第1130回 有酸素運動のメリット(朝食前vs 朝食後)

thEJNORD17.jpg

The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
19 October 2019
Lipid metabolism links nutrient-exercise timing to insulin sensitivity in men classified as overweight or obese

目的:
栄養素-運動のタイミング、つまり、栄養素摂取前vs 栄養素摂取後の運動が、過体重/肥満の男性の全身と筋肉内の脂質利用、骨格筋の順応、および経口グルコースインスリン感受性(OGIS)に及ぼす急性ならびに慢性効果を評価すること。

介入:
この研究は2つの実験で構成されている。最初に栄養素‐運動のタイミングの違いによる急性代謝とmRNA応答を評価し(急性試験)、続いて6週間のランダム化比較試験で炭水化物₋運動のタイミングに応答する長期的な順応を評価した(トレーニング試験)。

急性試験
無作為化クロスオーバー研究
被験者はBMI平均±SD 30.2±3.5の過体重/肥満でセデンタリーの男性12名で、定期的に運動している、或いは、高血圧や2型糖尿病の疑いのある者は除外した。

1回目の試験(朝食‐運動)では、1日に必要なエネルギー消費量の25%相当の標準的な朝食(炭水化物65%、脂質20%、タンパク質15%)を割り当てた。
90分の休憩後にpeak VO2 65%でサイクリングを60分行った。

日を変えて2回目の試験(運動‐朝食)を行った。
プロトコルは1回目と同じだが、朝食は運動後に外側広筋筋生検サンプルを採取したあとで摂った。

急性試験の主要評価項目は、栄養摂取前の運動中vs栄養摂取後の運動中の筋肉内脂肪の利用である。

トレーニング試験
単盲検、無作為化比較対照試験
栄養素(炭水化物)₋運動のタイミングの違いに対する長期(6週間)の順応性を評価
被験者はBMI平均±SD 30.9±4.5の過体重/肥満でセデンタリーな男性30人とし、運動なしの対照群(CON; n=9)、運動前に炭水化物のみの朝食群(CHO-EX; n=12)、または炭水化物のみの朝食前に運動群(EX-CHO; n=9)に割り付けた。

運動は、1〜3週目に50%ピーク出力(PPO)、 4〜6週目に55%PPOのmoderate強度のサイクリング週3回

被験者は前日の20:00までに食事を済ませた。
CHO-EX群にはマルトデキストリン(炭水化物)ドリンクを運動前に、プラセボ飲料を運動2時間後に割り当てた
EX-CHO群には同じドリンクを、順序を逆にして割り当てた
CON群には朝食(0800-0900h)として同じ炭水化物ドリンクを、昼食(1100-1300h)にはプラセボを週3回割り当てた。

結果:

急性試験
朝食前運動群vs朝食後運動群では、遅筋(net change: -3.44±2.63% versus 1.44±4.18% area lipid staining, p < 0.01)と速筋(-1.89±2.48% versus 1.83±1.92% area lipid staining, p < 0.05)の脂質の利用率が高まった。

トレーニング試験
食後血糖は、炭水化物摂取前vs炭水化物摂取後の6週間の運動トレーニングによる差異は見られなかった(p > 0.05)。しかし、食後インスリン血症は、炭水化物摂取前の運動トレーニングで減少したが、炭水化物摂取後では認められなかった(p =0.03)。

これにより、運動中の脂質利用の増加に関連する経口グルコースインスリン感受性OGISの増加(25±38 vs -21±32 mL.min-1.m-2; p=0.01)が生じた(r = 0.50、p = 0.02)。

栄養素摂取前の定期的な運動は、骨格筋のリン脂質のリモデリングおよびグルコース輸送タンパク質GLUT4のタンパク質含有量も増加させた(p < 0.05)。

結論:
運動トレーニングと代謝の健康を調査する実験では、栄養素‐運動のタイミングを考慮する必要があり、栄養素摂取前(絶食状態)vs栄養素摂取後の運動は、脂質利用に有益に作用して食後インスリン血症を軽減する。


マイコメント
運動中に脂肪の利用比率が高まることは何十年も前から分かっていることです。
しかし、炭水化物の摂取前に運動すると高インスリンレベルが低下したというのは新しい情報です。

トレーニング試験では、全身の脂質利用率は、炭水化物摂取後の運動に比べ摂取前の運動が約2倍高く、この差異は6週間の介入全体を通じて維持された(図4A)と研究者は言っています。御如才ないことは思いますが、このことを以って体脂肪が2倍減少したと考えるのは早合点です。これはあくまでも運動中のエネルギー燃料としての脂質の燃焼比率を指しています。
この脂質利用率の高進に伴い、運動中の全身の炭水化物利用率は減少し(Figure 4B)、呼吸交換率は低下しました(group effect, p<0.01; Figure 4C)。
累積エネルギー消費量は群間差がなく、更に、体重(time x group interaction, p=0.97; Figure 6A)、(ウェスト‐ヒップ比; time x group interaction, p=0.17, Figure 6B)、および全身の脂質利用のピーク容量(time x group interaction, p=0.14; Figure 6C)の変化にも群間差はなかったことが報告されています。

関連記事
第211回 朝食抜きの有酸素運動と脂肪燃焼 
第324回 ダイエット中の運動前・運動中・運動後の栄養摂取






この記事へのコメント