第1132回 ダイエットで体重が減らない本当の理由!

久し振りにLyle McDonaldのダイエット記事を紹介します。
どなたにも理解しやすいように意訳しました。

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ダイエットの鍵…あなたが痩せない理由は?

先ずは巷間に流布する代表的な都市伝説について説明します。

<都市伝説>

・インスリンレベルが高いから
・炭水化物を食べるから
・Sugar
・飢餓モード
・代謝ダメージ(Metabolic Damage)
・代謝率の低下(Slow Metabolism)
・甲状腺ホルモンの低減
・その他


<補足説明>

インスリン
「肥満の原因はカロリーではなくインスリンである」、「インスリンは脂肪の減少を妨げる」といったインスリンを悪者扱いする考え方は、Gary Taubeによって広められました。彼の持論は、“炭水化物が高血糖とインスリンの過剰分泌をもたらし体脂肪の蓄積を促す。故に、炭水化物を食べなければインスリンレベルは下がり肥満は解消する”というものですが、これは無意味な理論的根拠に過ぎません。

この考え方は間違っています。
インスリンの高低レベルによる減量への影響に顕著な違いはありません。
タンパク質もインスリンレベルを高めるが、これが体重増加の原因でないことは誰もが認識していることです。
さらに、インスリンレベルが高まらなくても、脂肪は過剰摂取すると脂肪組織に蓄えられる
繰り返して言いますが、彼の考え方は全体的に馬鹿げています。

Kevin Hallによるきめ細かい研究で、Gary Taubesの主張はガラクタ理論であることが示されました。

尤も御如才ないことながら、インスリン抵抗性のある人にとっても、炭水化物の摂取量を減らす食事パターンが多くの点でbetterではないということではありません。
しかし、摂取量(食欲)への何らかの影響を除いて、体重を左右する魔法の効果はありません。

尚、インスリンが過剰に分泌されると、体重/脂肪の増加に至りやすいことを示唆する研究もありますが、ここで誤解してはいけないポイントは“インスリン分泌が高まると、人はもっと食べたくなる傾向にある”ということです。
糖尿病に関する研究でも、薬剤でインスリン分泌を低下させると食事摂取量が自発的に少なくなると云う報告が発表されています。
つまり、インスリンは肥満の原因(因果関係)ではなく、食欲の数多くある諸要因(間接因子)の中の一つに過ぎないということを忘れないでください…第697回カロリーはカロリーですか?



炭水化物の摂取
上述の説明と重なりますが、「炭水化物がインスリンを高め、体重の増加や減量の妨げの原因となる」という考え方も間違っています…第871回 糖質制限ダイエットをめぐる都市伝説

カロリーが管理された状況下では、高炭水化物および低炭水化物の食事いずれも、体重減少をもたらす効果は同様です…第178回 肥満のメカニズム

炭水化物を抜くと体重が急速に減少すること、そして、再び炭水化物を摂取すると体重が増えることを指摘する人がいますが、これは身体の水分の増減に過ぎません。


Sugar(遊離糖)
上述トピックの延長線上の話となりますが、Sugarを悪魔だと妄信する人たちがいます。そこでは様々な議論が展開されますが、通常はインスリンに帰結します。
しかし、全粒パンなど“good”といわれる炭水化物に比べて“Sugarの方がインスリン指数は低い”、或いは、“グリセミック指数がジャガイモより低い”といった矛盾点に彼らは疑問を抱かないのでしょうか。

体重の減少という観点では、本質的にSugarは悪くはありません。
十分にたんぱく質を取っていれば、table sugar(通常の砂糖)以外に何も食べずに脂肪を減らすことが出来ます。

究極のジャンクフードと呼ばれるトゥインキーやアイスクリームダイエットでも体重を減らすことは出来ます。
勿論こういったダイエットを勧めているわけではありません。
Sugar摂取が体重の減らない理由にはならないということを申し上げているんです。

Sugarにも体重の減少を阻む魔法のパワーはありません。
具体例を挙げると、カロリーが制御されている場合、複合糖質をsugarに置換えても体重の減少への影響に変わりはありません


特定の食品へのこだわり
特定の食品が体重の減らない理由だと考える人もいます。
“特定の食品を止めると体重が減った。ゆえに、減量を阻むのはその食品だ”と彼らは単純に結論付けてしまう。特定の食品を食べないことによって、トータルの摂取量が減ったことは視野にない。グルテンフリーダイエットがその一例です。更に、乳製品は肥満の主要因であると唱える人もいますが、乳製品が脂肪減少を改善することを示す研究が次から次へと発表されています。

他方、魔法のパワーを持つ特定のMagic dietをしなければ体重を減らすことは出来ないと考える人たちもいます。例として、「加工品や添加物を使った食べ物を控えてホールフードを中心に食べるClean eating diet」、「野菜や果物も一切食べず動物性食品のみを食べるcarnivore diet(断糖肉食)」、「パレオダイエット」、「多量栄養素/三大栄養素のバランスを最重要視するIFYM diet (If It Fits Your Macros)」、「Intermittent Fasting diet (間欠的断食法)」などが挙げられます。

これが真実でないことは純然たる事実です。
自分にうまく行ったからと言って、必ずしも他の人にも通用するとは限りません。
単一の正しいマジックダイエットというものがあるとするなら、それはたんぱく質を十分に摂りつつ、エネルギー収支バランスをマイナスにすることです。

複数のシステマティックレビュー/メタ解析が示すように、ダイエット方法の違いによる成果は殆ど差がありません。
長期的に遵守できるかということが最も重要です。


飢餓モード
朝食を抜くと体が脂肪の蓄積モードになるという人がいます。
3時間ごとに食べないと飢餓モードになると言う人もいます。
この考え方は動物の研究から生まれたものでナンセンスです。動物にとって食事を一回スキップするのは大変なことですが、人間では食事の頻度はエネルギー消費に大した影響を与えません。

小動物の寿命は非常に短く、マウスの寿命は約2年、ラットはその3倍くらいだということを認識する必要があります。これらの動物は体脂肪もあまり多くは保持していないので、わずかなカロリー欠損であっても実際には非常に危険な状態になることがあります。われわれは齧歯類ではありません。

我々は食事を1回スキップしても1日くらいの絶食でも、顕著な影響が出ることはありません。我々の代謝率は3~4日間の完全絶食でさえも低下は始まらない。逆に、3-4日間完全に絶食すると実際に代謝率が上がります…第1031回 食事の回数が代謝に及ぼす影響


代謝ダメージ
極端な低カロリーダイエットをすることで、代謝に永続的な障害が生じるという考え方が何年も前からあります。直近では、Dr Layne Nortonが、極端な低カロリーダイエットをすると代謝が大きく落ち込み、低カロリーでも太ってしまう体になるというデタラメ情報を流布してマンションを手に入れました。

彼の主張は1200kcalで太ったといった数百のメール報告に基づいており、科学的エビデンスを欠いています。50年に亘る科学的データを示して間違いを指摘しましたが、頑なに考えを変えようとしません。

食料に飢えた貧困の国に住んでいる人々はやせ細っていますが、この事実をどのように説明するのですか!
かれらには飢餓モードが起きないのですか?
問題はそういうことじゃないでしょう!

脂肪の減少へのエンドレスな代謝順応なんてないと言っているのではありません。
エネルギー消費は絶対的に減少し食欲は増加します、しかし、それはダメージではありません。ストレージモードでもありません。
また、エネルギー収支がマイナスになっている場合には、いかなる順応も脂肪を増加させることはあり得ません。


代謝率の低下
体重の増加や体重が減らない理由として、Slow Metabolism(低代謝)という何十年も前の考え方が依然として罷り通っていますが、これも真実ではありません。

一部のかなり重篤な疾患状態を除いては、低代謝率という考えは意味を為しません。
誰かがオンラインで低代謝率を主張しても、実際に測定してみると例外なく正常です。

実際には、体重(除脂肪体重)が増えると安静時代謝率は高くなります。
分かり易く言い換えると、でっかい体の人ほどカロリー消費は多いということです。

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このグラフでは同じLBMでもエネルギー消費量にバラツキがありますが、その理由はLBMがBasal Metabolic Rate (BMR/基礎代謝量)の全てではなく、その他の要因も交絡しているからです。
いずれにせよ代謝率が低い云々という問題ではなく、通常はThermic effect of Non-exercise activity thermogenesis (NEAT/非運動性活動熱産生効果)つまり生活活動量の違いが大きい。


低甲状腺ホルモン
確かに、甲状腺ホルモンが低下すると、全身がエネルギーを利用できなくなるため消費カロリーがグッと減り体重が増加します。また、粘液浮腫の症状がでるので体重減少が見えてこない。
しかし、あなたがもし本当に甲状腺機能低下症なら症状はもっと多岐にわたります。
主な症状は、強い全身倦怠感、無力感、皮膚の乾燥、発汗減少、便秘、上下肢、脇、眉の外側の脱毛、声がかすれる、聴力の低下、目に光がなくなる。その他にも、動脈硬化、徐脈や不整脈、うつ症状、鼻閉、腸閉塞、多関節炎などが挙げられます。

実際に大抵の場合は、甲状腺機能低下はダイエットで体重が減少しないという説明には不適切です。

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その他の都市伝説を数え挙げたらキリがないので、テーマを“体重が減らない本当の理由”に移します。包括的にすべてを説明することは出来ないので、最も一般的なアイテムに絞って説明します。


<あなたが痩せない本当の理由>

カロリー摂取の過小評価/カロリー消費の過大評価
正直言って、通常はこれが体重の減らない主たる理由です。

人々は総摂取カロリーを少なくとも20~50%過小評価していることが研究報告で示されてます。言い換えると、自分が考えている量より20~50%多く食べているということです。
前述したDr Layne Nortonが主張する代謝ダメージの正体は、実はカロリー摂取量の過少報告なのです。

自己報告による摂取カロリーに大きなディスクレパンシーがあるように、運動についても殆どの人がカロリー消費を過大評価していることが複数の研究で報告されています。
ある研究では、実際のカロリー消費より3〜4倍の過大評価をしていたことが分かりました。

厳しい食事制限とその反動のどか喰い(遵守性)
食事制限が余りにも厳し過ぎると、食欲コントロールが効かなくなり、結局は大食いしてしまう。


体水分の短期的な貯留(コルチゾール)
ダイエットはストレスであり、トレーニングもストレスです。
これらを同時に過度に行うと、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが慢性的に高まり、体水分の貯留を引き起こします
こうなると体脂肪が減少しても体重は減りません。


月経周期の体重変化
女性は月経周期に対処する必要があります。個人差はありますが、体重は週ごとに増減します。これは月経周期における体水分の変異です。
Rättger et alから月経前の水分貯留が報告されています。
月経周期中、月経期/卵胞期に比べて排卵期/黄体期の方が、総体水分量が多いことも報告されています。


週末に食べ過ぎることでご破算となる


厳格な食事パターンの有害性
厳格な食事パターンとは食品をgood or badで考えることです。結局は大きな精神的ストレスに苦しみ、摂食障害になる人が多い。
柔軟的な食事パターンが長期的な成功の鍵です。


出典:
Posted on October 30, 2019 by Lyle McDonald
Reasons You’re Not Losing Weight

この記事へのコメント

IronSlave
2019年11月26日 14:39
毎回楽しく拝見させて頂いております。
世の中ビジネス目的の見た目ばかり派手なダイエットやトレーニングの情報が氾濫しております。
科学的根拠を基とし、ロジカルに論破させておられるので読んでいて非常に爽快です。
これからも応援させて頂きます。
Meddlesome181
2019年11月26日 16:52
IronSlaveさんへ:

有難うございます。
とても励みになります。