第1121回 有酸素運動は空腹でするのが体脂肪の減少にBetter?


空腹状態(Fasted)および摂食後(Fed)の有酸素運動が、食欲、パフォーマンス、エネルギー消費量、体重、筋量に与える影響を比較しました。

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食欲

Deighton K et al. [1]
健康な適正体重の男性12名を対象とし、絶食状態および食後(標準テスト食;1日摂取エネルギーの30%で主として炭水化物)に70% VO2 maxの強度で1時間のランニングをトレッドミルで行った。その結果は、空腹状態に比べ食後の運動による食欲抑制の方が大きかった。これは運動中および運動後に急性的に起きる運動誘発引性anorexia(食欲不振)で、その後に自由食を割り当てたが、1日の総摂取量では有意差はなかった。亦、両群ともにエネルギー収支バランスは欠損を呈したが有意な群間差はなかった。

まとめると、
第1120回 食欲の真実” で説明したように、運動は食欲に有意な影響を及ぼします。しかし、絶食(fasted)または摂食(fed)かは重要ではありません。午前中にいずれの状態で運動しても、その後に食事をすると24時間の測定では実際的な差異はありません。


運動パフォーマンス

空腹状態(Fasted)と摂食後(Fed)のトレーニングを比較すると、トレッドミルでの70%VO2でランニング中のphysical output及び自覚的運動強度(RPE)に有意差はありません[1]。
しかし、時間が経つにつれてFasted trainingは、運動強度が最大レベルではパフォーマンス向上 (training adaptations)の点において、peri-workout carbohydrate(トレーニング前に炭水化物の摂取)に及びません(3,5)
最大下運動の場合はAround Workout Nutritionで炭水化物を摂取する利点は明らかになっていません。

まとめると、
最大下運動では、空腹状態(Fasted)と食後(Fed)のトレーニングにまったく差がないようです。
高強度のレジスタンストレーニングやHIITなど最大運動では、炭水化物を摂取することはトレーニングへの適応性を高める目的では、Fasted Trainingより有益と思われます。


エネルギー消費量と体重

絶食時(Fasted)と食後(Fed)のトレーニングはエネルギー消費量に有意差はありません。しかし、呼吸商RERは絶食時の方が低かった。これは絶食時には脂肪酸が多く使われ、食後は炭水化物が多く使われたことを示しています。[1]

エネルギー源としての脂肪利用の増幅は、“運動の抗高脂血”、つまり、脂質の過剰摂取で起こる血中脂質の増加を正常化する効能の基礎となっていると考えてよいでしょう。
しかし、このような増幅は、炭水化物がプリロードされているときは発生しないし(6)、炭水化物のGI値は脂肪酸化(燃焼)に有意に影響しません。[7]

別の角度から見ると、耐久性運動では脂肪酸に由来するエネルギー比率が大きいですが代謝率には変化はありません。Fasted training中に血糖値の低下(低血糖の危険性)が抑止されることが6週間の研究で示されています。[4]

呼吸商/エネルギー燃料として使われる脂質の割合は、運動誘発性の脂肪減少と経時的に高い相関性があります[13]。6週間の耐久性トレーニング(∼70% V02max)で、脂肪酸化の最大率がFasted trainingで+21%高まったが、運動前に炭水化物を摂ると+6%のみでした。

Schisler JA et al.の研究[8]では、Fed、Fasted 16~18 h、Fasted+炭水化物の3条件で、最大酸素摂取量70%VO 2 maxで90分走ったが、自覚的運動強度(RPE)、呼吸商、血糖値、及び乳酸に顕著な違いは無かった。運動後の遊離脂肪酸はFed及びFasted群のみで高かった。

Fasted群の優位性を報告する一つの研究を紹介します。
ラマダン期間に行われたTrabelsi K et al.の研究では、Fasted群とFed群に割り付け、それぞれ16:00~18:00及び21:30~22:30の時間帯に、40~60分の有酸素運動をHR max 60~80%の強度で行った。因みに、ラマダン中は夜明けから日没まで食事だけでなく飲水も禁止されています。[2

その結果、体重減少はFasted群ではラマダン15日目で1.4%減、29日目で1.9%減だったが、FED群は29日目で2.6%減でした。
体脂肪率はFasted群でラマダン15日目に6.2%減だったが、Fed群では減少しなかった。

マイコメント
この研究には幾つかの疑問があります。
先ずは、ラマダンというunusual期間に行われていることです。
次に、RPEとセッション(分)に顕著な群間差はありませんが、1日当たりのエネルギー摂取量はラマダン前半でFasted群2,466 ± 143kcal に対し、FED群3,056 ± 183kcal(+590kcal)となっています。
更に、Table-4の体重と体脂肪率を纏めると下表の通りとなりますが、上述した試験結果と矛盾します。

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加えて、本研究も自己申告であり、人口統計はパン屋に聞く方が良いと揶揄されるアラブ国のお国柄を考えると、正確性に疑問が残ります。

もう一つのVan Proeyen K et al.の6週間の研究[4]では、Fasted群とFed群(炭水化物プレロード)を比較していますが、体脂肪量と体重に有意な群間差は認められませんでした。

Journal of Functional Morphology and Kinesiology
Daniel Hackett et al.
“Effect of Overnight Fasted Exercise on Weight Loss and Body Composition: A Systematic Review and Meta-Analysis”

絶食状態(fasted)および摂食状態(fed)での有酸素運動が体重減少と体組成(体脂肪率/除脂肪体重)に及ぼす効果を比較するために系統的レビューを行いましたが、効果量はとるに足らないレベルでした。著者は、「fasted or fedは問題ではなく、一定の期間エネルギー収支バランスを欠損にすることが肝要である」という考え方を支持しています。[12

まとめると、
空腹状態での運動は、エネルギー燃料として使われる脂肪酸の割合を高めるけれども、
一定期間においてカロリー摂取量とは無関係に脂肪減少or体重減少を増幅させる効果はありません。


筋肉量

45分の低強度(40% VO2max)でのウォーキング後に、筋タンパク質の代謝回転(同化と異化)は老若を問わず短期的に高まりました。[9

Harber MP et al.はFasted及びFedでの有酸素運動後(回復期)のmixed-muscle fractional synthesis rate (FSR=筋肉タンパク質合成)と遺伝子の発現について調べました。この研究での運動はcycle ergometry (60分at 72 ± 1% VO2 max)です。
運動後のFSRは対照群(安静)に比べてFast群/Fed群ともに高まりました。
しかし、運動後2〜6時間のFed群でのFSR増は測定可能なほどではありませんでした。更に、運動後に摂取しても、筋タンパク質異化亢進に主要な役割を果たすユビキチン・プロテアソーム系の因子の発現は低減しませんでした。[11

Van Proeyen K et al. は、空腹状態での持久性運動後の回復期にeEF2が再活性することを示しました。eEF2は筋たんぱく質合成に不可欠な因子です。
この研究では、Fed群は運動前と運動中に炭水化物リッチの食事を摂りました。運動は75% VO2 maxの強度で1~2時間x週3x6週間です。
Pre-testの運動でeEF2のリン酸化は2倍に高まりましたが、両群ともに4時間後にはベースラインに戻りました。しかし、post-testでは炭水化物を十分に摂ったFed群に比べて、Fast群ではeEF2の脱リン酸化が低減しました。[10

取りまとめると、
除脂肪量を経時的に評価し、絶食時と摂食後の有酸素運動を比較した研究では、筋肉量の差は示されていません。


Take-home Message

スプリント、HIIT、ヘビーリフティングなど強度の高い運動では、1~2時間前に食べておかないとパフォーマンスが低下する可能性が高いです。
しかし、ウォーキングやジョギングをする人たちは絶食を選ぶ傾向がありますが、低中強度の有酸素運動で絶食か食後かは重要ではありません。
あなたの健康度、体組成、社会的制約、環境などの観点から、あなたが問題なく長く続けられる方法がベストです。


参考記事
The top 19 nutrition myths of 2019
Examine com.

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引用文献
1. Appetite. 2012 Jun; Appetite, energy intake and resting metabolic responses to 60 min treadmill running performed in a fasted versus a postprandial state.

2. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2012 Feb; Effects of fed- versus fasted-state aerobic training during Ramadan on body composition and some metabolic parameters in physically active men.

3. J Sci Med Sport. 2010 Jul; Adaptations to skeletal muscle with endurance exercise training in the acutely fed versus overnight-fasted state.

4. J Appl Physiol (1985). 2011 Jan; Beneficial metabolic adaptations due to endurance exercise training in the fasted state.

5. J Sports Sci. 2003 Dec; the effect of pre-exercise carbohydrate feedings on the intensity that elicits maximal fat oxidation.

6. J Physiol. 2010 Nov; Training in the fasted state improves glucose tolerance during fat-rich diet.

7. Appl Physiol Nutr Metab. 2006 Oct; Acute effects of exercise timing and breakfast meal glycemic index on exercise-induced fat oxidation.

8. J Phys Act Health. 2007 Jan; Running to maintain cardiovascular fitness is not limited by short-term fasting or enhanced by carbohydrate supplementation.

9. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2004 Sep; Postexercise protein metabolism in older and younger men following moderate-intensity aerobic exercise.

10. Eur J Appl Physiol. 2011 Jul; Training in the fasted state facilitates re-activation of eEF2 activity during recovery from endurance exercise.

11. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2010 Nov; Muscle protein synthesis and gene expression during recovery from aerobic exercise in the fasted and fed states.

12. Journal of Functional Morphology and Kinesiology Effect of Overnight Fasted Exercise on Weight Loss and Body Composition: A Systematic Review and Meta-Analysis

13. Metabolism. 2009 Sep; Individual responsiveness to exercise-induced fat loss is associated with change in resting substrate utilization.







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