第1116回 糖尿病/前糖尿病の食事療法:ADAコンセンサスレポート2019年版…Part-3


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糖尿病患者のための最善の減量プランは何でしょうか?

減量のためには、主要栄養素の配分や食事パターンに関係なく、エネルギー収支バランスが欠損となる食事プランを続けることが成功のために重要です(160-163)。糖尿病患者を対象にした主要栄養素の様々な組成による食事プランを調査した研究は多いですが、体重、A1C、血清脂質、および血圧への影響に関して一致した結果はみられません(102,103,106,164–171)。

他の食事プランよりも明らかに優れ、糖尿病患者の体重減少のために一般的に推奨することができる特定の食事プランを同定するエビデンスはありません(172)。したがって、食事プランの達成および維持能力を最大化するために、食事の嗜好、個人の健康リテラシー、resources、食物の入手可用性、食事準備の技能、および身体活動を考慮に入れながら、糖尿病栄養療法の個別プランが必要です(173,174) 。
ライフスタイルプログラムを実行していく上で、個別の食事プランは、体重増加・低血糖・低血圧といった副作用を最小限に抑えるべく投薬計画を修正しながら、適切なポーションサイズ、食事の置き換え、行動介入によるカロリー制限をサポートする必要があります。

減量介入は、通常ケアの環境または遠隔医療プログラムで実施することができます(175、176)
一般には、高強度の介入とプログラム参加の度合いは、減量を成功させるための重要な要素です(161-163,175)。


2型糖尿病寛解の可能性への体重減少の役割は何ですか?

2型糖尿病の寛解とは、“減量治療を受けている人々において、少なくとも1年間は糖尿病治療薬なしでの正常血糖の維持(完全寛解)または前糖尿病レベルの血糖(部分的寛解)として定義”されていますが(177,178)、Look AHEAD試験(177)と糖尿病寛解臨床試験(DiRECT)(138)は2型糖尿病の寛解の可能性を強調しています。
Look AHEAD試験では、対照群の2%に比較して、集中的なライフスタイル介入群では被験者の11.5%で部分完解が認められました(177)。 DiRECT試験は、1年後にライフスタイル介入による体重減少が、被験者の46%に糖尿病の寛解をもたらしたこと示しました(138)。
寛解率は体重減少の大きさに関連しており、1年後の体重減少が<5%から≧15%に
増加するに7%から86%に漸進的に増加しました(138)。
食事構成も役割を果たす可能性があります。Esposito et al.によるRCT(179)では、体重減少の違いはわずか2kgであるにもかかわらず、炭水化物量を少なくした地中海スタイルの食事パターン(table3参照)を割り当てられたグループは、低脂肪食グループに比べて部分完解率が高く、1年目に14.7%/6年目には5%でした。因みに、低脂肪食グループはそれぞれ4.7%および0%でした。


1型糖尿病でエネルギー欠損と体重減少をもたらす食事プランの役割は何でしょうか?

1型糖尿病患者の肥満率は著しく上昇しており、現在では1型糖尿病患者の50%以上が過体重または肥満です(180–182)。1型糖尿病リスクのある人たちでは、肥満が1型糖尿病への進行を促進するかもしれないことを最近の研究が示唆していますが(183)、確証的な追試が必要です。
さらに、1型糖尿病を患っている人たちでは、肥満がインスリン抵抗性、血糖変動、微小血管疾患合併症、および心血管危険因子を悪化させる可能性があります(184–188)。したがって、ウェイトマネジメントは過体重や肥満の1型糖尿病患者のケアに欠かせないものとして推奨されています(189-192)。
1型糖尿病患における減量介入を評価するランダム化対照試験は不足しています。後向きコホート内症例対照研究では、ライフスタイルプログラムを介した体重減少が、対照群と比較してインスリン投与量の減少で血糖を改善することが示されました(193)。
エネルギー欠損をもたらす食事プラン、低炭水化物でGI値が低い食事プラン、食物繊維と脂が少なくたんぱく質がリッチな食事プランは、肥満の1型糖尿病患者にはプラスになると考えられます(194)。現在の処、付加的な薬物療法は1型糖尿病患者には適応されていません。
しかし、1型糖尿病で脂肪過多の特定の個人では、 “グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト”や“ナトリウム - グルコース共輸送体2阻害剤”といった薬物療法で(195,196)、体重を減らし血糖を改善できるという予備的証拠があります。さらに、代謝手術は体重を減らし、血糖を改善することができます(197,198)。


摂食障害はウェイトマネジメントにどのように影響しますか?

ウェイトマネジメントについて糖尿病や前糖尿病を患っている人にカウンセリングを行うときは、摂食障害の予防、診断、および治療にも特別な注意を払う必要があります。 摂食障害は食事プランに従うことを困難にする可能性があります(199)。 摂食障害の有病率は変動的ですが、糖尿病患者の18〜40%に影響を及ぼしています(199〜205)。
医療専門家は、摂食障害のスクリーニングを検討し、精神保健専門家に相談した上で、然るべき“食事療法の個別化“を考える必要があります(206)。


SSBs (sugar入り飲料)の摂取は糖尿病リスクに影響を与えますか?

一般の人々の間で、SSB (sugar入り飲料)は2型糖尿病、体重増加、心臓病、腎臓病、非アルコール性肝疾患、および虫歯のリスク増大に大いに関わっています(207)。 例えば、少なくとも1日に1サービング分のSSBを飲むと、前糖尿病の成人で2型糖尿病リスクが26%増加することがメタ解析で報告されています(208)。 別のメタアナリシスでは、通常のソーダを飲むと2型糖尿病リスクが13%増加し、ダイエットソーダは2型糖尿病リスクを8%増加させました(209)。 逆に、SSBを同量の水で置き換えると、2型糖尿病のリスクが7〜8%減少しました(210)。


sugar代替品の影響は?

米国食品医薬品局(FDA)は、安全性のために数種類のsugar substitutes(代用品)を検討し、糖尿病患者を含む一般大衆の摂取を承認しました(211)。この報告では、sugar代用品という用語は高甘味度甘味料、人工甘味料、非栄養甘味料、および低カロリー甘味料を指します。これらには、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムK、アスパルテーム、スクラロース、アドバンテージ、ステビア、およびラオハンゴ(orモンクフルーツ)が含まれます。
Added sugar(添加糖)をsugar代用品に置き換えることで、1日当たりの炭水化物の摂取量やカロリーを減らすことができます。置換えることで、血糖、体重、および心臓代謝コントロールに有益な影響を与える可能性があります。しかし、ADAが支持するsugar代用品が入った飲料の消費に関して、アメリカ心臓協会のサイエンス諮問は「sugar代用品の使用が、体重の減少や血糖値または心臓代謝リスク因子を最終的にもたらすかどうかを決定する十分な証拠はない」と結論づけています(212)。
砂糖代替品を使用しても不健康から健康に好転することはありません。 むしろ、それほど不健康にはならないと云う方が妥当でしょう。
カロリー甘味料をsugar代用品に置換えると、全体のカロリーと炭水化物の摂取量を減らすのに役立つ可能性がありますが(213)、これらの概念を確証するにはさらなる研究が必要です(214)。
sugar代用品による潜在的な悪影響、例えば空腹感・満腹感の不順化、より健康的な食品への置換え、またはカロリー摂取量の認識低下などへの複数のメカニズムが報告されています(215)。SSBの摂取を減らすことを目指している人々には、水に焦点を当てた他の代用品が奨励されています(212)。

糖アルコールは甘味料とは別カテゴリーです。一般の人たちや糖尿病患者による糖アルコール摂取は、sugar代用品と同様にFDAによって承認されています。糖アルコールは砂糖よりグラム当たりのカロリーが少なく甘くありません。
それ故、甘さの程度を合わせるために多量が必要となり、一般には摂取カロリーはsugarsと同レベルになっています(216)。敏感な人が糖アルコールを使う場合は、に胃腸作用を引き起こす可能性とのバランスをとる必要があります。現在、糖尿病患者に対する糖アルコールの潜在的な利益に関する研究はほとんどありません(217)


飲酒が糖尿病関連アウトカムに及ぼす影響は?

医療従事者が糖尿病の人々に飲酒について助言し、飲酒者には適度で賢明な飲酒を奨励することが重要です。Moderateなアルコール摂取は、1型または2型糖尿病患者の血糖に対する急性and/or長期の有害な影響を最小限に抑えます(218–221)。疫学データには、中等度の摂取で血糖の改善とインスリン感受性の改善が示されるものがあります。
アルコール飲料とは、12オンスのビール、5オンスのワイン、または1.5オンスの蒸留酒として定義され、それぞれ約15 gのアルコールを含んでいます(8)。常習的な過剰飲酒は(男性は1日あたり>3杯または1週間あたり21杯、女性は1日あたり>2杯または1週間あたり14杯)は高血糖の一因となる可能性があります(222)。


飲酒は糖尿病患者の低血糖リスクにどんな影響を及ぼしますか?

適量の飲酒は血糖および心血管に有益と考えられていますが、アルコール摂取は糖尿病患者の遷延性低血糖リスクを高める可能性があります(221,224–226)。この影響は、糖新生の抑制、脳へのアルコールの影響による低血糖の自覚低下、and/or低血糖に対する対抗調節反応の低下の結果である可能性があります(227)。
これは、夕刻時に飲酒すると遷延性低血糖の症状が夜間や空腹時に起きることがあるインシュリンまたはインシュリン分泌促進薬を使っている人に特に関係があります。
アルコールを食物と一緒に摂取すると、夜間の低血糖リスクを最小限に抑えることができます(227,228)。遷延性低血糖の認識および管理、並びに飲酒後に頻繁にブドウ糖モニタリングする必要性についての教育を受けることは、糖尿病患者にとって不可欠なことです(227,229)。


飲酒は2型糖尿病の発症リスクにどのような影響を与えますか?

ノードリンカーやヘビードリンカーに比べて、ほどほどの(moderate)アルコール摂取が2型糖尿病の発症リスクを減じる効果があることを包括的レビュー/メタアナリシスが示唆しています(222,230–232)。
ほどほどのアルコール摂取量6〜48g /日(0.5〜3.4 drinks)は、2型糖尿病の発症率が30〜56%低いことが報告されています(9,222,230〜232)。
Knott et al.は、女性と非アジア人を対象として、1日当たりアルコール摂取<63gレベルで2型糖尿病のリスクが減少し、10–14 g (approximately 1 drink)で減少がピークになったことを示しています(232)。

アルコール飲料と2型糖尿病の発生率の影響を調べたメタアナリシスと系統的レビュー(233)では、。ビールや蒸留酒による小さなリスク減少に比べて、ワインによる糖尿病リスクは有意に低い。
ビール・蒸留酒・ワイン3種類の飲酒量と糖尿病リスクの間にはU字型の関係があり、リスクが最も低いのはワイン/ビールでは1日当たり20~30g、蒸留酒で1日当たり20~30gでした。糖尿病発症率の減少はワイン20%、ビール9%、蒸留酒5%でした。

疫学的エビデンスは飲酒と糖尿病リスクの間の相関関係を示していますが、ノンドリンカーに飲酒を始めることを示唆していません。
結局のところ、飲酒は個人の選択ですが、飲酒に関するカウンセリングを行う際には、飲酒歴、宗教、遺伝的要因、メンタルヘルス、および薬物相互作用などの付加的な要因を考慮する必要があります。


糖尿病関連のアウトカムへの微量栄養素の有効性は?

根本的な欠乏がない場合、糖尿病または前糖尿病の人々の血糖目標を達成したり、CVDの危険因子を改善したりするためのビタミンやミネラルの栄養補助食品の使用を、科学的エビデンスは支持していません(234-236)。
血糖目標を達成していない糖尿病患者は、微量栄養素欠乏のリスクが高い可能性があるので(237)、少なくとも五大栄養素の推奨所要量をカバーするバランスの取れた食事を続けることが不可欠です(234)。
妊娠を計画している女性、セリアック病を患っている人、高齢者、菜食主義者、および全体的なカロリーまたは1つ以上の主要栄養素を制限する食事プランを遵守している人など、特別な人たちに対しては、マルチビタミンサプリメントは正当化されます。

血糖および脂質代謝に対するクロムサプリの効果に関する系統的レビューでは、エビデンスが不十分な study qualityや方法論および結果の不均一性によって制限されていると結論付けています(239,240)。
糖尿病患者の血糖を改善するためにマグネシウム(241,242)とビタミンD(243–253)のサプリを評価した臨床研究からのエビデンスも同様に矛盾があります。しかしながら、マグネシウムの状態が前糖尿病患者の糖尿病リスクに関連している可能性があることを示唆するエビデンスが出てきています(254)。


糖尿病の管理におけるハーブサプリメントの役割は何ですか?

栄養補助食品やハーブ製品は、標準化も規制もされていないことを考慮することが重要です(255,256)。 医療従事者はサプリメントやハーブ製品の使用について尋ねるべきであり、医療従事者および糖尿病患者または糖尿病リスクがある人たちは、これら製品の潜在的な利点について議論して、費用や副作用ならびに薬物相互作用と比較検討してください。
ハーブや微量栄養素のサプリメントの多様性は、この分野での研究の難易度を高め、有効性を結論づけることを難しくします。 今日まで、血糖を管理するためのハーブサプリの使用を支持するエビデンスは限られています。
公衆の利益と決定的なデータが欠如しているため、国立衛生研究所のNational Center for Complementary and Integrative Healthは、補完的な医学に関する資金提供と研究の実施することによって、重要な公衆衛生と科学問題に答えることを目指しています。


メトホルミンの使用はビタミンB 12の状態に影響を与えますか?

メトホルミンはビタミンB 12欠乏と関連しています。最近の系統的レビューでは、メトホルミン治療中の人たち(特に貧血や末梢神経障害のある患者)のビタミンB 12濃度の年次血液検査を検討することを推奨しています(257)。
この研究では、貧血がなくてもB12欠乏が高頻度に見られることがわかりました。 メトホルミンを服用している人々のB12欠乏症の正確な原因はわかっていませんが、メトホルミンによる吸収不良を示す研究もあり、他の研究ではカルシウムサプリによるB12状態の改善が示唆されています(258-261)。
標準治療はB12注射でしたが、新しい研究は高用量の経口サプリが同程度に効果的である可能性があることを示唆しています(258,259)。 この分野ではもっと研究が必要です。


服薬調整におけるRDNの役割は何ですか?

糖尿病治療において医学的栄養療法(MNT)を提供するすべての管理栄養士(RDN)は、食事治療プランに関連して投薬の変化を評価しモニターするべきです。 他の糖尿病治療提供者とともに、高度な実習トレーニングおよび臨床的専門知識を有するRDNは、組織が承認した糖尿病投薬プロトコルの促進および維持において積極的な役割を果たすべきです。 インスリンおよび他の血糖低下薬のための組織承認プロトコルの使用は、治療上の慣性を減らしたり、低血糖と高血糖のリスク軽減に役立てることができます(12,16–18,262,263)。


インスリン療法の種類と強度に応じて、食事療法はどのように変わるべきですか?

基礎-追加インスリン療法を用いている1型糖尿病の人々には、食事摂取量(特に炭水化物の摂取量)に基づいてインスリンを調整することに関するガイダンスを、MNTの主要な焦点として含めるべきです(9,264–270);最近または予想される身体活動;および血糖データ。
食事療法を含む集中的なインスリン管理教育プログラムは、A1C(9,264,268,271-273)と生活の質(9,274)を改善することが示されています。毎日一定量のインスリンを投与している人は、毎日の炭水化物摂取は食事の時間と量に関しては一致するようにすべきです(9,275,276)。

高脂肪and/or高タンパク質の混合食についての最近の研究は、炭水化物と一緒に高タンパク質and/or高脂肪の混合食に対する血糖反応が個人間で異なるという先行の知見を支持し続けています。したがって、高脂肪and/or高タンパク質の混合食に対してインスリン投与量を増やすための慎重なアプローチは、食後3時間以上に起こる可能性がある遷延性高血糖に対処するために推奨されます(277–290)。
インスリンポンプを使用する場合、高脂肪and/or高タンパク質の混合食に対して、分割ボーラス(追加)機能によるbetterなインスリンカバレージが可能となるでしょう(278,281)。食事の3時間後にグルコースをチェックすることは、追加のインスリン調整(すなわちボーラスの増加または中止)が必要であるかどうかを判定するのに役立ちます(278,290)。
これらのインスリン投与アルゴリズムは、食事量を計算するためには予想される栄養素摂取量の決定を必要とするので、健康リテラシーおよび計算能力を評価すべきです。インスリン投与の決定の有効性は、個々の反応を評価しインスリン投与量の調整を導くため、SMBGまたはCGMへの構造化アプローチで確認されるべきです。


包括的な糖尿病食事養療法は心血管リスク因子の減少をサポートしますか?

血糖値の傾向、血圧、および脂質プロファイルを最適化するようにデザインされた食事プランに基づく食事療法は、糖尿病の管理に重要であり、且つ、CVD/CHD/脳卒中のリスクを軽減させることができます(9)。血糖目標を達成し、心血管や高血圧リスクのさまざまなマーカーを減らすための食事療法の役割は、臨床試験の結果が支持しています(9,24,291–293)。


CVD及び糖尿病を有している患者、又はそのリスクがある人たちのための脂肪摂取に関する考慮事項は何でしょうか?

 総脂肪

高脂肪/低炭水化物の食事パターンが心臓代謝リスク因子に及ぼす影響を調べる研究が増えています。2つの系統的レビューでは、低脂肪食プランと比較した低炭水化物食プランの利点が、2型糖尿病の治療における血糖およびCVDリスクパラメータ関連で示されています(106,111)。

 飽和脂肪酸

DGA 2015–2020年は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に置き換えることで、飽和脂肪酸の摂取カロリーを10%未満に抑えることを推奨しています(8)。食事中の飽和脂肪酸を減少させるための科学的根拠は、アテローム性動脈硬化症の一因となっているLDL-Cの増加における飽和脂肪酸の影響に基づいています(294)。

食事性脂肪とCVDに関するPresidential Advisoryで、American Heart Associationは、飽和脂肪酸の摂取量を減らし、それを不飽和脂肪酸(特に多価不飽和脂肪酸)に置き換えると、CVDの発症率が低下すると結論付けました(295)。糖尿病患者を対象としていないランダム化試験のメタ解析で、飽和脂肪酸をトータルカロリーの約17%から約9%に減少させると、CVDイベントのリスクが17%減少したが(ハザード比0.83;95%CI 0.72–0.96)、脳卒中、心血管死亡率、または全死亡率の減少は観察されなかった。
研究のサブグループで、飽和脂肪酸を炭水化物またはタンパク質ではなく多価不飽和脂肪に置き換えると利点が生じることが示唆されています(296)。観察研究の系統的レビューでは、飽和脂肪酸は全死因死亡率、CVD、CHD、虚血性脳卒中、または2型糖尿病と関連していなかったが、観察研究に共通のlimitations(限界)が指摘されています(297)。

さらに、自己申告による糖尿病患者の7%を対象とした最近の大規模な前向き研究では、飽和脂肪酸の増加は総死亡リスクの低下と関連していることが報告されています(ハザード比0.86;0.76-0.99、P for trend = 0.0088)(298)。糖尿病患者の50%近くを対象としたPREDIMED試験では、一価不飽和脂肪と多価不飽和脂肪の摂取はCVDと死亡のリスク低下と関連していたのに対し、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の摂取はCVDのリスク増加と関連していました。
食品中の飽和脂肪酸を一価不飽和脂肪酸または多価不飽和脂肪酸へ置換える、または食品中のトランス脂肪酸を一価不飽和脂肪酸へ置換えると、CVDとの逆相関を示しました(299)。

一般に、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸、特に多価不飽和脂肪酸、に置き換えると、総コレステロールとLDL-Cのいずれも大幅に低下し、オリーブ油やナッツなどの植物由来の一価不飽和脂肪酸に置き換えるとCVDリスクが低下します。飽和脂肪酸を炭水化物に置き換えると、総コレステロールとLDL-Cが減少しますが、中性脂肪が大幅に増加しHDL-C(善玉コレステロール)が減少します(299,300)。

 一価不飽和脂肪酸

9つのRCTの最近のメタ解析は、対照群と比較して、オリーブ油やナッツなどの植物由来の一価不飽和脂肪酸が多い地中海スタイルの食事パターンが、被験者(2型糖尿病)の血糖、体重、および心血管リスク因子のアウトカムを改善することを示しました(301)。 24の研究の系統的レビューとメタ解析では、1,460人を対象として、一価不飽和脂肪酸の多い食事プランと炭水化物の多い食事プランの効果を比較しました。
一価不飽和脂肪の多い食事プランでは、空腹時血糖、トリグリセリド、体重、および収縮期血圧が大幅に低下し、HDL-Cも大幅に増加しました。亦、系統的レビューとメタ解析では、44人を対象として一価不飽和脂肪酸が多い食事プランと多価不飽和脂肪酸が多い食事プランを比較していますが、一価不飽和脂肪の多い食事プランは空腹時血漿グルコースの有意な減少をもたらしました(63)。

 多価不飽和脂肪酸

一般的に推奨されているように、脂肪の多い魚に見られる長鎖オメガ-3脂肪酸EPAおよびドコサヘキサエン酸(DHA)を含む食品を増増すことが糖尿病患者に推奨されています。その理由は、リポタンパク質、心臓病の予防、および健康上のアウトカムの関連で糖尿病患者にとって有益な効果があるためです(302,303)。

ベジタリアンやビーガンの食事パターンを実践している人たちにとって、亜麻、クルミ、大豆などの植物性食品に含まれるオメガ-3α-リノール酸(ALA)は、飽和脂肪酸の多い食品の代替品として妥当でありCVD効果もあると考えられています。しかし、そのエビデンスは決定的ではありません。

心血管イベントの予防または治療のために、糖尿病を患っているすべての人にオメガ3(EPA/DHA)サプリメントを推奨することを決定的に裏付けるエビデンスはありません
最新のASCEND試験(糖尿病における心血管イベントに関する研究)では、1g /日の用量でのオメガ-3脂肪酸サプリを割り当ててプラセボ群と比較したが、CVDの証拠がない糖尿病患者に心血管の利益をもたらさなかった(68a、304 - 305)。
オメガ-3脂肪酸サプリは、ランダム化試験でCVDイベントや死亡率を減少させませんでしたが、中性脂肪の減少を必要とする人たちには有用性があるかもしれません(304,306)。
参加者の13%が2型糖尿病を患っていたThe Vitamin D and Omega-3 Trial (VITAL)試験では、1gのオメガ-3脂肪酸を補給しても、主要な心血管イベントの発症率は低下しませんでした(305)。しかし、Reduction of Cardiovascular Events with Icosapent Ethyl-Intervention Trial(REDUCE-IT)では、の参加者823人のうち57%が糖尿病を患っていましたが、心血管イベントの減少では、2gのイコサペントエチルを1日2回(1日総投与4g)処方すると、プラセボ群と比較して心血管イベントが有意に25%減少しました(68a)。

 トランス脂肪酸

7つのRCTのメタ解析は、トランス脂肪酸の摂取を増やしても、血糖、インスリン、またはトリグリセリド濃度の変化をもたらさなかったが、総コレステロールとLDL-Cの増加とHDL-C濃度の減少をもたらしたことを示しました(307)。亦、トランス脂肪酸は全死因死亡率、総CHD、およびCHD死亡率と関連しています(297)。


ナトリウム摂取量を減らすと、糖尿病患者の血圧やその他の心血管系リスク因子を減らすことができますか?

多くの健康団体は、現在のナトリウムの平均摂取量は1日3,500 mg(308)を超えていることを認識しており、高血圧の予防および管理のためには減らす必要があります(8,309-312)。ナトリウムを一般的な推奨値である<2,300 mg /日まで減らすと、血圧に有益な効果があることが実証されていますが(118)、さらに減らすには注意が必要です。
1型糖尿病(313)および2型糖尿病(314)の人たちの尿中ナトリウム排泄量を測定したいくつかの研究では、死亡率の増加はナトリウム摂取量が最も少ないことに関連していることが示されています。Ongoing Telmisartan Alone and in Combination With Ramipril Global Endpoint Trial (ONTARGET)試験からのデータの二次分析では、1日当たり3g 未満および7g未満のナトリウム排泄いずれも、2型糖尿病患者の死亡率増加と関連したことを示唆しており、一般的な推奨よりもナトリウム摂取量を減らすことの潜在的な利点vs害についての継続的な論争につながります。
糖尿病と高血圧を併発している人たちへの有益性についての明確な科学的証拠がないので(313,314)、1日当たり2,300 mg を大幅に下回るナトリウム摂取目標は個人ベースでのみ考慮されるべきです。ナトリウム摂取の推奨を個別化する際には、食品の好み、嗜好性、入手可用性、および新鮮または特別な低ナトリウム製品に付加される費用などの問題を慎重に考慮する必要があります(316)。


糖尿病と腎臓病を併発している人たちにとって、タンパク質の必要性は異なりますか?

歴史的には、低タンパク質の食事プランは、典型的にはアルブミン尿の改善を伴うが推定糸球体濾過率への明らかな影響はなく、DKD患者のアルブミン尿および慢性腎臓病の進行を減少させるように助言されました
さらに、低タンパク質の食事療法プランがDKD患者の栄養不良につながる可能性がいくつか示されています(317–321)。腎臓病のない糖尿病患者の1日平均のタンパク摂取量は、通常1〜1.5 g / kg体重/日または総カロリーの15〜20%です(45,146)。

DKDの人たちがタンパク質の摂取を平均質摂取量よりも少なく制限する必要があることを、エビデンスは示唆していません。 DKDおよびマクロアルブミン尿症の人々にとって、より大豆ベースのタンパク源に変更すると、CVDリスク因子が改善するかもしれませんが、タンパク尿が変わることはないようです(322、323)。


糖尿病性胃不全麻痺はどのように管理されていますか?

胃不全麻痺の管理に精通しているRDNによる診察は、治療目標の設定と維持に役立ちます(324)。治療目標には症状の管理と軽減が含まれます;体液、電解質、および栄養素の欠乏および血糖の不均衡を修正する;適切な薬物療法を用いて原因を突き止めることができます(227)。
急性高血糖症は胃内容排出を遅らせるので、高血糖症を矯正することは胃不全麻痺の管理のための1つの戦略です(325,326)。飲食物の摂取量を変えることは、特に軽度の症状を呈する人の間では主要な管理戦略です。

胃不全麻痺の人は、少量づつ頻繁な食事が役に立つかもしれません。大量の固形食品を摂取すると胃内容排出時間が長くなるため、固形食品をより多くの液体カロリーで置き換えることは有益かもしれません(327,328)。
また、量の多い食事は下部食道括約筋圧を減じ、胃の逆流が起こり、さらに悪化する可能性があります(327)。

RCTの結果から、小粒径(2 mm)の食品を重視する食事プランは、胃腸症状の重症度を軽減する可能性があることが示されました(329)。小粒径食品は、「フォークで細かく砕くことが容易な食品」と定義されています。
精製/加工されていない全粒穀物や種子、殻、糸状繊維、膜を含む食品など高繊維食品は除外されるべきです。緑豊かなグリーンサラダ、生野菜、豆、新鮮な果物、および
脂の多い又は硬い肉のような食べ物など、糖尿病患者に一般的に推奨される食品の多くは、胃不全胃には粉砕/消化するのに最も困難な食品に属します。
特に、胃不全麻痺に対する食事療法介入の殆どが、経験的研究よりも病態生理学および臨床判断の知識に基づいています(227)。

インスリンポンプの使用は、胃不全麻痺を伴う1型糖尿病およびインスリンを必要とする2型糖尿病を有する人にとって、もう一つの選択肢でしょう(330)。小規模だがポシティブな12か月間の試験では、インスリンポンプの使用による1.8%のA1C減少および入院の減少が報告されています(331)。
インスリンポンプを使用して、一貫した基礎インスリン注入、ならびに必要に応じて食事中のインスリン送達用量を修正することができます。可変ボーラス機能を使用すると、食後高血糖や低血糖のリスクを減らすのに役立ちます。


糖尿病性胃不全麻痺における栄養失調のリスクはどのように管理されていますか?

胃不全麻痺の人が目標体重を下回る場合は、経口、経腸、または非経口栄養の形での栄養補給を考慮すべきです(327)。 意図することなく3ヵ月にわたって通常体重の5%の減少または6ヵ月で10%の減少は重度の栄養失調を示しています。 他の栄養リスクパラメータには、体重は理想体重の<80%、BMI<20、或いは、1ヵ月で5ポンドの減量、またはベースライン体重の2.5%が含まれます。


遺伝的、メタボローム、またはマイクロバイオーム変異体、あるいは他のタイプの個別化された栄養処方は、血糖または他の糖尿病関連のアウトカムに影響を及ぼしますか?

現在では、遺伝情報、メタボローム情報、およびミクロビオーム情報に基づいてガイダンスを個別化することを目的とした栄養カウンセリング方法は、精力的な研究の分野です。テスティングは消費者向け直接の広告でavailableになりました。
興味深い幾つかの研究が、例えば、臨床的およびミクロバイオームプロファイルによって予見可能な標準化された食事に対する血糖応答において、広い個人間の変動性を示しています(332)。しかし、現時点では、アウトカムの予見に使用されるマーカー、研究対象の母集団および栄養素、並びに見いだされた関連性の多様性に因り、これらの有用性に関して明確な結論を引き出すことはできません。

さらに、全体的な知見は、糖尿病、前糖尿病、またはインスリン抵抗性のリスクが高いことを示すマーカーを有する人たちが、カロリー、炭水化物、または飽和脂肪酸の摂取量を減らしたり、食物繊維やたんぱく質の摂取量を増やすときのリスクが低いことを示す現存の臨床試験や観察研究によるエビデンスを支持する傾向があります(333-333)。


結論

理想的には、前糖尿病または糖尿病と診断されたときに、糖尿病自己管理教育への参加を介して、前糖尿病や糖尿病の人および管理栄養士と共同して食事プランを作成するべきである。食事療法の勧告は、個人の生活環境、好み、病気の経過の変化に基づいて定期的に調整する必要があります(1)。

糖尿病医療提供者との定期的なフォローアップも重要です。糖尿病と診断された際によく聞かれる質問の1つは “What can I eat?” です。エビデンスに基づく糖尿病食事療法の介入に広く関心が寄せられていますが、大規模で充分な栄養素の研究は、糖尿病の他の領域に比べて大きな後れを取り続けています。

残念ながら、国のデータによると、殆どの糖尿病患者は食事療法や正式な糖尿病教育を受けていません(4,9,16,20)。
アクセス、臨床アウトカム、および費用対効果を改善するための戦略には以下のものがあります。

・照会への障壁を減らし、MNTとDSMESへの自己委託を許可すること。

・医療管理と統合された対面型または技術対応型の糖尿病食事療法および教育を提供すること(9、12、13、15、16、19、22、291〜293、338〜342)。

・患者によって作成された健康分析データに基づいて、個別的なフィードバックと必要性に適合した教育を提供するため、個々の患者と健康管理チームとの間の双方向のコミュニを含む工学的解決法を策定すること。(38,264,343)。

・文化的に適切で継続的な支援と臨床的に連携したケア調整を提供し、MNTとDSMESの届く範囲を改善するために、地域保健医療従事者と同僚コーチの利用を増やすこと(15、19、23、38、343、344)。

複数の食事要因が血糖管理とCVDリスク要因に影響を与え、それら要因の組み合わせの影響が相当なものになる可能性があることを考えると、栄養エビデンスの評価は複雑です。エビデンスの見直しに基づくと、1型糖尿病、2型糖尿病、および前糖尿病の個人では、知識のギャップが依然として存在し、栄養素および食事パターンに関するさらなる研究が必要であることは明らかです。

将来の研究では次の点に目を向ける必要があります。

・まざまな食事パターンの比較と影響に対処し、補足的なアドバイス(ストレスの軽減、身体活動、または禁煙など)を管理する必要があります。

・減量が他のアウトカムに与える影響(減量のみよる利点、に関係なく、食事計画は有益であり、減量に関係なく利点を示すことができる)。

・文化的または個人的な嗜好、心理的支援、共起する状況、社会経済的地位、食料不安、およびその他の要因が、食事計画およびその有効性との整合性にどのような影響を与えるか。

・長期的な臨床的意義のあるアウトカムへの影響をよりよく理解するために、試験の期間と規模を拡大する必要がある。

・MNTとDSMESを異なる人種/民族グループと社会経済グループに合わせる。

・技術(例えば、モバイル技術、アプリ、ソーシャルメディア、技術対応ツールおよびインターネットベースのツール)によって支援された異なる配信方法を比較する。

                                    以上