第1114回 糖尿病/前糖尿病の食事療法:ADAコンセンサスレポート2019年版…Part-1


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Diabetes Care 2019 May; 42(5): 731-754.
Nutrition Therapy for Adults with Diabetes or Prediabetes: A Consensus Report


糖尿病または前糖尿病の成人のための栄養療法:コンセンサスレポート

このコンセンサスレポートは、「糖尿病/前糖尿病の成人への栄養療法の個別化について、科学的根拠に基づくガイダンスを臨床専門家に提供する」ことを目的としています。有力なエビデンスは、質の高い糖尿病治療を構成する一つの要素としての“食事療法の有効性とコスト効果”だけでなく、それを糖尿病の医療管理に組み入れる裏付けとなります。したがって、ヘルスケアチームの全員が食事療法の利点と主要な栄養メッセージを理解・支持することはとても重要です。
個別治療目標における血糖の改善と維持、ウェイトマネジメントの達成、および心血管リスク因子(例えば、血圧、脂質など)の改善に取り組む栄養カウンセリングは、糖尿病または前糖尿病を有するすべての成人に推奨されます。

“one-size-fits-all”つまり“万能型”の食事プランは、糖尿病の予防や管理にはありません。糖尿病や前糖尿病の罹患者は広範囲にわたっており、彼らの文化的背景・個人的な嗜好・併存疾患・社会経済的状況を考えると非現実的な期待です。
健康目標の達成および生活の質に役立つ多くの食物選択と食事パターンを、研究は明確に示してくれます。米国糖尿病協会(ADA)は、「医学的栄養療法(MNT)が全体的な糖尿病管理プランの基本である」ということを強調します。そして、医学的栄養療法(MNT)の必要性は医療提供者によって、生涯を通じ糖尿病を有する人々と協力して、頻繁に再評価されるべきです…健康状態やライフステージが変化する時期には特別な注意が必要です(1-3)。

2014年Diabetes Careに発表された前回のADAステートメント(第548回 米国糖尿病学会が推奨する栄養療法)は1型および2型糖尿病についてのみ記述していますが、今回のコンセンサスレポートには前糖尿病に関する情報も含まれています。
小児糖尿病や妊娠糖尿病については記述していませんが、Standards of Medical Care in Diabetesなど他の文献を参照してください(5,6)。


データソース、検索、および研究の選択

このレポートの著者は、メンバーの多様性を確保するため全国的に呼びかけることで、
多様な科学的/臨床的/栄養学的な専門知識を有する14名を選出しました。
この中には、管理栄養士(RDA)、糖尿病療養指導士、内分泌学者、プライマリケア医、およびpatient advocate(患者権利の擁護のために支援を行う医療従事者)が含まれています。文献検索は外部の市場調査会社を用い、その費用はADAファンドを充てました。
外来の前糖尿病/1型糖尿病/2型糖尿病患者(成人)の食事療法介入についての最新エビデンスを提供するために、2014年1月1日~2018年2月28日の間に発表された研究をPubMedで検索しました。キーワードと検索戦略の詳細については補足データで報告していますが、ランダム化比較試験(RCT)、RCTの系統的レビューとメタ解析を重視しました。
推奨事項は、エビデンスに基づいた討議を通じて合意に達した後の、著者の専門家としての見解です。
コンセンサスレポートのレビューは9名の糖尿病に関する査読エクスパートとADA専門家実践委員会が行いました。


このコンセンサスレポートの内容構成は下表に示した通りです。
今回はこの中のコンセンサス推奨事項についてのみ取り上げることにし、他のアイテムは次回のPart-2で詳述します。


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コンセンサス推奨事項は下記の通りです:

糖尿病栄養療法の効果

1型または2型糖尿病を患っている成人には、診断時および生涯且つ健康状態の変化時に必要に応じて、糖尿病に焦点を絞った個別的な医学的栄養療法(MNT)を紹介してください。MNTプランは薬剤や身体活動などを含む全体的なマネジメント戦略と継続的に調整してください。

糖尿病の成人には、国の基準に従って包括的な糖尿病自己管理教育および支援(DSMES)サービスを紹介してください。

糖尿病に焦点を置いたMNTは、管理栄養士(RDN)…好ましきは糖尿病治療に関する包括的な知識と経験を持つ人…によって提供されます。

前糖尿病および過体重/肥満の人たちには、糖尿病予防プログラム(DPP)などの集中的ライフスタイル介入プログラムand/or個別化MNTを紹介してください。

Diabetes MNT is a covered Medicare benefit and should be adequately reimbursed by insurance and other payers or bundled in evolving value-based care and payment models.

DPP-modeled intensive lifestyle interventions and individualized MNT for prediabetes should be covered by third-party payers or bundled in evolving value-based care and payment models.

(注)メディケア/メディケイド給付を含めた米国医療保険制度の仕組みと問題点に関し、小生の知識は極めて乏しく適切な和訳が出来ません。故に、原文をそのまま掲載しておきます。


多量栄養素

糖尿病患者または糖尿病リスクがある全ての人にとって、炭水化物・タンパク質・脂質のカロリー摂取の理想的な比率はないことをエビデンスは示唆しています。したがって、主要栄養素の摂取比率は、個々人の現在の食事パターン/嗜好/代謝目標の評価に基づくべきです。

糖尿病患者にカウンセリングを行うに際しては、現在の食事内容の評価を行った後で、食事のタイミングと食物の選択を最適化し薬物療法と身体活動の推奨を導くべく、炭水化物摂取の自己モニタリングに関する個別指導を行うことは、血糖目標を達成するための重要な戦略の一つです。

糖尿病患者および糖尿病リスクがある人たちは、少なくとも一般の人たちに推奨される食物繊維量を摂取することを奨励します。食物(野菜、豆・エンドウ豆・レンズ豆など豆類、果物、完全なままの全粒穀物)や栄養補助食品を介して、食物繊維の摂取量を増やすとA1Cを適度に下げるのに役立つでしょう。

食事パターン

異なる食物や食品群を組み合わせた様々な食事パターンは糖尿病の管理に許容されます。

特定の個人への異なる食事パターンについては、その相対的な便益を立証する有力なエビデンスが示されるまで、医療提供者はパターン間で共通の重要ポイントに焦点を当てるべきです。
・非でんぷん質の野菜に重きを置く。
・添加糖や精製穀物を最小限に抑える。
・高度に加工された食品よりも、可能な限りwhole foodsを選ぶ。

糖尿病患者の炭水化物の摂取量を減らすと血糖値が改善することは多くのエビデンスで示されており、これは個人のニーズや嗜好に合ったさまざまな食事パターンに適用できるかも知れません。

血糖値の目標に到達しない、または、抗血糖薬の服用量を減らすことが優先される2型糖尿病を患う一部の成人では、低炭水化物or超低炭水化物の食事プランで炭水化物の摂取量を減らすことは実行可能なアプローチです。

このセクションでは、1型糖尿病/2型糖尿病/前糖尿病の人たちを対象とした食事パターンの無作為化試験が示すエビデンスに基づいており、各食事群10名以上、且つ、遵守率>50%の試験に限定していますた。 2年以上の長期の無作為化試験は殆ど行われていません。


エネルギーバランスとウェイトマネジメント

過体重/肥満および前糖尿病または糖尿病を有する成人の減量をサポートし、A1C・CVDリスク因子・生活の質を改善するために、医学的栄養療法(MNT)および糖尿病自己管理教育および支援(DSMES)サービスは、身体活動を高めてトータルでエネルギー収支が欠損となるような形での個別の食事プランを含めるべきです。

インスリン投与をしていない、健康に関する読み書きや計算能力が限られている、或いは、加齢で低血糖になりやすい、こういった2型糖尿病の成人に対しては、適切なポーションサイズと健康的な食事を重視した血糖値やウェイトマネジメントに簡単かつ効果的なアプローチが考えられるでしょう。

2型糖尿病では、臨床効果を得るために5%の減量が推奨されており、その効果は漸進的です。最適な結果を得るための目標は、必要に応じて15%以上としても実現可能かつ安全に達成することができます。前糖尿病では、2型糖尿病への進行を予防するための目標は7〜10%です。

特定の2型糖尿病患者では、減量薬や代謝手術と併せてエネルギー欠損となる健康的な食事プランを策定するに当たっては、減量と維持の目標達成、A1Cの低下、CVDリスクの軽減に役立つよう考慮すべきです。

2型糖尿病のリスクがある人には、7〜10%の減量を達成し維持するために、ライフスタイル療法と組み合わせて必要ならば投薬による減量を考えてもよいでしょう。

健常体重の前糖尿病の人には、有酸素運動と筋トレの両方を含むライフスタイル介入と地中海スタイルのような健康的な食事プランを検討する必要があります。

糖尿病および前糖尿病の人については、DSMESおよびMNT実施時に摂食障害の有無を検査・評価し、これら障害に適応する食事療法を考慮すきです。


甘味料

sugar入り飲料はできるだけ水に置換えてください。

sugar代用品を用いて全体のカロリーと炭水化物の摂取量を減らす場合、他の食物による摂取カロリーを増やして代償するのは避けるよう助言してください。


飲酒

アルコールをたしなむ糖尿病または前糖尿病の成人は、ほどほどにすることを勧めます(女性は1日1杯以下、男性は1日2杯以下)。

特にインスリやインスリン分泌促進剤を使用している患者に糖尿病患者には、飲酒後の遷延性低血糖の兆候、症状、および自己管理について教育することを勧めます。 低血糖リスクを減らすための飲酒後の血糖モニタリングの重要性は強調されるべきです。


微量栄養素、ハーブ系サプリメント、および薬剤関連欠乏リスク

根本的な欠乏がない限り、糖尿病または前糖尿病の人たちの血糖に対するマルチビタミンまたはミネラルのサプリメントの利点は、エビデンスによって裏付けられていないので、日常的な使用は推奨されません。

メトホルミンを服用している人のためのMNTには、欠乏がある場合のサプリ選択肢に関するガイダンスとともに、ビタミンB12の状態の年次評価を含めることが推奨されます。

糖尿病患者の血糖を改善するためのクロム、ビタミンD微量栄養素サプリメント、またはシナモン、クルクミン、アロエベラなどのハーブ系サプリメントの日常的な使用は、エビデンスによって裏付けられていないため推奨されません。


MNTおよび抗高血糖薬(インスリンを含む)

糖尿病治療に医学的栄養療法(MNT)を提供するすべての管理栄養士(RDN)は、食事治療プランに関連して投薬の変更を評価し監視する必要があります。

1型糖尿病患者では、炭水化物カウンティングを用いた集中的なインシュリン療法は、血糖の改善をもたらす可能性があるため推奨されます。

毎日のインスリン投与量が一定している成人では、インスリンの作用時間を考慮しながら、時間と量に関して炭水化物の摂取量を一定にすると、血糖が改善され低血糖のリスクを軽減することが出来ます。

炭水化物を含み脂肪やタンパク質が多い混合食を摂取する場合、インスリン投与は炭水化物のカウントだけに基づいて行われるべきではありません。 食事中のインスリン投与量を増やすための慎重なアプローチが示唆されています。 継続的な血糖モニタリング(CGM)または血糖の自己モニタリング(SMBG)を、インスリン追加の意思決定のガイドとすべきです。


糖尿病合併症の予防と管理における食事療法の役割(CVD、糖尿病性腎臓病、および胃腸麻痺)

・CVD
一般的には、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えると、総コレステロールとLDL-Cいずれも低下し、CVDリスクも軽減します。

2型糖尿病では、低炭水化物/高脂肪の食物に置換える食事パターンについてカウンセリングを行うことで、血糖、中性脂肪、およびHDL-Cが改善される可能性があります。

糖尿病および前糖尿病の患者は、一般の人たちに推奨されているのと同量の1日当たり2,300 mg未満のナトリウムを摂取することが奨励されます。

魚(特に脂肪の多い魚)を週2回以上食べることを一般の人々に推奨されていますが、これは糖尿病患者にも当てはまります。

・糖尿病性腎臓病
糖尿病および非透析依存型糖尿病性腎疾患(DKD)の患者では、食事性タンパク質の量を1日の推奨摂取量(0.8 g/kg体重/日)未満に減らすことで、血糖測定、心血管リスク測定、糸球体濾過量の減少に有意な変化はなく、栄養失調のリスクが高まる可能性があります。

・胃不全麻痺
小粒径食品を選択すると、糖尿病関連胃不全麻痺の症状を改善する可能性があります。

高血糖症の矯正は、急性高血糖が胃内容排出を遅らせるため、胃不全麻痺の管理のための一つの戦略です。

胃不全麻痺を伴う1型または2型糖尿病患者では、CGM and/orインスリンポンプ療法がインスリン投与の投薬およびタイミングを補助することがあります。


個人化された栄養摂取


遺伝的、メタボローム、およびミクロビオームの変動を調べるために個別化された栄養学的アプローチを用いた研究では、1型糖尿病、2型糖尿病、または前糖尿病のアウトカムを一貫して改善する特定の因子はまだ同定されていません。