第1134回 低脂肪食のメリットと科学的根拠?

前回の “第1133回 低カロリー/低脂肪の食事が全米を席巻するまでのプロセス” の続きです。

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低脂肪食にどのような優位性があるのか?

心血管疾患

心臓病による死亡率は1950年から1998年までに何と53%減少したことが報じられた…J Nutr 1998 Feb “History of recommendations to the public about dietary fat” by Kritchevsky
更に、1976年から1994年の間に心臓病の主たるリスクファクターである高血圧は40%減少、高コレステロール血症28%減少、および喫煙が25%減少したことが報告された。

しかし、同年9月にRosamond et alから、「1950年から1998年に心臓病による死亡率は確かに減少しているが、心臓増病の発症に変化はない。1987年から1994年に死亡率が減少したのは医療介入によるもので2次予防である。低脂肪食に一次予防の効果は無いことが報告された…N Engl J Med “Trends in the incidence of myocardial infarction and in mortality due to coronary heart disease, 1987 to 1994”

2006年2月8日付けのニューヨークタイムズに“Low-Fat Diet Does Not Cut Health Risks, Study Finds.”という見出しで、先にマクガバン・レポートで低脂肪食が心臓病やがんのリスクを減じる可能性が示されたが、食事にはそのような効果は無いことが判明したと報じられた。

実際には一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸の摂取量が多くても心血管疾患リスクを下げる傾向がみられ、2015年の米国の食生活指針では脂肪を30%に控えるという指針を撤廃した。

また、低脂肪食が席巻した数十年間において米国における肥満問題は解決されなかったことが指摘されている。


体重(体脂肪)の減少

主要栄養素の相対的なエネルギー密度(脂肪9kcal/g、炭水化物4kcal、たんぱく質4kcal)を理由に、脂質の多い食事は太るという人たちがいるが、空腹感と満腹感、Partitioning(パーティショニング)、脂肪の蓄積、あるいは脂肪酸の代謝などに関わる主要栄養素の役割を御存じないようだ。

減量に関する低脂肪食および高脂肪食の長期的(≧1年)な効果を比較している69件のランダム化比較試験(RCTs)の系統的レビュー・ランダム効果メタ解析を行なったが、低脂肪食が長期的な減量効果において優れていることを裏付ける科学的エビデンスは存在しないことが報告されている…The Lancet Diabetes & Endocrinology/“Effect of low-fat diet interventions versus other diet interventions on long-term weight change in adults: a systematic review and meta-analysis

体重の増減はエネルギー収支バランスで決まる。
低脂肪食あるいは低炭水化物食(高脂肪食)いずれであれ、減量や肥満防止に魔法のような特別の利点はありません。

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1960年~1970年代、西洋諸国の国民一人当たりの総脂質と飽和脂肪酸の摂取量が、乳房/結腸/前立腺など一般的な癌の発症率と相関することが報じられた。生態学的所見は食事と生活環境の多因子が交絡するが、明確な生物学的な根拠が示されぬままに、食事ガイドラインに組み入れられて総脂質量を減らすよう推奨された。

世界癌研究基金および米国癌研究所は、文献の包括的なレビューを行って「総脂質量と飽和脂肪酸の摂取量いずれも癌リスクと相関しない」と結論付けた。
ω6とがん発症率の関連性もサポートされていない。


2型糖尿病

前向き研究では、総脂肪摂取量と糖尿病リスクとの有意な関連はないことが報告されている。しかし、いずれも4週間16週間の短期試験だが、脂肪の質(種類)は心血管疾患と同様に関連性が存在することが示されている。

工業的に生産されたトランス脂肪が炎症性因子を増加させ、脂質レベルに悪影響を与えることを幾つかのランダム化比較試験が示唆している。グルコース恒常性への影響については決定的なエビデンスはない。

トランス脂肪酸は2型糖尿病の発症率と正相関するが、多価不飽和脂肪酸は逆相関することを前向き研究が示唆している。

n-6系脂肪酸が豊富なリノール酸は2型糖尿病の発症率と逆相関している。

n-3系脂肪酸ドコサヘキサエン酸(DHA)やペンタエン酸(EPA)を豊富に含む食事が、インスリン抵抗性や2型糖尿病の発症率を低下させることは示されていない。
しかし、植物由来の血中n-3系脂肪酸α(アルファ)リノレン酸と2型糖尿病の逆相関は明らかになっている。

炭水化物の種類も糖尿病リスクに影響を与える可能性があるため、脂肪と2型糖尿病の関係は炭水化物の量と質にも依存する。
…Walter Willett et al. 2018 BMJ


最後に、
糖尿病での低カロリー/低脂肪の食事の位置づけについて、米国糖尿病学会と日本糖尿病学会の直近のガイドラインを引用して述べます。

次回に続く








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