第1157回 COVID-19 パンデミックについて(中間まとめ)

2020/6/13 アップデート
COVID-19の感染・重症化・死亡リスクの諸因子について直近の情報を末尾に追記しました。


第1141回~第1156回で新型コロナに関して詳述していますが、初めての方のために中間的に取り纏めておきます。

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新型コロナウイルス(COVID-19)は第1波で終息するのか?
史実が物語っているように、パンデミックは混沌としながらも2通りの終わり方をする。
1つは医学的・疫学的な終息で、感染者と死亡率が大きく減少して終わる。
もう1つは社会的な終息で、マスコミの過剰報道も鎮まり皆の病気に対する恐怖心が薄れてきて終わる。

首都圏でもCOVID-19の実効再生産数がRt<1となり、確かに収束には向かっている。連日のように恐怖を煽っていたマスコミ報道も、「海外のように厳しい外出制限や罰則を伴わない日本独自の要請対応が奏功」、「緊急事態全面解除」、「成功裏に終わりを迎えつつある」、「国民の習慣や努力が実を結んだ」、「世界的な反響を得た台湾や韓国などと違う、もう一つのコロナ対策のサクセス・ストーリーと言える」など称賛の声に一変している。

専門家会議副座長の尾身茂氏も、日本の医療制度、初期のクラスター対策、そして国民の健康意識の高さの3つの要因が寄与したと分析しているが、自己保身と安倍首相への忖度に過ぎない。残念ながら彼らが行ってきた戦略・戦術はミスマッチだらけである。

東大出身で現在キングス・カレッジ・ロンドン教授であるDr. 渋谷は、『新型コロナウイルス感染症には非常に多くの無症状者と軽症者がいて、潜伏期が長いという特徴がある。だから症状がある人だけ叩いても感染は制御できないのは当初から分かっている。それなのに水際とクラスター対策をやり続け検査を絞ったから、今のような経路を追えない市中感染と院内感染が拡がったのは当然の帰結と言える』という手厳しい。

『第一波をかわしたのは只々ラッキーだったからに他ならない。呼吸器系のウイルスは気温が下がると活発になることが多いため、秋には大きな第二波が来ることがあり得る。それまでにPCR検査を1日10万件できるように準備しなくてはならない。第一波への対応で「ぎりぎり」の状態だった医療体制も整える必要があり、次の感染爆発が今より大きかったら崩壊する』と感染症が専門の昭和大学医学部の二木芳人教授は警告している。

これら教授たちの考え方に同意です。
しかし、二木教授は1日10万件のPCR検査が必要というが、安倍首相は4月冒頭に「1日2万件のPCR検査」と述べ、われわれは期待したが全くの空文句だった。
「PCR検査数を増やせという巨大な圧力によって実際に増えているのは、検体を採取する場所と人、検査に必要な機器のみ」、「技術力が求められるPCR検査員は限られている」、「RNA抽出キットがすべて輸入品で在庫が潤沢でない。国際的争奪戦が繰り広げられ、日本はその競争に完全に乗り遅れ、入手が難しくなってきている」といった事実を踏まえて、どのような方策を講じているのかいまだに明確にされていません。

どんな戦略・戦術にもメリットとデメリットがあります。
それを国民と共有し国民の生命・財産および社会全体絵の被害を最小限に抑える形で取り組むのが政治の王道です。
しかし、安倍首相のやり方はメリットのみ強調しデメリットを明らかにせず、まるで戦時下の大本営発表を彷彿とさせます。

来るべき第2波・第3波のオーバーシュートで、高齢者や情報弱者にしわ寄せが行って泣きを見ることがあってはならない。

若い重篤患者に人工呼吸器を譲ると言う高齢者の美談がヨーロッパでありましたが、これは稀有のケースです。大概の人は治りたい・生きたいと思っています。
医療崩壊を防ぐためだとか御託を並べて、集中治療室(ICU)には高齢者は入れないという意見が浮上していますが、まるで現代版の楢山節考のようです。

医療に関して言えば、『誰もが、感染を容易に確認でき、安心して治療を受けられ、治ったら普通に生活できる』、こうした流れが重要であるとつくづく思う。最低ラインとして前広にこの様な環境を構築しておく必要がある。

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外出自粛などの緩和で感染の再拡大が懸念される。
東大の大橋順准教授は、外出自粛などを解除した場合に、感染者がどれだけ増加するかを試算した。
人口10万人の都市を想定。患者1人が何人の患者に感染を広げるかを示す「実効再生産数」は2.5人として、患者が50人に達したときに外出制限などを実施した。患者数はいったん減少するが、制限の開始から60日後に解除すると30日後には感染者が50人まで戻った。1000万人の都市でも、自粛解除から30日後には感染者数は元に戻る。

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集団免疫とは?
集団免疫とは、感染症に対して集団の大部分が免疫を持っている際に生じる間接的な保護効果であり、免疫を持たない人を保護する手段です。

集団免疫になるまで感染は続きます。
ブラジル、イタリア、イギリスでは短期間で集団免疫を獲得する方策を採ったため、多くの死亡者がでている。日本では活動の自粛によって感染スピードを遅らせる『低空飛行』を黙示的に続けており、集団免疫を獲得するまでには長期間を要します。

分かり易く説明すると、
安倍首相は、「R0=2.5をベースに接触8割削減して、実効再生産数Rt=0.5とし早期の感染鎮圧を図る」と力説しましたが、実際にはウイルス感染を早期に根絶する対策ではないのです。
医療崩壊を防ぐために、みなさん順番に感染して下さいと言っているのです。
思い切った追加の補助金・助成金も出せないので、感染拡大の再リスクを黙認して非常事態宣言の緩和を断行しているのです。

免疫を得るためにワクチンを接種する方法もあります。
ただ、ワクチンの開発は始まったばかりで、まだまだずっと先の話です。
巷間では新型コロナウイルスに有効なワクチンの開発が直ぐにでも期待できそうなニュースが流れていますが、フィラデルフィア小児病院のワクチン教育センターの責任者であり小児科の教授でもあるポールオフィット博士は、『ワクチン開発は平均して20年かかる。通常では、新薬の有効性を検証するための概念実証(Proof of Concept)、次に数百人~数千人の大規模な投与量決定試験、そして最後にライセンス試験が行われる。12~18ヶ月でやろうとするとこれら主要なステップをスキップしなければならず危険である』と語っています。

また、安倍首相は感染した著名人がアビガンの投与後に回復したと公表し、「5月中の承認を目指す」と言っているが、現時点で薬として十分な科学的根拠が得られていない状況です。アビガンは副作用として催奇形性の問題などがあり、専門家からは「効果や安全性を十分確認せずに進むのは納得できない」との声が出ている。日本医師会有識者会議も「アビガンがコロナウイルスに有効というエビデンスはない」との声明を出しました。安倍首相はアビガンの増産支持をすでに出しており、これもアベノマスクと同様に無駄になる可能性があります。

基本再生産数(R0)と実効再生産数(Rt)
TV報道でこれらの言葉が頻繁に使われています。
基本再生産数(R0)とは、何も対策を取らなかった場合の数値であり、病原体の素の感染力を示します。つまり、感染力のある一人の感染者が、免疫の獲得または死亡により、その感染力を失うまでに何人の未感染者に伝染させたかの目安で、その病原体の感染力の指標となります。
基本再生産数に対して、手洗いやうがい、或いは、3密をモットーに人々の接触削減やロックダウンといった対策が取られれば、1人の感染者が実際に直接感染させる人数は減ります。こうした実際の再生産数のことを実効再生産数(Rt)と言います。
換言すると、「新規感染者数が減少に転じる」というのは、「実効再生産数が1を下回ったとき」のことを指します。
Ro・Rtに基づく戦略/戦術の詳細は“第1145回 新型コロナウイルスいつになったら収束するの?”を参照してください。

集団免疫を獲得するまで何人が死ぬのだろうか?
一般的に集団免疫が機能するには「Z>1-1/R0」という関係が成立する必要があります。安倍政権が採用している基本再生産数R0=2.5に科学的根拠は無いが、この数値で推計してみよう。
人口のZ%が免疫を獲得したとすると、1人のウイルス保有者が平均的に感染させる人数は確率的に2.5×(1-Z)人となる。この値がゼロに収束する条件は、数学的に「2.5×(1-Z)<1」であり、これは「Z>1-1/2.5=60%」になります。
すなわち、基本再生産数(R0)が2.5のケースでは、集団免疫率(Z)が6割になると、感染が終息に向かうことを意味します。
因みに、基本再生産数(R0)が1.4のケースでは、集団免疫率(Z)は約3割になると終息に向かうことになります。

WHOの推定が妥当で、新型コロナウイルスの基本再生産数(R0)が1.4~2.5の範囲であれば、最終的に感染する人口割合の目安は3割~6割となる可能性を示します。
日本の総人口は約1億人なので、集団免疫を獲得するまでの感染者数は約3000万人~6000万人となります。

日本赤十字社が東京と東北で500人分ずつ集めた献血の検体を使って抗体検査キット
の性能評価をしました。陽性率は東京都の500検体で最大3例の0.6%、東北6県の500検体では最大2例の0.4%だったと発表された。厚生労働省は検査キットごとに結果のばらつきがあり、正確な評価は出来ないとしている。
また、抗体検査の結果から割り出した新型コロナの致死率は欧米においてもバラツキが大きい。米国のデータではアフリカ系とヒスパニック系の死亡率が高く、日本に適用するには無理がある。

故に、厚生労働省が発表したPCR検査陽性者と死亡者を見るのがより現実的だろう。5月17日の時点では、各々16,285人/744人であり致死率は4.6%となる。これに基づいて単純計算すると、日本では集団免疫を獲得するまで138~276万人が死亡することになる。

免疫学の第一人者と言われる大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂教授は、
「“自然免疫”と“集団免疫”があり、自然免疫だけでウイルスを撃退することもあるから、抗体の量や陽性率だけを見ていても集団免疫ができているかは判断できない可能性がある」、「西浦教授が言っているような何も対策をとらなければ集団の6割が感染してしまうというような状況は起こっていません。中国湖北省武漢市でも、またクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスでも感染した人は全体の2割程度で、集団の6割も感染をするようなことは観察されていない。その理由は大きな流行が始まると、人は隔離措置をとり、接触制限をするようになるからで、それとともに実効再生産数が小さくなるのです。これが、実際に武漢市やダイヤモンド・プリンセスで起きていたことではないかと私は考えています」、「一部の人たちは自然免疫と獲得免疫の両方を使って不顕性感染の形でウイルスを撃退したのかもしれませんが、かなりの人たちは自然免疫だけを使ってウイルスを撃退した可能性があるのかもしれない」とし、新型コロナウイルスの集団免疫閾値はたぶん20%だと思うと締め括っておられる。

この宮坂教授の2割説を取っても、集団免疫を獲得するまで92万人が死亡することになります。

なぜ日本の死者数は少ないのか?
歴史を振り返ると、1968年の香港インフルエンザは感染127,086名/死亡985名との記録があり、SARS(重症急性呼吸器症候群)およびMERSM(中東呼吸器症候群)も日本でのオーバーシュートは見られなかった。
多くの犠牲者が出た災いは下表の通りで、1918年からのスペイン風邪が1923年の関東大震災の約105,000人を上回る。

災いによる犠牲者グラフ2.png

今般のCOVID-19は世界保健機関(WHO)が推計する基本再生産数R0=1.4~2.5では、集団免疫を獲得するまでに138~276万人の死者数が出ることになる。勿論これは何の対策も採らなかった時の推計ではあるが、他に比べ途轍もなく大きな数字である。

しかし、実際の死者数は国によって大きな差があるものの、日本の死者数は厳しいロックダウンを実施した国々よりも遥かに少なくなっている。
この理由は何なのか?
数理モデルに100%依存することに欠陥があるのか?
3密やクラスター対策、或いは、マスクや手洗いといった公衆衛生的な介入という理由のみで説明できない。
日本人は「きれい好きだから」という理由づけも当たらない。なぜなら決して清潔とは思えないインドの死亡率が極めて低い。
日本人の気質や生活様式を挙げる学者もいるが、香港インフルエンザの主たる対策も公衆衛生介入であって、あんなにも多くの人が亡くなった。ゆえに、この理由も当たらない。
他方、コレラは細菌によって発症する水系感染症であり、上水道を完備することで多くの命を救えることが分かった。医学がどんなに進歩しても医学だけでは命を救うことはできないことを示している。

自粛、クラスターの制限、学校閉鎖、ソーアルディスタンス、手洗い、マスク、咳エチケット、換気といった公衆衛生的介入のほかに、きっと見落とされている大きな何か(単一的 or複合的な要因)があるにちがいない!

マスコミや大衆が騒がなくなったからといって、この重要な課題の探求を疎かにしてはいけない。逆に、やらなければ国家のクライシス管理・リスク管理の不備であり、専門家会議メンバーの怠慢でもあると言っても過言ではあるまい。
インフルエンザでも同様だが、感染予防についての公衆衛生的な対策ばかりでなく、重症化・死亡にも傾注して、科学的な視点から根底にある主要因を可及的速やかに精査してもらいたい。これら解明はけだし経済的な負担の軽減にもつながるであろう。

海外の研究論文で発表されている公衆衛生介入以外の主要な諸因子を一覧表にまとめてみた。

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気候とCOVID-19の関係
世界保健機関(WHO)は、コウモリが病魔の発生源であると認定しました。
コウモリが好む洞窟内は真っ暗で、湿度が高く、外部に比べて 夏は涼しい。そういう場所はウイルスが繁栄しやすいとも言える。換言すると、気候つまり“高温”と“紫外線”は新型コロナウイルス感染リスクを軽減するという見方もできる。、

カナダToronto大学の研究では、緯度および気温とCOVID-19の感染拡大に関連は示されなかったが、相対湿度〔RRR 0.91(95%CI 0.85〜0.96)〕および絶対湿度〔同0.92(0.85〜0.99)〕では、弱いながらも負の関連性が認められている。

地域・気温・湿度と新型コロナウイルについては賛否両論の現状です。

BCG接種とCOVID-19の関係
免疫機能については自然免疫と獲得免疫があります。
自然免疫とは、侵入してきた病原体や異常になった自己の細胞をいち早く感知し、それを排除する仕組みです。主に好中球やマクロファージ、樹状細胞といった食細胞が活躍します。
獲得免疫とは、感染した病原体を特異的に見分け、それを記憶することで、同じ病原体に出会った時に効果的に病原体を排除できる仕組みです。主にT細胞やB細胞といったリンパ球が活躍します。ワクチンは、この獲得免疫の仕組みを活用し、病気を予防したり、治したりする目的で生まれました。

2020年3月23日付けの科学ジャーナルScienceに、BCGワクチンが“新型コロナウイルスにも効くのか”という解説記事が掲載されました。これはBCGが抗原となって獲得された免疫が新型コロナウイルスSARS-CoV-2に対しても効くのかということではありません。自然免疫の免疫機能が特定の対象に対して向上する事を“訓練免疫”と呼びますが、BCGが訓練自然免疫を高める可能性が報告されています。オランダを初めとしてアテネ大学/メルボルン大学/トロント大学では、呼吸器疾患に感染するリスクが高い医師や看護師、および感染した場合に重篤な病気のリスクが高い高齢者を対象として既に研究が行われています。

また、ダイヤモンド・プリンセスの患者を100人以上受け入れた藤田医科大学病院がBCGとCOVID-19に関する論文を発表しています。因果関係を示すものではないですが、湿度、肥満、人口、喫煙率、入国者数、検査数と陽性率、ロックダウンの効果、都市人口率などの交絡因子を考慮した報告です。

他方では、イスラエルTel Aviv大学のBCGワクチンについての研究では、35〜41歳の成人を対象として、接種した人と接種していない成人において、新型コロナウイルスIgG抗体の検査を実施したところ、陽性率に差は無く、予防効果はなかったという報告もあります。

日本ではBCG接種は1951年から始まっている。しかし、COVID-19感染者は接種した若者が多い。高齢者は感染が少なく死亡率が高くなっている。老化に伴う死亡増はBCGやCOVID-19に限ったことでない。

トイレットペーパーやマスク騒動のようにBCGに群がると、すでに不足気味のBCGが乳幼児に行き渡らなくなり、乳幼児に命の危険が生じるとして、世界保健機関(WHO)は「先走ってCOVID-19予防にBCGを接種してはいけない」と釘を刺しています。

ビタミンDとCOVID-19の関係
英国のPetre研究チームによると、『高齢者の体内のビタミンD25(OH)Dレベルの平均値は、スペインで26nmol / L、イタリアで28 nmol / L、北欧諸国で45 nmol / Lとなっており、重度のビタミンD欠乏を30nmol/L未満と定義すれば、スイスでは老人ホームの平均値は23 nmol / Lで、イタリアでは70歳以上の女性の76%が30nmol/Lである。これらの国ではCOVID–19感染の症例数が多く、高齢者のCOVID–19による死亡率が最も高い』として、ビタミンDとCOVID–19感染率/死亡率とは関連性があると結論付けて、ビタミンDの補給を推奨している。

米国ルイジアナ州立大学健康科学センターFrank H. Lau et al.による研究によると、ICU(集中治療室)行きの13名を含めた計20名のCOVID-19患者の血清25(OH)Dレベルを調べたところ、一般病棟患者の57.1%、ICU患者の84.6%がビタミンD欠乏(Vitamin D insufficiency)だった。特筆すべきは75歳以上のICU患者の100%がビタミンD欠乏だった。加えて、ICU患者の62.5%に血液凝固障害があり、92.3%にリンパ球の減少が認められた。
『ビタミンD欠乏はCOVID-19重症化と大いに関連している。ビタミンD欠乏とCOVID-19重症化は凝血、免疫反応不全、高血圧、肥満、性別、高齢などと共に関連性がある』と結論付けている。

Take Home Message
焦っても糖尿病や肥満が一週間で解決できる筈もない。BCG云々と言っても高齢者が今さら接種しても致し方なく、緯度が問題だからと言って引っ越すわけにもいかない。
我々が安全に今できること、例えばビタミンDの適正量の摂取、或いは、高齢者には転倒防止のための自宅でのスクワット、3密を避け陽光を浴びてのジョギング・ウオーキングなどは、積極的に行った方が良いと思う。

追記:
Evidence based medicine(EBM)、Evidence-Based Public Health(EBPH)、Evidence Based Health Policy(EBHP)という言葉が虚しく響く。日本という国は、感染症という分野で科学的根拠(エビデンス)を示せず、ひたすら専門家の経験則に頼る予防医学後進国であることが今回の騒動でよく分かった。
下表の通り専門家の意見はエビデンスとしてヒエラルキーの下層にあることに留意してください。

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2020/06/13 アップデート
感染・重症化・死亡リスクの諸因子に関する追加情報です。

肥満
COVID-19感染者のうち、「BMI 30を超える人はBMI 30以下の人に比べ死亡リスクが30%以上高まること」、「調査機関のICNARCも、集中治療を受けた感染患者の7割以上が肥満体質だったこと」、更に「英国は3人に1人がBMI 30を超す有数の肥満大国であり、集中治療室に移されるほど重篤になったジョンソン首相(55)も体重が110kgを超えBMI 35以上だったこと」が5月15日付タイムズ紙で報告された。

日本における死者が少ない理由として、重症化しやすい肥満が欧米に比べて少ないことに注目する専門家もいる。
15歳以上の人口に占めるBMI 25以上の過体重・肥満者の割合は、死亡者の多い米国71%/英国64.3%と高いが、死亡者の少ない日本は25.9%で韓国も33.7%にとどまる。しかし、オーストラリアは過体重・肥満者の比率は65.2%と英国並みなのに、100万人当たりの死者はわずか4人であり、肥満を主因とする考え方には無理がある。


季節的要因
一般的な風邪の症状を引き起こす既存のコロナウイルスには、季節変動があり、冬に流行のピークを迎え、夏には検出数がぐっと減ることが知られている。この季節変動が、新型コロナウイルスにも当てはまるのではないかと期待する見方は以前からあった。
2020年4月23日、米国土安全保障省科学技術局長代行のWilliam N. Bryan氏は、ホワイトハウスで行われた記者会見において、「政府の研究者が行った実験で、新型コロナウイルスが気温、湿度の上昇とともに、そして日光によって、感染力が弱まることが確認された」と発表した。その内容は「研究者たちは、感染力を持つ新型コロナウイルスをステンレス板の上に付着させ、気温や湿度を変化させてウイルスが半減するまでに要する時間を比較した。その結果、暗い中、気温21~24℃、湿度が20%という条件では、ウイルスの半減には18時間を要した。しかしその時間は、気温21~24℃、湿度80%にすると6時間に、気温35℃、湿度80%にすると1時間にまで短縮した。さらに、気温が21~24℃で湿度80%の環境に、夏の日差しに相当する紫外線を照射すると、ウイルスが半減するまでの時間は2分になった」というものです。
この研究チームはエアロゾル状態のウイルスを対象とする実験も行い、同様の結果が得られたことから、「高温多湿と紫外線、すなわち夏の気象が、新型コロナウイルスの感染力を大きく減じると考えるに至った」とBryan氏は述べている

また、宮崎大は医療機器メーカーの日機装との共同実験で、『新型コロナウイルスを含む液に深紫外線LEDの光を30秒照射し、3日間培養させて感染力を測定したところ、99.9%以上減った』という研究結果を2020/05/27付けで発表している。

他方、中国・復旦大学の研究者らは、中国224都市の新型コロナの感染状況について調べた結果、気温が高くなったり、紫外線が強くなったりしても、感染拡大能力には変化が見られなかったと報告しており、世界保健機関(WHO)も、「インフルエンザのように夏に消えるという希望的観測は間違い」と声明を出している。

「確かに、実験室で行った研究では、新型コロナは高温や紫外線に弱いことが報告されている。だが、試験管と実際の状況は違う」、「新型コロナがどういう気象条件などで感染しやすいかについては、いろいろと研究されています。しかし、気温が28度以上になると予想感染者数が減るという報告もあれば、高温多湿の環境でも感染するという報告もあり、その結果はバラバラです」、「新型コロナの感染拡大はウイルスの感染力だけでなく、人の往来といった別の要素も大きく関与している。今後、自粛要請が解かれて人々が移動を始めれば、夏になっても感染拡大は続き、収束は難しい」、「ウイルスが紫外線に弱いのは事実で、紫外線で新型コロナは死ぬかもしれません。ただし、それは限定的です。屋内など太陽光が当たっていないところには紫外線が届きませんから、そこでは今まで通りウイルスは生き延びます」、「MERS(中東呼吸器症候群)は気温が45度を超える中東地域でも感染が起こっている」と関西福祉大学の勝田吉彰教授は言及している。

マイコメント
「赤道に近いシンガポールでも感染が広がっているということは、夏でも猛威を振るうということを意味している」と指摘する学者もいましたが、シンガポールでの感染者は、換気が悪いワンルームに詰め込まれて、劣悪な環境下で働く貧しい外国人労働者たち集中していることが明らかになっています。
同じく高温多湿のDubai(アラブ首長国)でもCOVID-19が猛威を振るっていますが、人口の80%以上が外国からの出稼ぎ労働者であり、一体どのような層の人たちが感染しているのか認識しないと大勢を見誤ることになる。


集団免疫
京都大学大学院の上久保靖彦特定教授と吉備国際大学の高橋淳教授の研究、 “Paradoxical dynamics of SARS-CoV-2 by herd immunity and antibody-dependent enhancement” )は、なぜ日本の死亡率が低いのか、なぜ国ごとに重症度や致死率が違うのかを明らかにしようとしている。概要は次の通りです。

2019年12月に中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスには「S型」「K型」「G型」の最低3つの型があることを発見した。これらの型は、伝染性と病原性が異なるため、それぞれの国でどの型がどの程度流行したかによって、国ごとの感染の広がりや重症度、死者数が異なることになったという。

さきがけとして日本に到来したS型は、無症候性の多い弱毒ウイルスで、 次に、S型から変異したK型)は、無症候性~軽症のウイルス、続いて、ウイルスは武漢においてさらに変異して武漢G型となり、また、中国・上海で変異したG型(欧米G型)は、まずイタリアに広がり、その後欧州全体と米国で大流行した。一方、G型は日本にも到来したが、死亡者数が欧米諸国より2桁少ないレベルにとどまった。

なぜ、G型ウイルスによる日本の死亡者数は欧米と比べて少なかったのか。特に武漢では、閉鎖のアナウンスがなされる直前に500万人もが流出し、武漢から成田への直通便で9000人も日本に入国したという武漢市長の報告がある。その結果、S型とK型の日本への流入・蔓延が続いていた。
そして、多くの日本人の間にS型・K型の集団免疫が成立した。具体的には、K型の侵入に対して、体内のTリンパ球が反応して獲得する「細胞性免疫」がG型への罹患を防ぐため、日本人の死亡者が少なくなったと主張する。また、日本と同じく中国人の大量流入があった韓国や台湾、香港、シンガポールなどでも同様の集団免疫獲得があったことで、死亡者が少なくなったと推測される。

一方、米国やイタリアなど欧米諸国は、ウイルスの到来を水際で防ごうと2月1日より中国からの渡航を全面的に禁止した。これによって、K型の流入は大きく制限されることになった。また、2月1日以前に広がっていたS型はすでにかなり蔓延していたが、S型の「細胞性免疫」は、G型の感染を予防する能力に乏しかった。

S型への抗体には「抗体依存性感染増強(ADE)」効果がある。上久保氏らは、致死率を計算する方程式をつくり、G型に感染した際に致死率を上げてしまうのは、S型に感染した履歴であることを明らかにした。
要するに、「S型への抗体によるADE」と「K型への細胞性免疫による感染予防が起こらなかったこと」の組み合わせによって、欧米諸国ではG型感染の重症化が起こり、致死率が上がってしまったということだ。

詳細は “日本のコロナ致死率の低さを巡る「集団免疫新説」が政治的破壊力を持つ理由” を参照願いたい。

マイコメント
台湾への中国人観光客は激減していること、ニュージーランドは他国に先駆けていち早く入国制限を実施したこと、オーストラリアも2月1日に中国からの入国制限を開始するなどの対策を取った。これらの国ではコロナ死亡率は低くS-K-Gウイルス説は当たらない。


血液型と感染リスク
2020/6/9付け時事通信によると、『血液型を決定するABO遺伝子の差異が感染のしやすさに影響している可能性があり、
O型の人は新型コロナウイルスに感染するリスクが低いとの暫定的な研究結果を発表した。 同社の研究に参加した75万人以上のデータによると、O型の人は他の血液型の人に比べて、新型コロナへの感染率が9~18%低かった。年齢や性別、民族のほか、基礎疾患の有無や肥満度などの違いを考慮しても同様の結果が出たという。一方、O型以外の血液型の間に統計的な差はなかった』ということである・

マイコメント
申し訳ないが、この記事を見て「エネルギー収支バランスを語らず、ダイエットの成否を決めるのは血液型である」という人たちの愚考を思いだしました。




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