第1126回 肥満は病気として認識されるべきか?

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米国医師会は2013年6月の年次総会で肥満を疾患と認定しました。
この決定を巡って、「代謝的に健康な肥満は存在する」、「健康なデブなどいない」、或いは「肥満者の健康は一時的な状態に過ぎない」といった賛否両論の見解が出ています。
英国でもこの課題について専門家がBMJで論争しています。

Science Daily
2019/7/17
Should obesity be recognised as a disease?
出典: BMJ(イギリス医師会雑誌)

今や英国では国民の約3分の1(29%)が肥満者で、2030年までに35%に達すると予想されているが、肥満は病気と認識すべきなのだろうか?
この課題についてBMJで専門家が論争しています。

英国リバプール大学John Wilding教授およびEuropean Association for the Study of ObesityのDr Vicky Mooneyは次のように語っています。

辞書オックスフォードは、病気を “a disorder of structure or function…especially one that produces specific symptoms…and is not simply a direct result of physical injury”と定義している。肥満が健康に悪影響を及ぼすほどに過剰な体脂肪が蓄積している状態であるとすれば、それは病気の定義を満たしている。世界保健機関(WHO)は、1936年以来、それを病気と考えている。

200以上の遺伝子が体重に影響を及ぼし、その多くが脳や脂肪組織で発現している。
したがって、体重、脂肪分布、合併症のリスクは生物学的な影響が強く、もし肥満になったとしても、それは個人的な過ちではない。
近年の肥満の急激な増加は遺伝的要因によるものではなく、環境の変化(食物の入手可用性と価格、物理的環境、社会的要)である。

肥満は自らが招いたもので自己責任であるという考え方が広く行き渡っているが、ヘルスケア専門家は肥満の複雑さと肥満患者が何を望んでいるのかよく分かっていないようだ。
肥満を重篤な合併症を伴う慢性疾患として認識すれば、肥満者が経験する汚名や差別を減らすのに役立つだろう。

肥満が病気であることを受け入れない限り、流行を抑えることはできないと結論付けています。


上記に対して、NHSハーツバレー臨床コミッショングループのDr Richard Pileは次のように反論しています。

そのようなアプローチは、実際には個人と社会に悪い結果をもたらす可能性がある。

病気の辞書の定義は漠然としているので、ほとんど何でも病気として分類できてしまう。

肥満を疾病として分類することは、患者の自立性を低下させ、自ら治そうとする動機づけを弱めてしまう危険性がある。

患者が責任を負うべきリスク要因を認め、それをコントロールすることと、他の誰かが治療の責任を負う病気との間には心理的に重要な違いがある。

さらに、肥満を病気にしても患者の利益にはならず、健康保険と臨床ガイドラインが薬物と手術による治療を促す場合には、医療提供者と製薬産業に利益をもたらすことになろう。

変化を可能にするためには自己決定が重要であり、ほとんどの人にとって肥満の原因は社会的であり、解決策もそこにあることを認識すべきです。

『肥満を病気として分類することは、不可欠でも有益でもない』とDr Richard Pileは結論付けています。

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