第1127回 “代謝的に健康な肥満”は意義があるのか?

『ロミオとジュリエット』に出てくる有名なセリフで、争いを続ける両家を嘆いて名前の無用さを訴えています:

What’s in a name? that which we call a rose.
By any other name would smell as sweet.

和訳すると、
名前っていったい何なの?
バラを別の名前で呼んでみても、その甘い香りに変わりはないわ

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2019年6月26日付けで米国臨床栄養学会誌に掲載されたコペンハーゲン大学Dr Faidon Magkosの論文 “Metabolically healthy obesity: what's in a name?” です。
タイトルが “What’s in a name?” だったので、ついつい興味を惹かれて読んでみました。

要旨
代謝的に健康な肥満とは、代謝機能障害がないorその兆候が殆どない肥満表現型(遺伝子型/環境に影響される)を指します。肝臓の脂肪含有量や内臓脂肪が少ない、インスリン感受性が高く分泌が良好、心肺機能が高い、主に大腿部の脂肪沈着が少ないといったことが、代謝的に健康な表現型の主たる生理学的特性です。

肥満者の約35%は代謝的に健康です。代謝的に不健康な肥満者と比較して、かれらの2型糖尿病および心血管疾患の発症リスクは約半分ですが、代謝的に健康なleanな人たちと比べると、はるかに大きなリスク(50〜300%)があります。

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A&B
MHL: metabolically healthy lean(代謝的に健康でぜい肉が無い)
MHO: metabolically healthy obese(代謝的に健康で肥満)
MUO: metabolically unhealthy obese(代謝的に不健康で肥満)

C&D
MHNW: metabolically healthy normal weight(代謝的に健康で標準体重)
MUNW: metabolically unhealthy normal weight(代謝的に不健康で標準体重)
MUOW: metabolically unhealthy overweight(代謝的に不健康で過体重)
MUOB: metabolically unhealthy subjects with obesity(代謝的に不健康で肥満)


また、代謝的な健康プロファイルが死亡率の低下につながらない可能性があることも最近の研究で示されています。
したがって、肥満者に代謝のリスク因子がないという理由で、減量治療を行わなくても良いということにはなりません。代謝的に健康な肥満は治療する必要があります。
実際に表現型は経時的に安定しておらず、代謝的に健康な肥満者の約半数が〜10年以内に代謝的に健康でなくなります。

故に、早いうちに介入することが大事です。 減量は用量依存的に内臓脂肪組織と肝臓の脂肪含有量を減少させ、多臓器インスリン感受性とβ細胞機能を改善します。しかし、長期的に減量を成功させるためにはモチベーションと遵守が重要ですが、減量を維持するのは非常に難しいため、患者の失望を招き継続を妨げることが多い。

従来同様に減量そのものに焦点を置くか、或いは、代謝のパラメーターに焦点を移すべきか考えるのはリーズナブルです。1つ以上の代謝健康項目を最初の目標として達成すると、長期的な目標への動機づけになるでしょう。

セデンタリーの肥満者が運動の励行と食事パターンを改善することで、体重が大きく減少することは期待できませんが、多くの健康上の利点が得られることが報告されています。従って、代謝的に健康な肥満の概念は、治療の最初の適切な目標となり得るのではないかと思われます。
















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