、Rahier et al.が2型糖尿病57名および非糖尿病52名の剖検を行い、T2D患者のβ細胞量が約39%低いことをDiabetes Obes Metabで報告している…Pancreatic beta-cell mass in European subjects with type 2 diabetes.

これら剖検による研究は、糖尿病の病因としてβ細胞量に注目したものですが、Cross sectional (横断的)データであってlongitudinal(縦断的)データではありません。
膵β細胞の機能障害こそが主たる病因であるという複数の研究報告があります。

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1型糖尿病(T1D)および2型糖尿病(T2D)の発症に、ヒトβ細胞量の減少および機能異常がどのように関わっているのかについての直近のレビュー記事 “Human beta cell mass and function in diabetes: Recent advances in knowledge and technologies to understand disease pathogenesis” が、2017年7月8日付けでMolecular Metabolismに掲載されているので、要点を抜粋して紹介します。


はじめに:
糖尿病で血漿グルコース濃度の上昇を効果的に抑制できないのは、血漿インスリンレベルの不十分さの結果である。全身性環境において、血漿インスリンレベルは通常ではインスリンクリアランスの結果であり、もっと重要なことはβ細胞によるインスリンの産生および分泌である。分泌されるインスリンの総量は、膵島β細胞の絶対数(β細胞量)及びこれら各細胞のアウトプット(β細胞機能)に依存する。β細胞量および機能に関する現在有用な情報の殆どは、マウスモデルに関する実験に由来する。しかし、ヒトおよびマウスのβ細胞は特にβ細胞の大量調節に関して大きく異なる特性を示すことが多くの研究によって実証されている。したがって、ヒトβ細胞および膵島に関する研究は、β細胞量と機能を標的とする糖尿病治療法を発展させるために不可欠である。


背景:
膵β細胞量の低下and/or 膵β細胞の機能障害が生じると血漿インスリンレベルは正常値を下回り、高血糖症や糖尿病につながると考えられている。しかし、これらが確かに糖尿病の病因における主たる因子なのか、そして、そのメカニズムはどうなっているのかについては依然として明らかになっていない。


レビューの領域:
このレビューでは、1型糖尿病(T1D)および2型糖尿病(T2D)の段階的な発症において、ヒトβ細胞量および機能がどのように影響するかについて、現在までに分かっていることを論じる。


(A)1型糖尿病(T1D)
T1Dは、免疫系の異常によりが膵β細胞を攻撃してインスリン欠乏/慢性高血糖/合併症を引き起こす慢性自己免疫疾患である。 T1Dの治療を成功させるには、自己免疫障害を抑制してβ細胞からの適正なインスリン分泌を回復させる必要がある。 後者に対処するためには、無症候性の前糖尿病期におけるβ細胞量と機能の変化、β細胞量と機能の臨床症状への寄与、および高血糖の発症についての詳細な知識が必要である。

A.1. T1Dの前糖尿病期におけるβ細胞量と機能
当初は高血糖発症前のβ細胞量の減少は線形で進行すると考えられていた[1]。しかし、近年ではT1Dの前糖尿病病態モデルは、病因の再発と寛解状況を反映し[2-4]、セロコンバージョン(抗体の陽性化)から糖尿病への不均一な進行(数週間から20年)を認識すべく調整されている[5]。ヒトβ細胞量に関する情報は残念ながら限られており、無症候期間のみ有用というのが実状である[6]

しかし、慢性膵炎は、細胞間接触[7]や炎症性サイトカインの分泌[8]によって誘発される細胞死によって、前糖尿病期のβ細胞量を減少させると考えられている。この仮説は、β細胞死の指標としてヒト血液サンプル中のメチル化されていないINS DNAを測定した最近の報告によって裏付けられている[9]。

研究チームは、β細胞死がT1D高リスクの被験者で高まり、臨床診断では更に増加すること、つまり、β細胞量の主要な減少が前糖尿病期の後期に起こることを示唆している。
“発症してまもないT1D患者では大幅な減少が見られるが [12,13]、糖尿病前の自己抗体陽性被験者では対照群と比較して、β細胞量の喪失が見られなかった”というヒトのドナー組織片を用いた研究結果と一致している[10-12]

細胞死が進んでいるにもかかわらずβ細胞量の減少が遅れる理由の一つとしては、マウスに見られるように炎症に応答してβ細胞の増殖が増えたことが挙げられる[14,15]。このことはインスリン炎を伴わない自己抗体陽性被験者や対照群と比較して、膵島炎を有する非糖尿病の自己抗体陽性被験者において、β細胞量の2倍の増加が観察されたことでも説明出来る[16]。

β細胞量は長期に保持されているにもかかわらず、インスリン分泌が前糖尿病期に既に変化したこと、つまり、β細胞機能が変化したことを血漿インスリンレベルが示している。いくつかの観点から、代謝試験におけるC-ペプチド、耐糖能、および第1相インスリン応答を測定することによって、リスクβ細胞のパフォーマンスを有する患者の縦断的研究を評価した。

代謝検査では細胞量と機能の役割を確実に区別することができないが、これらの研究はヒトT1D病因における前糖尿病期を理解するのに大いに役立つ。
9人を被験者とした初期の研究では、第1相インスリン反応の進行性喪失は示されたが[17]、前糖尿病期での空腹時/食後の血糖値上昇の兆しは病気発症の直前まで観察されなかった

さらなる研究でもっと大きなコホートを対象にしてこのテーマを追跡した結果、前糖尿病期の第1相インスリン分泌のロスが、年齢および自己抗体サブタイプの数と相関することが示された[18-20]。これは、空腹時の維持を示すC-ペプチドの測定によっても確認されるが、前糖尿病期を通して刺激されたC-ペプチドレベルが減少する[21]。

最新の研究に注目すると、第1相インスリン分泌の減少が臨床発症4~6年前にすでに検出可能であることが、幾つかの研究グループによって示されている[19,20,22,23]。前糖尿病期でβ細胞量が変化していない、或いは、増加していることを考慮すると、第1相のインスリン分泌の初期の変化は恐らく機能障害によるものであろう。

高血糖の状態に近づくにつれて、第1相インスリン分泌およびC-ペプチドの減少は、さらに悪化することが観察された(21,23)。これは、β細胞の機能不全および糖尿病発症に近似したβ細胞アポトーシスの増加によるものと考えられる。
まとめると、これらの所見は、特に長い前糖尿病期の場合には、β細胞のゆっくりと進行する機能障害が、β細胞の急速に進行する形態学的な破壊および機能低下に先行するという仮説を支持している。

A.2.高血糖発症時およびその後のβ細胞量と機能
前糖尿病期の観察から推測すると、高血糖の発症はβ細胞量の減少とβ細胞機能の不全によって集合的に引き起こされる。しかしながら、形態学的および機能的不全の程度は患者間でバラツキがみられ、高血糖の発症への影響は異なる。おそらく、疾患発症時にβ細胞量のほぼ全部が失なわれている(> 80%の減少)というのは、重症および早期発症の大部分の症例を研究した結果、長年抱いてきたT1D病因へのパラダイムだったと考えられる[24-28]。

この概念は若年期に発症した被験者に見られる残存β細胞機能と一致しない[29–31]。
ICIs (残存インスリン含有膵島)はT1D発症年齢に併行して増える。10代を超えても診断時ICIs ∼40%が保持されており、発症原因はβ細胞量の減少ではなく機能の欠如と考えられる[29,32].
纏めると、発症時の残存β細胞量および機能は、年齢[33,34]、程度、および膵島炎の細胞プロフィールによって決定される[29]。

さらに、β細胞量が“脱顆粒”の結果として過小評価される可能性を複数のエビデンスが示唆している[14,16,35,36 ]。発症後は進行中の自己免疫浸潤によるβ細胞の破壊が続き、代謝およびERストレスおよびアポトーシスを引き起こす血糖過剰負荷が高まることでさらに悪化する[37]。

β細胞のアポトーシスは、特に糖尿病発症後まもなくは上昇するが、長期的にはβ細胞数が減少した結果としてスローダウンするようだ[9]
それにもかかわらず、糖尿病発症後であってもβ細胞量の減少に対する代償的メカニズムが作用するようだ。 2006年の症例報告では、Meier et al.は直近診断された89歳の患者でβ細胞の増殖がたかまることを示した[38]。Willcox et al.は糖尿病発症後18ヶ月未満の患者10人でβ細胞の増殖が高まることを示したが、これは炎症そのもの[14]や高血糖レベル[40])によって誘発された可能性がある。

もう一つの考え方として、長期T1D患者の外分泌組織全体に散在する小β細胞クラスター形成は、自己免疫崩壊を回避する細胞集団または原因不明の代償性β細胞集団として解釈された[41,42]。したがって、アポトーシスと再生は、疾患の進行中に同時に起こることがあり、持続的アポトーシスは増殖/分化転換/新生を介した連続的なβ細胞量代償によって説明することができる[41,43]。

β細胞量だけでなく、β細胞機能は糖尿病発症時およびそれ以降に重要な役割を引き続き示す。発症後および長期の糖尿病の残存β細胞は、機能的な疲労および脱顆粒の兆候を示しているが[35,36]、グルコーストランスポーター2のようなβ細胞特異的マーカーを依然として発現している[44]。ところが、発症時までにβ細胞量と機能が大幅に低下しているにもかかわらず、C-ペプチド応答は発症年齢依存的に減少する一方で[30,46-48]、基礎インスリン分泌は保持されている[21,35,45,46]

発症後1年以内はC-ペプチドレベルは急速に低下し続けるが[31]、罹病期間に伴ってスローダウンし[49]、長期1型糖尿病患者ではC-ペプチドは限界レベルに至る[49–51] 。
発症して間もない一部のT1D患者において、インスリン治療で部分完解または完全寛解に至ったことが観察されており、T1D発症におけるβ細胞機能の有意な役割が指摘されている。

「ハネムーン期」といわれるこの現象は、1940年代にJackson and Brush [52,53]によって初めて記され、Cペプチドおよびプロインスリンレベルが高まり、一時的にインスリン注射が不要になるか、インスリン注射の需要量が大きく減少することがある[54–56]。

ハネムーン期の発現は、発症時の年齢、疾患の重篤度、および膵島自己抗体の数によって決定される[57-61]。寛解期の期間は数週間から数年の間で非常に変動することが知られている[57,62]。 C-ペプチドおよびプロインスリンレベルの回復の根底にあるメカニズムとして、β細胞量の増加(例えば増殖)やβ細胞機能の回復が議論されている。寛解中のベータ細胞増殖はマウスで示されたが[14,35,36]、同じ条件下でヒト膵島では大量再生されない[36]。一方、疲弊β細胞は、刺激後のインスリンレベル昂進および代謝パラメータの正常化と並行して介入後に再分化および回復することが判明した[36]。

これらの所見は、ハネムーン期の原因として機能的β細胞回復の概念を実証し、T1Dの発症および治療におけるβ細胞機能の重要な役割を例示している。


(B)2型糖尿病
2型糖尿病(T2D)は、インスリン抵抗性および高血糖を特徴とする進行性代謝障害である。現在の処、T2Dの臨床的治療の多くは、インスリン抵抗性を標的にするか、またβ細胞機能を高めてインスリンレベルを高めることを目的としている。
β細胞の潜在的な網羅的効果の観点から、基礎研究はβ細胞量の再生やβ細胞機能の保持のためのメカニズムの探求に目を向けるべきで、そのためにはインスリン抵抗性およびT2D進行の代償に対するβ細胞量およびβ細胞機能の寄与とダイナミクス(動態)を徹底的に理解する必要がある。

B.1. 膵β細胞の代償性
肥満およびインスリン抵抗性はT2Dの主要なリスク因子と考えられている一方で、β細胞の代償能力が肥満やインスリン抵抗性の人たちのT2D発症を防止すると考えられている[64,65]。こういった人たちでは分泌の昂進やβ細胞量の増加によるインスリン産生の向上が、高血糖およびグルコース不耐性の発症を妨げるという仮説が立てられている[65]。

1933年にDr. Ogilvieはリーンな被験者を対照群として肥満者の膵臓内で「膵島組織の割合が異常に高い」ことを記述しており、肥満におけるヒトβ細胞量の代償性がエビデンスとして既に報告されている[66]。
その後の数十年の間にも更にβ細胞量の増加が観察されたことが報告されており、さらに最近の研究では、ドナー臓器および外科的切除術[67,68]、或いは単離した膵島の組織におけるβ細胞質量を分析し[69,70]、個体間のバラツキはあるがβ細胞量が過体重/肥満者では概して50-90%増加することが示されている。

2003年にButler et al.はヒト剖検に基づいたエレガントな研究を発表し、β細胞量の代償性について説得力のあるエビデンスを提供した[71]。この研究では、124名の被験者の組織を分析し、BMIおよびグルコース恒常性の状態に従って分類した。β細胞の相対量(膵臓総面積に対するβ細胞の比)は、リーンな対照群と比較して、肥満で非糖尿病の被験者において約50%高いことが判明した。その後のヨーロッパ人を対象にしたRahier et al.による剖検研究では、肥満者でβ細胞量が約20%増加していることが観察された[72]。

Butler et al.によるメカニズムの探求ではβ細胞の有意な増殖数は検出されず、肥満の被験者の膵臓におけるインスリン陽性のダクト細胞の頻度が増加していることが観察された。したがって、β細胞量の増加は増殖(proliferation)よりもむしろ新生(neogenesis)によるものと結論付けた[71]。

その後、同研究グループは、異なるコホートの肥満者でβ細胞量が50%増大したことを確認したが、ここでも増殖による増加は観察されなかった[73]。これは、インスリン抵抗性および耐糖能障害の被験者におけるβ細胞量増加のメカニズムは新生であり、増殖ではないとする他の報告と一致している[74,75]。しかし、β細胞の増殖が検出されなかったのは、β細胞の大量に増殖した時点や増殖の指標に対する評価の相違によって影響をされた可能性がある。

β細胞量の増大に加えて、β細胞機能の可塑性は肥満やインスリン抵抗性によって高まるインスリン必要量の代償に寄与する。通常、ヒトにおけるβ細胞の産出は、代謝試験に応答してインスリンまたはCペプチド血漿レベルを定量化することによって測定される。後述するように、これらの試験では、β細胞の機能と質量の関係をはっきりと区別することはできません。しかし、組織学的研究からのベータ細胞量の代償増分を肥満中の代謝試験に応答したインスリン血漿レベルと相関させることで、非糖尿病性インスリン抵抗性の代償に対するβ細胞機能の寄与に関する推定値が得られる。

代償におけるβ細胞機能の主要な役割を裏付けるエビデンスとして、肥満の非糖尿病被験者[77-81]における刺激に対する空腹時血漿インスリンレベルの著しい昂進と数倍大きなインスリン応答が多数の研究で観察されている…β細胞量の増加はこれまでに報告された20−90%を明らかに超えていた。重要なことに、過剰分泌にもかかわらずβ細胞分泌のダイナミクスはほとんど変化していなかった[79,80]。

同様に、いくつかの研究は、肥満患者から単離した膵島がリーンな個体からの膵島と比較して、インスリン分泌が2〜3倍増えたことを見出している[70,82]。これらの研究は、β細胞の機能性が、肥満およびインスリン抵抗性に応答してインスリン産生の増加に大きく寄与し、β細胞の大量増殖の効果を逓増させることを示唆している。


B.2. β細胞の欠乏
インスリン抵抗性の昂進に対するβ細胞の適応反応が不十分あるいは機能しなときは、高血糖およびT2Dを発症する。代償と同様に、T2Dでインスリンが相対的に欠乏すると、β細胞量および機能の変化が生じる。これまでにT2Dでβ細胞喪失の発生を記述する十分なデータが入手可能である。いくつかの報告では、T2D患者と非糖尿病の対照群でβ細胞量の差が検出されなかったが、大部分の研究ではβ細胞量の有意な減少が24%〜65%の範囲で見られる[67,68,71,72,85-88]

このことは、非糖尿病ドナーと比較してT2Dの臓器から単離された小膵島の産出量の減少およびサイズが小さいことによって再確認される[89]。 T2D患者におけるβ細胞量の減少の根底にあるメカニズムは、β細胞アポトーシスの速度が劇的に上昇する可能性が最も高く(90,91)、β細胞の複製頻度または新生形成の差異におそらく関連しない[71]。様々な研究で観察されたβ細胞喪失の変異は、コホートの患者の特徴、つまり年齢やBMIの違いによって引き起こされ得る

特に、疾患期間の違いは、β細胞の損失の程度に影響を及ぼし得る。 Rahier et al.の研究では、糖尿病発症5年以内の患者では平均体重が24%、糖尿病発症から15年以上経過した患者では欠乏が54%に増加した[72]。しかし、Yoon et al.の研究では、β細胞量と糖尿病期間の減少との間でこのような関係は観察されなかった[67]。

β細胞量の減少に加えて、β細胞の機能障害はT2D患者において明らかになっている。代償期と同様に、インスリン不全へのβ細胞機能の寄与は、β細胞量の喪失をグルコースホメオスタシスおよびインスリン分泌と相関させることから推測することができる。

上記で述べたように、β細胞量の減少は24%〜65%の範囲で観察された。しかしながら、T2Dにおけるインスリン分泌能は50%~97%低下していることが示されており[92-97]、このことはインスリン欠乏にβ細胞機能が寄与していることを示している。これと一致して、肝膵外切除術を受けている生存ドナーについての研究では、膵臓の50%を除去した後、インスリン分泌が減少したにもかかわらず、ドナーが正常な24時間グルコースプロファイルを示したことが示された[98]。

肥満とインスリン抵抗性の存在下でのみ、肝膵外郭切除された患者はT2D発症リスクが高まり[99]、β細胞量の24%〜65%の減少のみではT2Dを引き起こす可能性は低いことが明らかにされた。T2Dでβ細胞機能不全のもう一つの徴候は、インスリン分泌のダイナミクスで観察された変化であり、第1相応答の消失および規則的な振動分泌パターンの崩壊を含む[101,102]。これらは、細胞量の変化よりも機能的変化の結果である可能性がより高い。

最後に、T2Dにおけるβ細胞機能の本質的な役割は、いくつかの状態で観察される急速な回復によって説明され、インスリンレベルを上昇させる手段としてβ細胞量が絡む可能性は低いと考えられる。例えば、肥満T2D患者の肥満手術は、しばしば、数日または数週間以内に、血糖管理の改善や糖尿病寛解にまで至る[103]。

この急性逆転のメカニズムとして、β細胞のグルコース感受性とインスリン感受性の正常化/初期インスリン応答の迅速な回復が提案されている[104-106]。グルコース応答性および第1相分泌に関するβ細胞機能の同様の迅速な回復は、T2D患者の短期のカロリー制限中にも観察される[107,108]。

最近提案されたT2Dにおけるβ細胞欠乏の潜在的メカニズムはβ細胞の脱分化である。 T2Dのβ細胞は死滅せず、むしろ脱分化の結果として沈黙することが示唆されている[109]。 β細胞脱分化の特徴は、PDX1、Nkx 6.1、およびMafAのような重要なβ細胞転写因子の発現の減少、ならびにNeurogenin3、Oct4、Nanog、およびL-Myc [110]を含む特異的前駆細胞転写因子の再発現を含む。

これらの脱分化した細胞はβ細胞の同一性を失ってインスリン陰性となり、もはやグルコース恒常性の代謝制御に寄与しなくなる[109]。興味深いことに、β細胞の脱分化は、マウス研究でインスリン療法による血糖値の正常化によって可逆的であることが実証されている[111]。したがって、脱分化した細胞は、インスリンまたはC-ペプチド染色において非β細胞として現れ、減少したβ細胞量に加わる。しかしながら、少なくとも疾患の病因のある時点までβ細胞の特徴および機能の回復は可能であるように思われる

それにもかかわらず、ヒトT2Dにおけるβ細胞欠乏に対するβ細胞脱分化の寄与は依然として論議中であり[112-114]、T2D病因におけるβ細胞脱分化のメカニズムおよび意義を明らかにするためにさらなる研究が必要である。例えば、最近の研究では、ヒトT2Dβ細胞におけるMAFA、PDX1、およびNKX6.1のようなβ細胞転写因子の発現の低下を確認することができたが、Neurogenin3、NanogまたはMYCL1などの前駆細胞マーカーの発現レベルの差は検出されなかった、 [115]。

β細胞機能不全およびβ細胞喪失は、T2D病因において一般に受け入れられるが、高血糖への進行中のそれらのキネティクスが議論される。発症前または発症直後にグルコースホメオスタシス異常の徴候がある被験体において、β細胞量に目を向けた研究はほとんどない。 Butler et al.は、臓器ドナーの組織サンプルを用いて、空腹時血糖障害のある非糖尿病患者の相対的なβ細胞面積の大幅な減少を観察したが[71]、Meierらは膵臓手術からの組織サンプルを使用したMeier et al.の研究では、非糖尿病性耐糖能異常の被験者で有意な分画ベータ細胞面積の減少は観察さ、
 
さらに、Rahier et al.は、糖尿病発症5年以内の患者でわずか24%のβ細胞量減少を観察したが、病状時間とともに悪化した[72]。対照的に、グルコースに対する急性インスリン反応などの機能的変化は、正常な耐糖能から耐糖能障害への移行の初期予測因子として記載されている[117]。インスリン分泌ダイナミクスの変化は、インスリンシグナル伝達効率を低下させると考えられている[118-120]。不完全なグルコースクリアランスおよびその後の上昇した血糖は、他の細胞傷害性因子と連携して、β細胞量および機能をさらに悪化させる。この「悪循環」は、T2Dにおける全β細胞不全および疾患の臨床症状に関与することが示唆されている[121,122]。

これらの結果は、糖尿病発症時ではβ細胞量はかなりmoderateな低下で推移し、剖検研究により観察されたより重度のβ細胞量欠乏が高血糖の結果であることを示している。これに伴い、β細胞の機能は糖尿病発症の前提条件であり[63,123-127]、T2D診断時には約50-80%減少することを示唆している[63,122,127]。

しかし、これらの所見は、内在性β細胞量の減少がT2Dの発症に強い危険因子を示す可能性を排除するものではない。胎児および出生後の様々な要因がβ細胞量の蓄積に影響を及ぼし、その結果として、生存期間を通してグルコース恒常性を調節する限られた量のβ細胞が得られる。この仮説は、CDKN2AおよびCDKN2Bを含む、β細胞の複製を制御する遺伝子におけるT2D関連の一塩基多型(SNP)の同定によって支持されており、これはおそらく、代償的増殖を制限し発達・成熟中のβ細胞量の拡大を減少させる[128-130]


まとめ

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現在の文献は、β細胞量および機能がT1DおよびT2Dの発達に異なる方法で寄与していることを示唆している。T1D(上図A)では、前糖尿病段階は、長期間、段階的な機能障害、それに続く高血糖発症直前のβ細胞量の急速な低下を特徴とするようである。

臨床症状での減少量は非常に異質であり、発症年齢のような因子に依存する;例えば、早期発症T1Dにおいてはβ細胞量のより大きな減少がある。それにもかかわらず、β細胞の機能的枯渇は、疲弊した細胞の存在および一部の患者の治療開始後の一時的な寛解によって示されるように、高血糖の発症における主要な要素である。したがって、T1D開始時の免疫介入は、グルコース恒常性の少なくとも部分的な制御を回復することに有効であろう。

対照的に、T2D発症(上図B)は、インスリン抵抗性により高まったインスリン需要に応答する形態学的および機能的β細胞代償の欠如または停止の結果である。典型的には有効な代償は、主として機能的変化によって駆動されるが、それは速度と程度において量適応よりも優れている。しかし、ある状況では、機能的なβ細胞の代償が不十分または悪化し、β細胞の作業負荷およびストレスを増加させ、機能的な疲労、脱分化および最終的にはβ細胞死をもたらすようである。

したがって、T2Dではβ細胞機能の保護および回復が主な治療および予防標的であるべきである。これらの知見にもかかわらず、糖尿病の病因におけるβ細胞量および機能の役割の大部分が依然として明らかになっていない。


最後に、
単離されたヒト膵島または分散β細胞を用いたin vitroアプローチは、ヒトβ細胞生物学を研究する殆どの研究者が選択される方法です。従って、in vitroでの知見を検証し、β細胞生物学の複雑なメカニズムを反映するために、より生理学的なin situおよびin vivoアプローチをさらに使用する必要があります。この観点から、サブタイトルに“Recent advances in knowledge and technologies to understand disease pathogenesis…近年における病因を理解するための知識とテクノロジーの向上”とあるように、研究技術についても詳しく述べられていますが、この部分は本ブログの領域を大きく超える内容ですので割愛します。
なお、本文中には引用文献はナンバー(1〜228)で記されていますが、論文オリジナルの最後に一覧表があるので必要あれば参照してください。

関連記事:
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Is There a Diabetes Cure?


追記
ヒト糖尿病の発症メカニズムは明らかになっていません。”高強度の筋トレでβ細胞量と機能が復元し糖尿病は完治する”という科学的エビデンスも存在しません。


追記:2018/6/2

Nature Medicine
Pathway to diabetes through attenuation of pancreatic beta cell glycosylation and glucose transport
2011 Aug 14
By Ohtsubo et al.

この研究は、”膵β細胞のグリコシル化(糖鎖付加)と糖輸送の減衰を介した発症経路“についての研究で、上記で詳述したMolecular Metabolismに記載された研究のreferencesには含まれていません。骨子は、『高脂血症や肥満に伴い遊離脂肪酸の濃度が高まると、Mgat4aとSlc2a2(GnT-4aとGlut2)の発現が低下する。GnT-4aにはGlut2に糖鎖を付加して膵β細胞表面に安定して発現させる役割がある。故に、これらの発現低下はβ細胞の糖輸送低下/GSIS(グルコース応答性インスリン分泌)の低減/全身性インスリン抵抗性を惹き起こし、延いては糖尿病発症につながる』というものです。しかし、この研究はマウスを用いたもの、つまり、β細胞にヒトMGAT4A遺伝子とヒトSLC2A2遺伝子を恒常的に発現させたトランスジェニックマウス群を作製して行なわれた研究です。







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