第1135回 糖尿病の食事療法としての低脂肪食の位置づけ

前回の ”第1134回 低脂肪食のメリットと科学的根拠?” の続きです。

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米国糖尿病学会
米国糖尿病学会も低脂肪の考え方に準拠してきたが、2013年に『全ての糖尿病患者に有用と決定づけられる理想的な食事パターンはない。糖尿病患者にとって、どの食事パターンを選ぼうとも重要なのは総エネルギー摂取量である』『食事のパターンは、食品のアベイラビリティや特定の健康食品への理解、更に個人の嗜好/文化/宗教/知識/健康信念/予算/収入の問題などによって影響されるので、これらの諸要因を各人個別化評価して考慮すべきである』と公式声明で述べています。

そして、ADAコンセンサスレポート2019年では、地中海スタイル食、ベジタリアン/ビーガン食、低脂肪食、超低脂肪食、低炭水化物食、超低炭水化物食、DASH食、Paleo食を対象としており、その中の低脂肪食に関して『総脂肪摂取量を減らすことで2型糖尿病患者の血糖値やCVDのリスク因子を改善するかについてのエビデンスに一貫性が無い。低脂肪食(総脂肪≦30%、飽和脂肪酸≦10%)の利点は、摂取カロリーを制限し身体活動を増やすことで体重減少を維持するIntensive Lifestyle Interventionに関する研究が示すように、主に体重減少に関連しているようだ」と明記されています。

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換言すると、低脂肪の食事パターンそのものには、他との比較で特筆するような優位性はないということです。


日本糖尿病学会
日本糖尿病学会は、糖尿病診療ガイドライン2019ステートメントで、栄養摂取比率について「糖尿病の予防・管理のための望ましいエネルギー産生栄養比率について、これを設定する明確なエビデンスはない」、「患者の身体活動量、併発症の状態、年齢、嗜好性などに応じて適宜、柔軟に対処する」と述べ、具体的には“日本人の食事摂取基準2020年版に準拠して、炭水化物を50~60%エネルギー、タンパク質20%エネルギー以下を目安とし、のこりを脂質とするが、脂質が25%エネルギーを超える場合は、多価不飽和脂肪酸を増やすなど、脂肪酸の構成に配慮をすることを一定の目安として良いと言っている。

しかし、このステートメントを私なりにダイジェストすると、『日本糖尿病学会が一押してきた低カロリー/低脂肪パターンの食事も、望ましいとする明確なエビデンスはない。ゆえに、エビデンスが一貫していない 日本人の食事摂取基準2020年版に準拠する。更に、糖質制限食は明確なエビデンスが無いので推奨しない』ということになり、非論理的で説得力に欠けている。

余談:
Take Home Messageとして、“米国糖尿病学会と日本糖尿病学会の間には、たんぱく質の摂取に関する考え方にも温度差があること”、”糖質制限を提唱する医師がやるべきこと“などについての私見を書き始めましたが、面倒くさくなって取り止めました。





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