第1061回 ストレッチは筋腱の機械的特性を変えるか?


栄養素の問題と同様に、“運動前のストレッチは必要なのか?”というテーマについてもエンドレスの議論が続いています。私の場合は自らの老体に相談しながら、基本的にはジョギング前に約60秒の腓腹筋ストレッチをやっていますが、中高強度の筋トレ前はやっていません。

さて、ストレッチを慢性的に繰り返すと柔軟性が高まることは衆目の一致するところですが、筋肉、腱、関節を繰り返し伸ばすことによって機械的特性や機能が変化するという「機械理論」と、そうではなく反復することで脳を介してより大きなテンションに耐え得るようになるだけだという「感覚理論」に分かれています。

それでは、掲題に関してスカンジナビアの研究チームからの報告を紹介します。

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Scandinavian Journal of Medicine and Science.
2018 Mar;28(3):794-806. doi: 10.1111/sms.12957.
Can chronic stretching change the muscle-tendon mechanical properties? A review.

ストレッチは関節可動範囲を慢性的に増加させるのに有効な方法であることは認識されている。しかし、ストレッチが筋腱の構造特性に与える影響は不明である。メタ分析を用いたこの系統的レビューは、慢性的なストレッチが筋腱の構造特性を変化させるか否かを決定することを目的とした。

年齢及び健康状態は問わず週2回/2週間以上の条件下で行われたスタティックストレッチング(Static Stretching)、ダイナミックストレッチング(Dynamic Stretching)及びPNF( Proprioceptive Neuromuscular Facilitation)に関する研究論文をPubMed、PEDro、ScienceDirect and Research Gate databasesで検索した。

関節(最大許容受動的トルクや延伸抵抗)や筋腱部(筋構築、剛性、拡張性、剛性率、体積、厚さ、断面積、弛み長さ)の構造的変数と機械的変数を論文から抽出した。
トータル26件の研究が選択された。期間は3〜8週間で、平均ストレッチ時間は1165秒/週であった。

最大許容受動的トルクについては小さな効果が見られたが、延伸抵抗、筋肉の構造、筋肉の硬さ、および腱の硬さへの影響はとるに足らないものだった。ほとんどの変数に大きな異質性が見られた。

期間3〜8週間のストレッチによって、引張力に対する伸展性および耐性は増幅するが、筋肉または腱の特性のいずれかが変化するとは思われない。
8週間未満の慢性的なストレッチプロトコールへの適応は、大方は感覚レベルで起こるようだ。