第1120回 食欲の真実


運動するとお腹が空いて食欲が高まるのでダイエットには逆効果である。
これってホントですか?
いいえ、間違った考え方です!

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食欲の制御
食欲/摂食は多くの経路で複雑な制御を受けていますが、'homeostatic(恒常的)制御 or hedonic(快楽的)制御に2大別されます。

前者は、脳では視床下部や脳幹が主に関与し、消化管・肝臓・膵臓・脂肪組織など末梢臓器からのエネルギーバランス(エネルギー代謝/蓄積状態)、栄養素、グレリン/GLP-1など消化管ペプチド、脂肪細胞からのレプチンなどのシグナルにより調節されます。
消化管ペプチドは主に迷走神経を介して、レプチンは血流を介して脳 へ 摂 食 調 節 情 報 が 伝 達 さ れ ます。

後者は、視覚、嗅覚、味覚、食後の快感や満足感、記憶などを含めた神経系全体の中枢的な働きをする大脳辺縁系や大脳新皮質などからの制御を受けています。

最近の研究で、Sugar/脂肪/塩分が多く含まれているhyperpalatable(超美味)の加工食品に、薬物依存症やアルコール依存症と同じ依存性/常習性があることが示されていますが、これは報酬系による制御 (Reward system)で後者に含まれ、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質が関係します。
レプチンは脳の視床下部のみならず報酬系の領域にも働きかけて、食欲を抑制することが分かりました。

両者の相互作用については十分に解明されていませんが、ルイジアナ州立大学のDr Berthoud HRから、“認知的(cognitive)要因および感情的(emotional)要因はエネルギーバランス制御を圧倒するが、栄養素の可用性シグナルに応じて調整される”ことが報告されています。


運動は基本的に食欲を抑える

米国 Brigham Young Universityの研究で、活発なウォーキングが食べ物に対するモチベーションを低減させることが示されています。
朝45分のウォーキング後に、頭皮に電極が取り付けて食品(介入群)と花(対照群)の画像を見せながら神経活動を測定した。一週間後に運動は行わず同じ試験をおこなった。その結果、運動群では食品画像への脳の注意反応が弱まっただけでなく、その日の身体活動量が高まった。更に、運動しない日と摂取量は同じであった…第316回 運動は食欲を抑える

Cornier MA et al.
“The effects of exercise on the neuronal response to food cues”
慢性的な運動は、主にposterior attention network(頭頂葉、上丘、視床枕)や島皮質など摂食調整で重要と考えられている脳領域において、視覚的なfood cueに対するニューロン反応を減弱させる。

Alajmi Net al.
食事制限によるエネルギー欠損で代償的に食欲の昂進、消化管ホルモンの変化、及び摂食反応を示したが、90分のランニング(70% VO2 max)には反応しなかった。

Unick JL et al.
40分の中強度ウォーキングでGLP-1は低減したが、グレリン/空腹感/エネルギー摂取量に変化は認められなかった。


Take₋home message
個人差によるバラツキはありますが、『運動後に食欲や摂食が代償的に高まることは無い』ということは多くの科学的エビデンスが示しています。


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