第1125回 歳をとるにつれて体重が増えるのは何故か?

evolvingobesity.jpg

多くの人が加齢に伴う体重増加を体験している。
この問題を解消するには、脂質代謝回転(脂質の蓄積および除去する能力)が脂肪組織量をどのように調節するのかを理解することが重要だそうだ。
スウェーデン・カロリンスカ研究所のArner & Spaldingら研究チームは、『加齢に伴い脂質の除去率が低下し、脂質の取込みが相互に調整できないと、体重は増加する。実質的な体重減少は、脂質除去の変化ではなく、脂肪組織の脂質取込み率によって引き起こされる。さらに、ベースラインで脂質除去率が低い人は、減量後も体重が安定している可能性が高い』ことを明らかにし、2019年9月9付けNature Medicineに掲載された。

同研究チームは、54名の男女の脂肪細胞を平均13年に渡って追跡調査した。
その間に体重が増えた者も減った者もいたが、全員が脂肪組織の脂質代謝回転率の減少を示した。それに合わせて摂食量を減らさなかった者は平均20%体重を増やした。

(注)体脂肪量は脂肪細胞トリグリセリドの貯蔵と除去のバランスの結果です。食物カロリーが過剰に供給されると体脂肪量が増加しますが、空腹時や運動時などエネルギーが不足した状況では、脂肪細胞に蓄えられたトリグリセリド(体脂肪)は加水分解され、脂肪酸とグリセロールとなって血中に放出され(脂肪分解→脂肪動員)、延いては脂肪酸の酸化(燃焼)のプロセスに至ります。


さらに、肥満外科手術を受けた41名の女性の脂質代謝回転率を調べ、手術後4~7年の体重維持との関係を調べた結果、手術前に代謝回転率が低かった者だけが、代謝回転率を高めて減量を維持することができたことが示された。

脂質代謝回転が生涯を通して一定か、或いは、長期の体重増減中に変化するかは現状では明らかになっていない。今回の研究では、以前と同様に核爆弾試験由来の14Cの取り込みを測定することによって、最大16年間の追跡調査で成人の脂肪細胞脂質の代謝回転を決定した。

(参考)以前の研究とは、2011年9月25日付けで Natureに掲載されたArner & Spaldingらによる研究で、1955年~1963年に行われた地上核爆弾試験時の大気中の濃縮14C(質量数14の炭素:放射性同位体)を用いて測定しました。つまり、14Cレベルは14CO2として指数関数的に減少し、植物の光合成中に有機化合物に組み込まれます。生きている植物は大気中と同じ割合で 14C を含んでいます。ヒトは植物や草食動物を食べるので、人体の14 C濃度も大気中の濃度と同じです。故に、この大気中の14Cを脂肪細胞脂質に取り込んで脂質の寿命を推定しました。そして、脂質寿命と総脂肪量から、毎年脂肪組織に貯蔵される脂質の正味量を計算しています。

皮下脂肪組織の脂質の寿命は平均1.6年でした。先行研究で脂肪細胞の寿命は9.5年であることが示されているので、脂肪細胞中の中性脂肪は平均6回入れ替わることになります。(Spalding et al. 2008)
また、脂質の寿命が様々な分子によって刺激される脂肪細胞脂肪の分解と逆相関することを発見し、脂肪分解が脂質除去の重要な決定因子であることが示されています。

マイコメント
被験者の年齢や体重など特性、食事や運動の管理、更に、基礎代謝量は20歳を超えると10年ごとに約2%低下すると言われていますが、“第745回 筋肉と代謝量についての都市伝説” で示した他の臓器別の代謝量との交絡の可能性など疑問点が多くあるので、フルテキストが無料で公開されたら精読してみたいと思います。

Data Sources:
Nature Medicine
2019/9/9
Adipose lipid turnover and long-term changes in body weight

Science Daily
Why people gain weight as they get older







この記事へのコメント